ミライシード

導入事例

奈良県大和高田市立高田西中学校 新宮 千佳子先生
対話で心を耕す
探求型英語教育の実践
― ICTによる足場かけと、
地域社会への学びの挑戦 ―
取材
奈良県大和高田市立高田西中学校 | 新宮 千佳子先生
使用製品
オクリンクプラス
学年
全学年

大和高田市立高田西中学校の新宮千佳子先生は、「ミライシードAWARD2025」の関西・中四国地域賞に輝かれました。本実践は、英語学習における生徒の意欲や心理的ハードルの変化をデータで検証し、その結果を授業改善へと生かしている点や、ICTを活用して一人ひとりの役割と成長を可視化し、学びを地域社会へと広げている点が高く評価されました。英語を通して、対話と社会とのつながりを育む、展開可能性の高い実践です。
今回は、新宮先生に実践の詳細や背景にある課題についてお話を伺いました。

導入成果
英語を「知識」から「人とつながる力」へ

英語学習を「他者と心を通わせ、協働するための言語」として位置づける新宮先生の実践です。

舞台は中学校1年生。新しい人間関係を築く大切な時期だからこそ、言葉を通じて心を通わせる「つながり」を大切にしたいと考えられました。

1学期の振り返りを通して、新宮先生は「英語を使って“誰かとつながれた”という実感が十分ではない」と感じ、学びの場を教室にとどめず、地域社会へと広げる探究型の授業に挑戦しました。


「Think Globally, Act Locally」を自分事にする授業デザイン

実践の軸は、教科書の「Think Globally, Act Locally」です。この普遍的なテーマを生徒が自分事として捉えられるよう、学びを「実態を知る」「自分事にする」「自信を届ける」という学びの過程を3つのステップで考えました。 ICTと協働学習を掛け合わせることで、単なる知識の習得に留まらず、足元の生活実感から世界の諸問題を自分の問いとして捉え直す、そんな学びの姿を目指しました。


オクリンクプラスが支える「安心して挑戦できる場」

こうした探究的な学びを支えたのが、ミライシードのオクリンクプラスです。 新宮先生はICTを単なる道具ではなく、対話を促し、一人ひとりの自己表現を広げるための場として位置づけました。

個別カードに探究のヒントやモデルを提示し、生徒がいつでも参照できる環境を整えました。これにより、生徒は自分のペースで思考を深め、自信を持って対話に臨むことができました。 また、Canvaとの連携による協働編集では、役割分担を明確にしながら思考過程を可視化することで、自然な学び合いが生まれました。

「いつでも仲間の思考に触れられ、自分の思いを伝えられる」ことを何より大切にしたことで、生徒の自己肯定感は高まり、失敗を恐れずに挑戦する姿勢を力強く支えることができました。




【インタビュー】

新宮先生が語る、対話を軸にした英語教育

――英語学習で大切にしていることは何ですか。

新宮先生:

英語教育を通じて大切にしているのは、「自分自身や他者と向き合うことができるような学び」を生み出すことです。それは単なる知識の習得だけではなく、自らの思いを言葉にのせて、相手の思いを受け止める「心と心をつなぐ対話」の実践です。

便利なICTや生成AIが溢れる時代だからこそ、対話を通じて互いの心を耕していく過程は、完全に自動化できない貴重なものだと感じます。英語は目的ではなく、自分の思いを誰かに届けるための「手段」であると捉えています。人との関わりの中で自己を見つめ、互いの考えを分かち合う過程を大切にしています。知識として英語を学ぶだけでなく、生徒達にはその経験を通して「言葉を通じて人と繋がる喜び」を実感してほしいと考えています。

 


―― デジタル化が加速する今だからこそ、「対面ならではの心の交流」という、人間にしかできない領域を重視されているのですね。

新宮先生:

「不易流行」という言葉があるように、ICT活用という「流行」の手段を支えとしながら、対話を通じて心を耕すという「不易」の本質を両輪としていくことが大切だと思います。

英語による対話が相手を知るための心の扉を開くきっかけになると信じているからです。今回のプロジェクトでも、生徒たちと何度も対話を重ねてきましたが、平和について考えを深めたあるグループが、「平和は武器より花束を」という言葉でその願いを表現したとき、教室内が温かい雰囲気になりました。


―― 具体的に、生徒たちにはどのような「場」で英語を学んでほしいと考えていますか。

新宮先生:

私は、英語の授業を、「失敗を恐れず、誰もが安心して自己表現できる場」にしたいと考えています。その基盤づくりとして、新たな集団の中で関係性を構築する中学1年生は、人間関係の土台をつくる大切な時期にあります。だからこそ、早い段階から「お互いの考えを認め合える環境」を教室内に築くことを常に意識してきました。

「対話」を軸とした学びを深めることで、生徒たちにはその経験を未来の自分を支える力へと変えていってほしいですし、人と関わる力を育むことが、英語学習における「探究」として追求したい学びの姿です。


全員が主役になる評価と自己肯定感の育成

――発表後の評価はどのように行いましたか。

新宮先生:

オクリンクプラス上に表現・協働・共感・構成の4つの視点から成長を捉える独自の評価指標を導入しました。発表直後に称賛コメントを送り合う仕組みを整えたことで、画像制作、データ活用、グループリーダー等の役割を担った個々の貢献が可視化され、生徒は自分の役割に自信を持てるようになりました。

仲間からの評価を通じて自分の強みを再認識できたことは、自己肯定感を育む貴重な機会となりました。自己評価と他者評価の双方向で行うことで、自らの学びを客観的に振り返ることができたと感じています。


――どのような変化がありましたか。

新宮先生:

一人ひとりがチームの一員として役割をやり遂げ、仲間からの言葉によって自分の得意が誰かの役に立つ喜びに気づく姿が見られました。

「自分はチームに貢献できた」という実感は、大きな成果です。2学期から取り組んできたスピーチの締めくくりでは、仲間と共に意見交流しながら、「私達ができること」をさらに深め「地域への提案」にまで考え抜くことができました。 これらの経験は、生徒たちが自分なりの価値を見出す足掛かりとなっています。振り返りの記述からも、活動の一つひとつが「自分は必要とされている」という自己有用感に結びついてきていることを実感しています。


地域社会へ開かれた学びへ

――探究はどのように地域へ広がっていったのでしょうか。

新宮先生:

当初の実践は、調べて発表する活動に留まる傾向がありました。この課題を克服するため、生徒を未来の「我が街のデザイナー」と位置づけた学びの形へと移行しました。例えば食品ロスをテーマにした班では、校内の栄養士へのインタビューを通して、「冬場に牛乳の残食が増える」という実情を知りました。

想定外の事実との出会いが、社会課題をより身近で切実な問いへと引き寄せ、自分事として捉えようと模索する姿が見られるようになってきたと感じています。

そこから、「自分たちに何ができるのか」を考え、学びは「地域への提案」へと発展しました。地球規模の環境問題から身近なスマホ依存といった現代社会の諸問題まで、生徒一人ひとりが自ら向き合うべきと定めたテーマに対し、統計データなどの根拠を示しながら、自らの願いを込めた英語での発表に挑みました。

3学期には「大和高田市 笑顔になれる街づくり」をテーマに、地域に向けた具体的な提案をデザインする段階まで進みました。調べ学習で得た知識を「知識」のままで終わらせず、「いかにして実現するか」に向けてそれぞれの視点から知恵を出し合い、解決への道筋を協働的に模索する姿勢が定着しつつあります。生徒たちの想いが詰まった提案書は、担当部署を自分たちで調べ、市役所へ提出しました。

今後は、こうした探究学習の積み重ねを通して自分たちの考えを社会へ向けて発信し、より良い未来を共に育んでいく力を、本実践の到達点として見据えています。

 


対話を通して、未来をデザインする力へ

――実践を通して感じた成果を教えてください。

新宮先生:

今回の「Think Globally Act Locally」では、課題・解決・分析という3ステップのリサーチプロジェクトに取り組み、自分の持ち場に責任を持ち、チームの一員として主体的に貢献する姿勢を見せてくれました。

生徒たちに定着していたICTへの前向きな姿勢を基盤としながら、個別学習から一歩踏み出し、協働的な学びの中で仲間と共に知恵を絞る喜びを実感する生徒が増えています。

何よりの成果は、「自分の想いを伝えたい」という意欲を持つ生徒が目に見えて増えたことです。自律的にプレゼン資料を練り直し、教室の至る所で熱心に練習に励む光景が見られるようになりました。迎えた発表会では、校長・指導主事の両先生が見守るなか、生徒たちは準備した内容を自らのものとし、堂々と伝えきってくれました。日々の学習にハードルを感じていた生徒も、自分のペースで試行錯誤を繰り返し、発表をやり遂げた姿に、私自身、深く心を動かされました。

「自分の力で届けられた」という手応えは、生徒たちの中で自信へと少しずつ変わり始めています。自ら問いを見出し、考えを発信できたことは、英語学習にとどまらず、今後の探究学習においても大きな力になるものと信じています。


ICTを「対話を深める足場」として

――ICTの役割を一言で表すと?

新宮先生:

学びの主役は、あくまで生徒です。 ICTは仲間をつなぎ、対話を広げ、学びを支えるための「足場」です。自分の考えを整理し、客観的に振り返る「自己調整学習」を可能にするオクリンクプラスは、どの子も学びに参加し、一人ひとりの挑戦を後押しし、生徒の変容を支える一助となりました。

同時に、生徒たちの振り返りから思考の軌跡に触れることで、私自身もまた多くの内省的な学びを得ることができました。この経験を糧に、自らの実践を相対化し、得られた気づきをもとに、より豊かな学びの場をデザインし続けていきたいと考えています。

 

本実践が、全国の先生方とICTという「足場」を活かして「心を耕す対話」を重ね、探究的な学びへと一歩踏み出すための、一つのヒントとなれば幸いです。

※ページの内容は2026年3月時点の情報です。

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個人思考と共同作業の自由な行き来により
子ども同士が対話し、主体的に学んでいく授業運営を支援。

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