平尾先生
ICTは、字を書くことや絵を描くことに苦手意識をもっている子どもをフォローするものとして、すごく役立ちます。例えば、小学校1年生の生活科で植物の観察をする時に、中には観察カードに絵を描くことに精一杯になってしまって、きちんと見て観察する時間を持てない子がいます。でも、タブレットを活用することで、一度写真をパシャッと撮っておいて、あとは自由に触ったり匂いを嗅いだりといった、体で感じる時間をたくさん取れるようになりました。ICTは「これを使えば学習も楽しいんだ」と思ってもらえるツールだと感じています。

早野先生
私は自分自身がデジタルにすごく苦手意識があるのですが、算数の図形の単元ではやはりICTの良さを感じますね。今までは子どもたちが自分で紙を折ったり貼ったりして図形について理解していました。そうするとやはり不器用な子はうまくできずに、理解をあきらめてしまうことがあります。でもICTを活用すれば、誰もが自由に図形を動かして理解していけるんですよね。一方で計算は、小学校ではタブレットではなくノートに丁寧に書かせたほうがいいかなと思っています。学齢や授業のねらいに合わせて活用していきたいですね。

中西先生
雪谷小学校では、タブレット端末などのICT機器を特別なものではなく、一種の勉強道具、思考ツールとして使っています。オクリンクプラスやGoogleのドキュメント、スライド、アンケートフォームなどは授業で使いやすいですね。

小林先生
教員の中にもICT活用に長けている人もいれば、苦手意識のある人もいます。雪谷中学校では年齢層やICTが得意な人・不得意な人をあえてシャッフルしてグループを組み、分科会をつくっています。ICT活用は手段であって目的ではないので、ただタブレットを操作するだけの授業になってしまわないように、授業のどの場面で、何のためにどう活用するか、といった本質を議論しながら改善を重ねています。

柳先生
中学校でポイントになるのが「教科の壁」と言われています。中学校では教科ごとに担当の先生が分かれているので、お互いに遠慮して「他教科の授業に口を出すのは申し訳ない」と思ってしまいがちなんですよね。でも、学校で大切なのはあくまでも「子どもたち」です。子どもたちにとって、授業の内容がわかる、授業が楽しいと感じることは、自信をもって学校に通うことにつながります。それこそが「教科の壁」を崩す突破口になります。「授業を充実させたい」「わかりやすい授業にしたい」という教科共通の切り口をもつことで、壁を超えて研究を進めることができていると感じています。

中西先生
雪谷小学校では、ICTに苦手意識のある先生や、異動してきた先生を対象に、年度初めに必ず研修をしています。池雪小学校でもそうですが、学校全体だけでなく学年でもICT担当を決めて、その学年に適した形で情報を噛み砕き、共有するようにしていますね。

平尾先生
学校間でも年に数回、学校のICT利活用の状況を共有する会がありますよね。それにより他校の取り組みやさまざまな情報を仕入れられるのでありがたいです。

柳先生
大田区では、小学校同士だけでなく、小学校と中学校で連携する日が年に3回あります。ICTに限らず、それぞれが研究授業や公開授業を行います。普段は小学校の授業を見に行くことはなかなかできないので、貴重な機会ですね。授業の後は、先生方が集まって分科会を行います。前回、雪谷中学校が研究発表校だった時は、ICTを活用した授業を行い、分科会で各学校の先生方と「ICTをこんなふうに使っています」とか「正直ここは使いにくいよね」といったことをざっくばらんにお話しました。こういう小学校・中学校の連携の機会が非常にいい経験になっています。

中西先生
中学校の授業を拝見すると、中学入学までに小学校ではここまで身につけておいたほうが良さそうだな、というレベル感がよくわかります。雪谷小学校では、中学入学から逆算して考えて、例えば低学年では音声入力を、中学年ではローマ字入力を、高学年ではGoogleドキュメントやスライドを使えるようにといったカリキュラムやルールを「雪谷スタンダード」としてまとめています。これはICTを導入した初年度から3か年計画で作ったもので、随時点検して見直しをしながら、1つの目安として活用していますね。

平尾先生
池雪小学校でも、雪谷中学校の授業を拝見できることは非常にためになっています。と言っても本校では「雪谷スタンダード」のようにしっかりとまとめたカリキュラムやルールはなく、どこまでできるか子どもたちにどんどんやらせてみようと思っている段階です。子どもたちのポテンシャルは高くて、小学校1年生でも練習すればタイピングを使いこなせるんですよね。ICT主任として子どもたちがどこまでできるようになるのか、わくわくしながら見守っています。その際、例えば朝の時間をタブレットを使う時間にして、みんなでタイピングの練習をしたり、写真撮影の練習をしたりすることが効果的だと思います。スキマ時間に教えて練習して、授業で活用するイメージです。そうすると授業の中でも無理なく使いこなせるようになりますね。

小林先生
余談ですが、小学校と中学校の連携の日は、子どもたちにとっても楽しみのようです。小学校の先生が中学校に来ると、子どもたちは「あ！〇〇先生が来てくれた！」と盛り上がりますし、中学校の先生が小学校に行ったときには「お兄ちゃんの担任の先生だ！」と声をかけてくれたりします。学びのつながり、学校のつながりは子どもたちにとっての安心感ややりがいにもつながっているのではないかと思います。

早野先生
ICTに苦手意識のある私には、ICT支援員の方の存在が本当にありがたいです。少しでもわからないことがあるとすぐに来てもらって助けていただいています。もう、すべての授業で側にいてほしいぐらいです（笑）。

平尾先生
本当にその通りですよね。想定外の不具合が起きた時に、自分で対応できる先生はそんなに多くいません。私も担当として他の先生のサポートに走らなくてはいけないことが多かったのですが、ICT支援員の方に来ていただくことでその機会が減り、とても助かっています。また、サポートだけでなくいろいろなご提案をくださるのもありがたいです。

小林先生
ご提案は本当にありがたいですよね。教科の授業でもさまざまなご提案をいただいているのですが、先日、職業調べの授業をするという話をしたら「これを使うといいと思いますよ」と、デジタルツールを教えてくださり、ものすごく細かいレベルでまとめた提案書もくださって。感激してしまいました。

中西先生
学校全体をすごくよく見てくださっていますよね。先日の授業参観の日に、ICT支援員の方が自主的に校内を巡回してくださっていたんです。保護者の方が大勢いらっしゃる中で、授業中にICT面でトラブルが起きてしまうと、教師はものすごく焦ってしまうものです。ICT支援員の方はそんな時のためにいろいろと想定して対応策を考えて見回ってくださっていて、本当に頼りになると感じました。ありがたい存在です。

中学1年生　国語「読みやすく速く描くための行書」
小林祐美先生

行書の点画の変化を意識して、習字課題「北西」を書く。

自身の作品をタブレットで撮影し、手本と見比べ、改善点をまとめる。

グループでオクリンクプラスを使用して作品を共有し、行書の特徴を踏まえてよく書けている点と改善できる点を伝え合う。

オクリンクプラスで「北西」の運筆動画を確認する。

タブレットをしまい、グループでもらったアドバイスをもとに、習字課題「北西」に再度取り組む。

前回と今回の作品を比較し、行書の点画の変化を意識してオクリンクプラスに振り返りを記入し、提出する。

書写の課題に対し、タブレット端末を使用することで手本と見比べることが容易になった。また、他者の作品を見、意見交換することで、対話を通して自身の学びに生かすことができた。