導入事例

両面の改革で大きな
相乗効果を生むICT活用
- 取材
- 東京都中央区立明石小学校
- 使用製品
- オクリンクプラステストパーク
- 学年
- 全学年
中央区立明石小学校は、区の研究指定校として、授業内外での積極的なICT活用を推進されています。今回は、中央区教育委員会の中島 淳教育DX担当係長にもご同席いただき、明石小学校のICTを活用した取り組みやその成果について、永井 勝巳校長先生をはじめ、4年生を受け持つ、主任教諭の山中 真岐先生と英語専科の鈴木翔先生に、実践された事例の一部をご紹介いただきながら、お話を伺いました。
導入背景・目的
校務効率化を図り、より多くの時間を授業や児童との関わりに充て教育の質を向上
永井校長先生
当初は教員によってICT経験値や能力に差があることが課題でしたが、教育委員会のバックアップやICT支援員のサポートを受けながら学校全体としての技術向上をめざしています。
デジタルデバイスを用いた指導に不安を抱える教員に対しては、ICTをツールとして使えないことには現代を生き抜くことはできないし、まして、小学生に教える身として、教員はその基礎を知っておくべきだということを何度も伝えました。単発の研修を通して主体的に学んでもらうのは難しいと思ったので、すべての教員を巻き込む形で意識化を図ることにしました。
中島教育DX担当係長
中央区としては、GIGAスクール構想にしたがって、校務の効率化を図り、教員がより多くの時間を授業や児童・生徒と関われるようになることで、教育の質を向上することを目的としています。一口にICTといっても、主に学習指導と校務という2つの活用シーンが思い浮かびますが、研究指定校である明石小学校については総合的に改革を進めてもらいたいと考えています。
導入成果
学習と校務という2つの側面において成果が見られ、めざす形に少しずつ近づいていることを実感
誰も取り残さない、学び合いの授業を実現
山中先生
ミライシードを活用して、誰も取り残さない、学び合いの授業を実現できるようになりました。例えば算数。課題に対して自由な発想で仮説を立て、友達と意見を交流させながら考えを深めていく問題解決型の学習では、従来では難しかった全員発表に至りました。具体的には、各自がカード上の要素を自由に移動させたり、線を引いたりしながら、図形の求め方を考え、「みんなのボード」上で共有。友達同士でコメントやリアクションを送り合うなかで、自分とは違う求め方を知り、刺激を受けている様子が見受けられました。
また、別の単元では、「キーワード集計」を活用して、クラス全体の求め方のアイデアを文字として可視化してみたり、お互いに作成した計算問題を解いて丸つけ・解説をさせ合ったりもしました。児童が楽しく学習できるだけでなく、他者参照で学びの幅が広がったことは、大きな成果だと思います。
デジタルとアナログを掛け合わせた授業で、友達と一緒に学ぶ楽しさを知った児童
山中先生
児童は、グループ活動や共同作業がしやすくなったことで、友達と一緒に学ぶ楽しさを以前よりも体感しているようです。即時でもらえる友達からの反応や、教員からのフィードバックなど、インタラクティブな授業を通して児童の興味・関心がかき立てられ、学ぶ意欲が高まっていると感じます。各児童の学習進捗や理解度を把握できることで個別最適な指導ができること、さらに、「マイボード」や「みんなのボード」上でクラス全員の情報を一元管理できることで、特定の児童に偏らずに、よいアイデアやコメントなどを取り上げられることもオクリンクプラスを活用するメリットだと思います。
鈴木先生
実際に私が受けもつクラスで実践した「アルファベットに慣れ親しむ」ことをねらいとした授業では、ICTのメリットを最大限活かしつつ、あえて画面上だけで完結させずに、児童間の対面での交流をベースとした活動を取り入れました。具体的には、オクリンクプラス上のカードを用いて、その場でアルファベットを割り振ったり、何度も並び替えながら正しい単語を生成させたりと、デジタルの即時性や手を動かしながら考えるという特性を活かした活動と、紙のボキャブラリーカードを手に、新出表現を使って友達に声を掛けに行く活動とを組み合わせた授業です。また、本校では英語専科の私が授業する時と担任が授業する時とがありますが、担当が異なっても同じ授業がしやすくなり、カードBOXを活用、教材の共有も簡単になりました。教材研究もスムーズにできるようになっています。
いずれかの立場に割り振られた児童は、ゲーム感覚で楽しそうにアクティビティに取り組んでいました。このように画面上と教室という空間での学びをうまく融合させた活動は、学習の効果を最大化できると思います。少しやり方を変えて、他の教科にも展開していきたいです。
児童と教員双方の負担を減らすことで、本質的な時間を確保できるように
山中先生
授業外ですと、本年度は、冬休みの宿題の定番である書き初めをオクリンクプラスで提出させました。家で書いたものを学習用タブレットのカメラで撮影して、「提出BOX」に提出してもらい、こちらからはコメントやスタンプを押して返却しました。
長期休み明けはどうしても提出物が増えるので、持ってくるのを忘れてしまったり、持ち物がかさばってしまったりと、児童には負担が大きいですよね。それは教員も同様で、休み明け早々膨大な提出物チェックに追われるのが通例でした。オクリンクプラスを使えば、宿題の取り組み状況や履歴が一覧で分かるので、評価という観点でも効率化できます。
また、他の教員からは、個人面談にオクリンクプラスを使っていると聞きました。事前アンケートとして、好きな教科や苦手な教科、休み時間の過ごし方などをカードに記入させ、あらかじめ提出させているそうです。ある程度時間の制約があるなかで児童との対話を深めたい場面で、このような使い方ができるのはいいですよね。
テストパークの導入でテストにおける効率性や効果が大幅に向上
山中先生
テストパークが導入されたことで、データの一元管理ができるようになり、正答率や平均点などが、学年やクラス、児童単位で瞬時に分かるようになりました。また、採点に時間がかからず最短でのフィードバックが可能になったことで、テストの効率性や効果が大幅に向上しました。これまでは特別な対応が必要だった欠席の児童に対しても、配信ボタン一つでテストを受けてもらえるようになり、とても助かっています。
採点はもちろんですが、問題を配る、解いて提出する、採点後に返却する、間違いを見直すといった一連の流れが学習用タブレット上で完結するようになったことで、児童にとっても教員にとっても様々な側面でポジティブな影響がありました。特に、テストの復習の質が高くなったことは大きいと思います。自動採点の結果は提出後すぐに個人に返却されるので、児童はテストを解いた直後に自分が間違えた箇所を把握することができますし、教員は間違いの多かった問題を取り上げて、その授業時間内で解説をすることができます。テストのあと、間を空けずに復習ができるというのは、知識の定着においてとても大切なこと。鈴木先生も仰っていますが、テストパークの導入によってテストの効果が大幅に向上したことは確かだと思います。
働き方が変わり、今では就業時間終了時には、7割の先生が帰宅するように
永井校長先生
導入後、教員の働き方は大きく変わりました。特に、校務の効率化における効果は抜群ですね。具体的には、出席管理の自動化、成績処理の簡素化、日常コミュニケーションや研修・会議の効率化を実現できたことにより、教員の授業準備やの個別指導に集中できる時間が圧倒的に増えました。一人ひとりの仕事に対する意欲が高まっただけでなく、組織という観点でも、情報共有がスムーズになったことで連携が強化され、職場の雰囲気がより明るくなったと感じています。
山中先生
実際に、校務作業にかける時間は年々減少していますね。ICTを活用して印刷作業などを省略できたことで、貴重な朝の時間帯に授業準備の時間を確保できるようになりましたし、児童との対話に時間をかけられるようになりました。オクリンクプラスにおいては、教員が個々の児童の状況を把握しやすく、それぞれに応じた指導やサポートがしやすくなったと感じています。また、教員間での情報共有がスムーズになったことも、よりよい指導・よりよい授業づくりに寄与していると思います。このように、ICTの活用により本来やりたかったこと、やるべきだったことをできるようになったことが、教員の働き甲斐にもつながっているのではないでしょうか。
中島教育DX担当係長
明石小学校の場合、通常は学年単位で研究をしていたところを、アプリごと、テーマごとに分けて研究してらっしゃるのですよね。さらに、研究用のコミュニティがあって、そこで講師やアドバイザー、教員がつながり常日頃から意見交流・情報交換ができる仕組みを持たれています。こうした密なコミュニケーションの結果として、校内での具体的な活動がスムーズになってきているのだと感じています。
今後の展望・期待
学習面と校務面での改革で相乗効果を生むことと、児童の学習意欲や好奇心を引き出していくことを最優先に
教員を取り巻く環境を整備しながら、その先の児童にポジティブな影響を届けていく
永井校長先生
教員と児童が触れ合える時間をいかにして増やすか、これは今後もずっと私たちのテーマです。まずは、ICTを活用することで教員の技量を高め、児童の学習や生活の質を高めるという相乗効果を生むこと。そして、児童がICTを用いて、苦手なことを補いながら自己表現ができるようになることで、学習意欲や好奇心を引き出していくこと。この2つはとても大切なことだと考えています。「子どもをこう育てていこう」と理想像を掲げるよりも、教員自身がICTを活用するなかでその便利さに気付き、できることを積み重ねていってほしいと思います。本校では、今後もICTを活用した教育の推進を続けていく予定です。特に、データ分析を通じて児童一人ひとりの学びを支援する仕組みを強化し、個別最適な学習環境を提供していきたいと考えています。同時に、研修などを通じてすべての教員のICT活用スキルを向上させ、さらなる教育の質向上をめざす所存です。
中島教育DX担当係長
中央区は次年度以降、順次タブレットの入れ替えやネットワークの強化などを行う予定です。教育ICTを所管する3つの課が連携して、「先生ファーストな環境」を整えようと動き出しています。先生方にとっての環境が整うということは、その先にいる児童にポジティブな影響が届くこと。日進月歩のICTの動向を引き続き注視し新しいものを取り入れながら、現場の先生方の働き方改革をさらに後押ししていければと思います。
※ページの内容は2024年12月時点の情報です。
使用製品
オクリンクプラス
個人思考と共同作業の自由な行き来により
子ども同士が対話し、主体的に学んでいく授業運営を支援。
テストパーク
次の学びにつながるデジタルテスト。
先生方の働き方改革と子どもたちの学力向上を支援します。