導入事例

静岡県榛原郡川根本町教育委員会
「使う」から、「使える」へ
ICTが当たり前の選択肢となった
取材
静岡県榛原郡川根本町教育委員会

川根本町は静岡県榛原郡に位置する、人口約5,700人の自治体です。町内の公立小中学校は、三ツ星学園、光の森学園の2校。どちらも2024年に誕生した、9年制の義務教育学校です。
義務教育学校を新設する以前から、川根本町ではICTの活用が活発に進められてきました。使う・使わないを先生方が子どもたちに合わせて選択する。子どもたちからツールの提案がある。こうした、単にICTを「使う」段階を乗り越えられた経緯や、町内の現状を、川根本町教育委員会の守谷指導主事に伺いました。

導入成果
先生も、児童・生徒も、新しい学びの選択肢が当たり前になった

本質的な意味でのICT活用は、“選択”の先にある

守谷指導主事
2024年に策定した本町の教育大綱では、キーワードとして「自立」と「共生」を全面的に取り入れ、令和4年度の重点施策として4つの取組みを掲げました。そのうちの2つが、「『一人でもみんなでも』一人ひとりが主役となる学び」と、「町から世界へ 世界から町へ」です。 本町は小さな町ですが、現代では、ICTを駆使してどこからでも世界中とつながることができます。今年度に統合・開設した2つの義務教育学校を軸にしながら、0歳から18歳までをシームレスにつなぐ教育を提供し、世界へ羽ばたく人材を育成することを一つの目標としました。

その際に重要となるのが、「『一人でもみんなでも』一人ひとりが主役となる学び」です。これからの学びは、子どもたち一人ひとりが主体的に考え、自分自身の課題を持ち、他者と価値観を共有しながら進めていくことが欠かせません。そのためには、授業も一斉授業にこだわる必要はないでしょう。方法を問わず、めあてやゴールに向かって児童・生徒が自主的に考え、学習を調整していく授業を実現してほしいです。

ICTの活用もまた、一つの手段に過ぎません。ただし、極めて重要な手段だとは考えています。本町は2017年にタブレットを導入し、最低限のルールの中で、各先生方が独自の活用を深めていきました。結果として、今の町全体の端末活用のレベルは相当高いと自負しています。すでに先生方は、単に端末を活用する次元を越えて、「アナログとデジタルのどちらが、目的の教育に効果的か」を考えて、ときには子どもたち自身が選択しながら、ICTを活用してくれています。

例えば、三ツ星学園の後期課程の社会の授業では、個人で思考を深める場面はオクリンクプラスの「マイボード」を、班で意見を交流する場面では直接的な対話を、授業全体を総括する場面では「みんなのボード」をと、場面に応じてデジタルとアナログを使い分けています。他の先生方も、「ここは紙に書かせよう」「ここはオクリンクプラスを使おう」と、しっかり目的を持って使い分けてくれている方が増えました。特に後期課程は、生徒も先生も、コロナ禍をずっと過ごしてきましたから、ICTにとても習熟しています。総合的な学習の時間のように、自由度の高い授業では特に、生徒の方から「このツールを使いたい」と提案してくることも多いようです。子どもたちも、先生方も、ICTを使った学びの選択肢が当たり前に取れるようになっていることは、教育委員会として本懐と言えるでしょう。

ルールを縛らず、あくまでサポートに徹したのが功を奏した

守谷指導主事
タブレットの導入が比較的早かったことや、コロナ禍で使わざるを得なかったこともそうですが、今のICT活用の状況につながった施策が他に2つあります。

1つ目は、先に述べた通り、活用のルールを制限しなかったこと。当初から、町としては「壊さなければOK」というスタンスで、ほとんどルールを設けないまま、先生方や児童・生徒に活用を委ねました。逆に先生方から「このソフトが使いたい」と要望されたときは、なるべく柔軟に対応しました。実際に使う、みなさんの創造力を縛らずに、背中を押す支援ができたのは大きく影響したと考えています。



守谷指導主事 2つ目は、早期にICT支援員を導入したこと。先生方は、どう運用していけばわからないなかで、大いに支援員に助けられたと思います。実際に、ミライシードの活用についても、研修会の実施を始め大変サポートしてもらいました。本町はコロナ禍に入ってすぐにオンライン授業を実施し始めたのですが、これもICT支援員がハード・ソフトの両面から、導入を支えてくれたおかげです。当時、町外から見学に来られた方々にも、「ICT支援員の充実は不可欠」だとよく訴えていました。

異動や転出、復帰等もあり、まだ先生方の間にICT活用の格差がないわけではありません。子どもたちも、コロナ禍真っ只中の頃に比べると活用の必要性に駆られていませんので、特に前期課程におけるICT活用の状況はこれから注視していく必要があります。 ただ、私が先生方に強調しているのは、「使ってください」ではなく、「使えるようになってください」です。目的は、子どもたちの成長です。そこをぶらさずに、町として先生方や子どもたちにできる支援を絶やさず続けていきます。

※ページの内容は2024年11月時点の情報です。

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