導入事例

通じて思考が
見える、広がる、
伸びる授業へ
- 取材
- 東京都文京区立音羽中学校
- 学年
- 全学年
文京区立音羽中学校の篠宮先生は、2024年度に同校に赴任して以降、初めて本格的にICTを活用した授業づくりを始めたそうです。驚くべきスピードでICTの活用に習熟していった篠宮先生。活用の背景にある先生方やICT支援員のサポート、オクリンクプラスのご活用状況について篠宮先生に、音羽中学校全体が目指される教育像と今後について齊藤校長先生に、それぞれお話を伺いました。
導入成果
2学期を経て授業が様変わり 思考・表現が高まる授業を実現できた
区の中でも、ICT先進校に位置
齊藤校長先生
本校が位置する文京区は、コロナ禍以前からICTの活用に非常に力を入れてきました。デジタル教科書も、電子黒板も、ICT支援員さんも導入されています。こうした環境が整っているからか、本校は先生方の意識も高く、進んでICTの活用に向き合ってくれています。
GIGAスクール構想が始まって数年が経ち、すでに多くの先生方はICTを“とりあえず使ってみる”過程から脱しました。新しいツールであるオクリンクプラスの活用も、篠宮先生や国語科の瀧澤先生の活躍のおかげで、校内に広まりつつあります。
他者参照が盛んになり、思考の広がりや深まりが見られるように
篠宮先生
1学期から新しい授業づくりに挑戦し、2学期も半ばとなった今、端末やオクリンクプラスを活用するメリットも実感できるようになりました。
特に、アナログで授業を実施しているときに比べると、他者参照がとても盛んになりました。電子黒板とオクリンクプラスを組み合わせれば、個々の生徒の問題の解き方や考え方をさっと投影できます。プリントで問題を解いていたときには、なかなかできなかったことです。
先日実施した研究授業も、オクリンクプラスを活用し、活発に他者参照を行うつくりとしました。実施した単元は1年生の「方程式の計算」。単元の仕上げとして、生徒が自分たちで「間違えやすい問題」を作問して、オクリンクプラスの「みんなのボード」で共有して解き合う授業を行いました。
普通に問題をつくるのではなく、あえて「間違えやすい問題」としたのは、単元の仕上げのタイミングで、かつテスト前だったからです。また、一人で作問しても視野は広がりません。他の生徒がつくった問題を見て「こういう間違え方もあるのか」と気づくために、考えを共有する過程を盛り込みました。
普段、端末を使わないときは自由に歩き回って話し合ってもらうのですが、研究授業ではなるべく多くの考えに触れてもらおうと、電子黒板上で一斉に問題を提示しました。「みんなのボード」は氏名を隠してカードを共有できるのがいいですね。先入観なく、様々な考えを見てもらえて、親しくない子同士でも考えをシェアしやすいです。
研究授業で扱った単元もそうですが、数学を教えていると、正答はわかるものの、感覚的に解いている生徒や、数学的な理解が誤っている生徒、数学的な言葉遣いができていない生徒をよく見かけます。特に証明問題では顕著ですね。それでは本質的な理解とは言えません。その点で、他者参照を授業に盛り込むのは非常に効果的です。他者が見る前提で解答するとより丁寧に過程を表現しますし、他者の解き方から自分と異なる視点を学ぶことは、論理的思考力を鍛えるきっかけになります。ですから、研究授業も「一人で作問する」「一人で解答する」のではなく、「みんな」で取り組む形にしました。
支援員さんがいたから、「使ってみよう」と思えた
篠宮先生
実は、私は2024年度に本校に赴任してから初めて本格的にICTを活用するようになりました。GIGAスクール構想が始まったタイミングでちょうど産休・育休を取得しており、前任校で復職したときは、私だけやや出遅れていたんですね。私自身、それほどICTが得意でなかったこともあって、端末や電子黒板もほとんど使っていませんでした。
ICTを活用できるようになったのは、他の先生方がフレンドリーかつICTに習熟していて質問しやすかったこと、ICT支援員さんがほとんど常駐してくれていたことが大きかったです。特に支援員さんの存在は、欠かせなかったですね。
他の先生方も非常に親切に教えてくれるのですが、先生方も忙しくされているので、質問できるタイミングは限られています。その点、支援員さんは授業に入っていない時間帯ならいつでも質問できますし、後で見返すための資料もよくつくってくれました。わからないことがあったらすぐに聞ける。この体制が整っているから、意欲的に活用へと向き合えました。
さらに活用を深めていくカギ=情報モラル教育
篠宮先生
私はまだまだ活用し始めですが、だからこそ、これからやってみたい授業がたくさんあります。先日、教員になった教え子から、ICTを活用した高校の授業について聞かせてもらいました。その内容は単元の導入に、その単元の内容が日常生活でどのように役立っているのか、グループで調べてアウトプットするものでした。これは中学校でもできるととても参考になりました。このように同じ中学校だけでなく、高校や小学校の事例も参考にしながら、生徒がよりよく学べる授業づくりへ励んでいきます。
齊藤校長先生
今後、さらにICTの活用を深めていくにあたって、課題となるのが情報モラル教育です。本校は道徳の時間やホームルーム、集会など、様々な機会を活用したり、情報モラルに関するセーフティ教室を実施したりしています。保護者に対しても、活用の実態を知っていただく機会を増やしています。本校の取り組みを他校の先生方から褒めていただくこともありますが、生徒の創造力はたくましいもので、活用を深めれば深めるほど、問題が起きる可能性も高まっていくでしょう。
生徒の創造力をマイナスの面で発揮させないためには、先生方がICTを深く理解し、どういった事態が起こり得るかを知ることが大切です。授業での活用はもちろん、モラル面での問題についてもICT支援員さんに情報共有いただきながら、正しい方向で、活用を深めていく所存です。
※ページの内容は2024年11月時点の情報です。