横枕校長先生
ICT云々の前に、本校の研究テーマの一つでもあった「家庭での学習習慣の確立」を実現するため、本年度は「Foresight手帳」を導入しました。これは、生徒一人ひとりが自分のスケジュールを手帳上で管理しPDCAを回していくというシンプルなものですが、子どもたちの約半数以上の学習時間が伸びたという成果を打ち出しました。
生徒たちが主体的に自身の学びを管理するなかで、学ぶ目的や意味を自然と考えられるようになったのは、これからの長い人生を見据えても重要なことだと思います。こういった学びの基盤づくりにおいてICTをうまく組み込むことで、学習に向き合う姿勢をより効果的にはぐくむことができると考えています。

横枕校長先生
私自身、基本的にはすべての紙の資料をPDF化して各自のタイミングで閲覧すればよいと考えているので、本校に着任してすぐに職員会議での紙の資料配布を廃止し、以降もあらゆる場面でデジタルへの移行を進めています。
そもそも本校の教員は平均年齢が若いこともあってデジタルに抵抗が少ない年代層が多いのですが、やはり全員が使いこなしているわけではありません。ICT活用に自信のない先生方に対しては、行動変容を定期的に促しながらも、基本的にはそれぞれのスキルやモチベーションに合わせてできる範囲で使ってもらうようにしています。
とはいえ、子どもたちの未来を創るのが僕らの仕事ですから、ベクトルの太さは違っても方向性は同じであるべきだと、そこの目線合わせは私が筆頭となり慎重に行っています。

遠藤先生
いわゆる雑務や頻回だった会議などが最低限になったことで1日のなかで余白の時間ができ、本来時間をかけたかった教材研究などの授業準備を深められるようになりました。
校長も常々おっしゃっていますが、協働的な学びをはじめ、ICTを用いた学習が充実したものになるかどうかは教員のファシリテーション力に左右される部分もあるので、引き出しの数や子どもの反応の拾い方・広げ方といったテクニックは、子どもたちに恥じぬようしっかりと身につけていきたいと思っています。

横枕校長先生
「オクリンクプラス」は、話し合い活動はもちろん、お互いの写真やアイデアをシェアしたり、教員や子どもたち自身の評価資料（ポートフォリオ）として記録していったりと、活用の幅が広いのが魅力だと思います。私は美術の担当として、生徒が提出してくれた制作物の写真を黒板に投影してクラス全員の前で褒めてあげたり、子どもたち同士で鑑賞させ合ったり、自分の作品についてのプレゼンテーションを行わせたりと、実際にあらゆる場面でICTを活用してきました。
そのなかでも、一貫して意識していたのは「子ども一人ひとりと対話して、コミュニケーションをとりながら評価する」ということ。やはり最終的な結果だけを評価対象とするのではなく、会話やプロセスに着目することで気づける点を、失敗やその乗り越え方も含めて総合的に評価してあげるべきだと考えています。
一方で、プロセスだけに着目すると課題や宿題ばかりになってしまうのでそのバランスはとても大切ですが、「ミライシード」で取り組み状況や最終解答に至るまでのプロセスが可視化されるようになったことは、とても意味のあることだと思っています。

遠藤先生
他の生徒の思考やそのプロセスを即時的に一覧化できるのは、考えの共有や交流の場面で非常に有効だと感じています。
また、生徒の手元に現物を残した状態で、教員が評価できることや、生徒の理解状況をタイムリーに把握し、形成的評価が素早くできる点にも有効性を感じています。

横枕校長先生
先の手帳の話と重なりますが、授業では「この学びは何につながるのか」といった学ぶ目的や意義を明確にすることで、子どもたちの勉強に向かうモチベーションを引き上げてもらうように各先生方にお願いしています。
そのうえで、教科や単元の特性に合わせて、どのようにICTを活用していくかはそれぞれの腕の見せ所ですよね。例えば英語では、ドリルパークのようなAIによるアダプティブ問題での反復演習に一定の効果があるでしょうし、実技科目では、先ほど私がご紹介したような撮影機能を使って記録を残していく使い方も役に立つと思います。

遠藤先生
私は、振り返りは自己調整の場であると考えているので、生徒が自己の学習を振り返ることでできたところ、できないところを客観的に見つめ、どこをどうしたら力を伸ばせるのか考える機会を大切にしています。
また、これを活用して教員側が生徒の学習状況を把握しながら形成的評価を実施し、エラーモデルに対してフィードバックしていくことも重要だと考えます。評価から主体的態度の項目がなくなるかもしれない、とニュースが波紋を呼んでいましたが、評価項目であろうとなかろうと、生徒が自身の学習を調整する力は重要な力だと考えます。今後も次の学習につながる振り返りをしていきたいと考えています。

目標とした指導事項に対して、どの項目で自分の理解が不十分と感じたのか、色別のカードで具体的に振り返る。オクリンクプラスで送信することで教員は理解度や躓きを一目で把握でき、生徒は次時のはじまりに見直しと自己調整をすることができる。

横枕校長先生
都内では、地域による学力差が顕著に見受けられます。保護者の所得や教育に対する考え方、子どもたちへのアプローチの仕方などが影響していると思われますが、あらゆるネガティブな要因を切り崩し、子どもたちの明るい未来を創っていく役割を担うのが教育であり、私たち教員の仕事です。
その実現のために、ICTの力は欠かせないと考えているので、これからも授業内外で生徒のためにできることを見つけて、実践していきたいです。

遠藤先生
現状では、生成AIで作った文章を自分の文章かのように提出してしまう生徒が多数います。上手なつき合い方を学ぶために、生成AIを使った文章を添削する授業を実施し、生成AIの限界と、これからの時代に自分が身につけるべき力を実感できるような授業ができればと考えています。
「生成AIをアドバイザーにするプロンプトを作成し、アドバイスを求めながら自身の力で表現する授業の事例を勉強する機会があり、生成AIの活用法としては良いのではないかと感じているので実践してみたいと考えています。生成AIも含め、ICTならではのメリットを活かして、これからも授業をさらに充実させていければと思います。」