先生の時間を生み出す「生成AI」校務導入ガイド
〜すぐ使える実践術と職員室への広め方〜
働き方
執筆/千葉県市川市公立小学校教諭 宇山 由則先生
はじめに:なぜ今、校務に生成AIの導入が必要なのか?
「便利そうだけど、結局何に使えばいいのかわからない」——生成AIについて、そんな感覚を抱いたことはありませんか。私自身、小学校で学級担任をしながら生成AIに出会い、校務の負担を減らしてくれることを期待して使い始めました。ですが、最初からうまくいったわけではありません。何を聞けばいいのかわからず、「便利そうだけど使いこなせないかもしれない」と感じる時期が続きました。状況が変わったのは、掲示物や議事録作成、単元計画の下書きなど、日々の仕事のちょっとした場面で少しずつ使ってみるようになってからです。
もう一つの悩みが「校内でどう広げるか」でした。自分が便利だと感じても、周りに伝えようとした途端、先生方の間の温度差にぶつかり、気まずい空気が生まれることもありました。
この記事では、そうした試行錯誤の末にたどり着いた実践アイデアと、無理なく校内に広げるちょっとした工夫をお伝えします。「これなら自分にもできそう」と思っていただけたらうれしいです。
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ぞうの重さを量る_単元指導計画2時間
ぞうの重さを量る_単元指導計画2時間
ぞうの重さを量る_ワークシート全2時間
ぞうの重さを量る_ワークシート全2時間
ぞうの重さを量る_ワークシート模範解答入り
ぞうの重さを量る_ワークシート模範解答入り
明日からすぐ使える!
生成AIの校務導入・実践アイデア11選
ここからは、私が日常的に行っている実践11個紹介します。どれも特別な準備は不要で、明日から試せるものばかりです。
①学級目標や展示作品のPOPなど掲示物の作成
(おすすめAI:ChatGPT、Gemini)
これはすごく簡単に使えて効果が実感できる(短時間で質のよい物が作れる)実践です。
プロンプト(Gemini)
「小学校の教員です。学級目標のポスターを作りたいと思っています。学級目標は学習に集中しようです。A4横で文字は学習に集中しようだけにしてください。その他は画像でデザインして作ってください。画像はなんとなくのイメージで大丈夫です。」

作成にかかる時間はわずか数分、いろいろな掲示物に使えます!
ChatGPTやClaudeで同じように聞くとこうなりました。

同じことを、別の生成AIに聞くと、かなり違う答えが返ってくることも多いです。生成AIを使い分け、自分で選択するという視点も必要だと思っています。
②授業で使用する教材作成
(おすすめAI:ChatGPT、Gemini)
同じように、授業で使用する教材(画像)作成にも活用できます。
プロンプト
「千葉県の形で千葉県のランドマークをたどれるようなすごろくを30~60マスで作ってA4サイズの画像にして」

必要に応じて生成AIに修正の指示を出して作り直し、印刷して使用します。
①と同じように、生成AIによって答えがかなり違うのがわかると思います。自分のイメージに合う物を選択して使うといいと思います。
➂単元計画やワークシート作成の「壁打ち相手」として使う
(おすすめAI:Claude)
単元計画やワークシートを作るとき、AIを「壁打ち相手」にしています。学年と教材名、身につけさせたい力を伝えて「10時間扱いの単元計画の案を出して」と頼み、出てきた案に対して「導入をもっと子どもの問いから始めたい」「協働的な学びの場面を増やして」と対話を重ねていく。ゼロから一人で考えるより、格段に早く、しかも考えが広がります。
最近作成した単元計画とワークシートです。
プロンプト
「小学校4年生国語、花を見つける手がかりの前の小単元「ぞうの重さを量る」の、2時間扱いの単元計画の案を出して、身につけさせたい力は説明文の構造を捉える力」「単元計画の中にあるワークシートを作って」「模範解答入りのワークシートも作って」
※実際に作成したワークシートは記事内からDLいただけます。
Wordで出力できるので、これに対話を重ねて修正を加え、最後は自分で直接微調整を加えて使用することが多いです。このような、対話しながら教材研究をしたり、ワークシートを作ったりする作業はClaudeが向いていると感じます。
④子どもの実態に合わせた支援アプリの作成
(おすすめAI:Claude)
算数などで苦手な児童に合わせて支援アプリを作成することもできます。これは、Claudeに作ってもらった、1桁でわるわり算が苦手な児童が自分でステップアップしながら学習できる支援アプリです。これはClaudeの得意分野です。
プロンプト
「1けたでわる割り算を暗算することが苦手な子が自分で学習できる暗算アプリを作って」
⑤「自分だけの校務アシスタント」を作る
(おすすめAI:GeminiNotebook(旧:NotebookLM))
⑥会議の録音からの議事録作成
(おすすめAI:何でもOK)
校内の検討会や打ち合わせを録音しておき、文字起こしを生成AIに渡して「議事録にまとめて」と指示するだけで、議事録の骨子が完成します。記録係の人が、会議中にメモを取ることに必死になる必要がなくなり、全員が議論そのものに集中できるようになりました。
<生成AIの作成した議事録>
国語部会事後検討会議事録.pdf
⑦所見のドラフト作成
(おすすめAI:Gemini + Gem)
学期末の所見は、多くの先生にとって最大の負担のひとつ。私は、子どもの氏名を入れず、日頃メモしてきた行動の事実をAIに渡します。その際に、GeminiのGemを利用すると効率的に作成することができます。

出てきた文章を、その子の顔を思い浮かべながら自分の言葉で仕上げる。ゼロから書くのと比べて、時間も心の負担も大きく減りました。
⑧教科書のページを写真に撮って、文字起こししてもらう
(おすすめAI:何でもOK)
意外と知られていないのが、この使い方です。教科書のページをタブレットなどで写真に撮り、生成AIに渡して「本文をそのまま文字起こしして」と頼むだけで、ほぼ完璧なテキストデータができあがります。これまで教材づくりのために本文データが欲しいときは、自分でタイピングするか、朗読音声から文字起こしをして、誤変換された漢字をひとつひとつ手で直していました。正直、かなり大変な作業でしたが、写真からの文字起こしなら数十秒。できあがったテキストは、ワークシートや全文テキストの素材として、そのまま活用できます。
※教科書の著作権は教科書会社にあります。授業内での利用を超えての使用はできないので気を付けてください。
⑨指導案の作成のアシスタント
(おすすめAI:Claude)
今回、自分が今年の10月に授業研を行う、第4学年「ごんぎつね」の指導案を生成AIと共に作成しているところです(まだ作成途中ですが)。自分のお手本とする指導計画や自分の構想メモを生成AIに読み込ませ「この資料の内容に沿って、「ごんぎつね」の10時間の単元計画を具体的に立てて」と打って原案を出してもらいます。その原案に対して、自分の考えに合うように、生成AIと対話しながら修正していきます。その際に「オクリンクプラス」のカード案やワークシート案も出してくれます。自分の納得のいく原案が完成したら、本校の指導案の型を生成AIに読み込ませ、「この単元計画を、指導案型のフォーマットにあてはめて書いて」と打つと、完全なものではないですが、型に合わせて指導案の原案を作ってくれます。あとは、不足分を追記したり、内容を試行錯誤したりしながら原案に修正を加えていきます。
⑩ICT関係で困ったときの相談相手
(おすすめAI:何でも)
これは非常に簡単です。トラブル画面やエラーメッセージのスクリーンショット(画像)を生成AIに渡して、「解決方法を教えて」と聞くだけです。多くの場合、適切な解決方法を示してくれます。今までのように検索を繰り返して探す手間が省けます。
⑪運動会練習や学年集会など児童の前で話す内容のアイデア出し
(おすすめAI:ChatGPT、Gemini)
運動会練習や学年集会で話をするときなど、児童に話す言葉の内容がうまく思い浮かばないとき、内容の原案を出してもらって、そこに修正を加えていくと、短時間で自分の考えをまとめることができます。自分はよくこのように聞いています。
プロンプト
「学年集会で、トイレの使い方について話をします。最近トイレの使い方がきたないです。1~2分で話せるように話す内容を考えて」。答えの内容を元に、自分の話す内容をまとめます。
著作権について
生成AIを活用するにあたって気を付けなければならないのが著作権です。文化庁の見解では、生成AIが生成した物は作成した人が著作者となるとされています。ただし「自分で生成AIを使って作ったから全てオリジナル(自分の著作物)」と考えてしまうのは誤解です。生成された物が既存の著作物と「同一」または「類似」していれば、それをSNSや学校HPに公開したり、授業以外で配布したりすることで著作権侵害となる可能性があります。
学校での生成AI活用は、入力、出力、公開という3つの場面それぞれに著作権上のポイントがあります。
①入力のポイント(見落とされがちですが注意が必要です)
プロンプトにキャラクター(既存の著作物)名を入れていないか
プロンプト
「ジブリ風の画像で…」はアウトです。
既存の著作物そのものを入力に使用していないか
ディズニー作品の画像を入力データとして生成AIに読み込ませる、はアウトです。
※生成の過程(生成AIのチャット履歴)は必ず残しておくことをおすすめします。何かあった時に、生成の経緯を証明することができるからです。
②出力のポイント
生成物が他の著作物(既存作品)に似ていないか
※画像検索などで確認したり、周囲の人に聞いたりするのが有効です。何かに似ているなと思ったら、そのまま使用しない方が安全です。
ただし、先生方が安心して授業に取り入れられるよう、著作権法には例外規定があります。著作権法第35条では、「非営利の学校の授業の目的」であれば、必要な範囲で著作権者の許可を得なくても、著作権者の利益を害しない範囲で著作物を利用できるとされています。例えば、生成AIで作った、他の著作物(既存作品)に似た画像を授業資料として使用することは認められています。ただし、校務(授業や授業準備以外の仕事)で使う場合、第35条は適用されません。「授業のため」か「それ以外(校務など)」という視点で考えると仕分けしやすいと思います。上記の実践を仕分けすると、下記のようになります。
- 授業目的と考えられる:②、③、④、⑧、⑨、⑪
- それ以外と考えられる:①、⑤、⑥、⑦、⑩
③公開のポイント
上記の例外は「授業(授業準備)」限定です。生成AIで作成した物をSNSや学校HPなどの不特定多数が閲覧できる場で公開する場合は、著作権上の問題がないかを確認してから行う必要があります。保護者向け便りや学校外のイベントでの配布も同様です。
ここに書いた内容は、教師だけでなく児童生徒が生成した物についても同様です。なので、児童生徒に対する著作権の教育は絶対に必要です。たとえ学校で使用させていなくても、多くの児童生徒は学校外で使用しているからです。
生成した画像に類似したコンテンツが存在しないのか、この使用方法は授業目的にあてはまるのか、など著作権は微妙な判断を要する場合があります。使用する前に「これは大丈夫だろうか」と感じたら、同僚や管理職に相談し、確認を重ねることが、トラブルなく安心して使用するポイントになると思います。
Claude・Gemini・GeminiNotebook・ChatGPT・Copilot…
校務導入に適した生成AIの選び方
「どのAIを使えばいいの?」というのも、よく受ける質問です。それぞれに得意分野があるので、用途で使い分けるのがおすすめです。
Claude、Gemini、GeminiNotebook、ChatGPTそれぞれの得意分野(テキスト・画像の扱い)に絞っています。

生成AIには、得意不得意があります。自分は、特に初めての使い方の場合は、基本的に2種類以上の生成AIを試すようにしています。病気の際のセカンドオピニオンではないですが、1つの生成AIの回答を鵜吞みにしないようにしています。予想外にいい回答が得られることも多いです。
生成AIの校務導入、
なぜうまくいかない?
現場が抱える「見えない壁」
新しいツールを校内に導入しようとすると、なぜかうまくいかない。研修を開いても、その場では「便利ですね」と言ってもらえるのに、翌週には誰も使っていない。こうした光景は、どの学校でも起こりがちです。その原因を「先生方のITスキルが足りないから」と考えてしまうと、話がこじれます。実際はそうではなく、日々の業務に追われて、新しいことを試す余裕がそもそもない、という構造的な問題なのだと思います。授業準備、丸つけ、保護者対応、行事の運営、目の前のタスクで手一杯のときに、「新しいツールを覚えましょう」と言われても、それ自体が負担になってしまうのです。だからこそ、導入の入り口は「研修」ではなく、もっと小規模なほうがいいのだと考えるようになりました。
立派な研修よりも効果的?
「職員室での雑談」から始めるAI体験
私の場合、校内で生成AIが広がり始めるきっかけになったのは、職員室での雑談でした。学年の先生と教室の掲示物の話をしているときに、その場で学級目標の掲示物を作らせてみたのです。数十秒で案が出てくるのを目の当たりにした先生の「え、もうできたの?」「これすごくいい」「簡単に何度も作り直せる」という驚きの声。この「すごさを実感してもらう瞬間」が、どんな研修資料よりも雄弁でした。全員向けの研修は、どうしても「やらされ感」が出てしまいます。それよりも、何人かの先生と一緒に画面を見ながら「こんなこともできるんですよ」と体験してもらう。興味をもった先生が、また別の先生に話す。この小さな連鎖のほうが、結果的に広まる近道になると感じています。
子どもと向き合う時間を生み出すために
「AIに任せる=手抜き」ではない。
もう一つ、導入をためらわせる心理的な壁があります。それは「AIに任せるのは手抜きではないか」という真面目な先生ほど抱きがちな罪悪感です。でも、少し考えてみてください。私たちが本当に時間をかけたいのは、掲示物のレイアウト調整でしょうか。それとも、目の前の子どもの様子をじっくり見取り、一人ひとりに合った声かけを考えることでしょうか。AIに任せられる作業を任せることは、手抜きではなく、子ども主体の教育を実現するための時間の再配分です。事務作業を圧縮した分だけ、子どもと向き合う時間、教材研究をする時間が生まれる。そう捉え直すと、心のブレーキが少し緩むのではないでしょうか。
生成AIで先生の心にゆとりが生まれ、
子どもたちの主体的な学びが加速する
道具の話を続けてきましたが、いちばんお伝えしたいのは、その先にある変化です。生成AIの活用で業務の効率化が図れた分、本来の最優先業務である教材研究に多くの時間を注げるようになりました。
また、普段から子どもたちの小さな成長を見取る余裕もできました。すると不思議なもので、以前より子どもの発言にじっくり耳を傾けられるようになり、「先生、これってこういうこと?」という子どものつぶやきを拾って授業に生かせる場面が増えたのです。
教材研究が深まり、先生の心にゆとりが生まれると、教室の空気が変わります。生成AIの校務活用は、単なる時短術ではなく、子どもたちの主体的な学びを支える土台づくりなのだと、今は実感しています。
まとめ:
生成AIとの二人三脚で、
児童と向き合う時間を増やす
生成AIの校務導入は、大がかりな改革ではなく、「小さな実感」の積み重ねと共有から始まります。
まずは明日、掲示物の作成でも、次の授業展開の相談でも、ワークシートの作成でも、何かひとつ試してみてください。はじめは抵抗を感じるかもしれませんが、その小さな一歩が、長い目で見ると先生ご自身の時間と心のゆとりを生み、業務を効率化し教材研究や児童と向き合う時間を増やします。
それが教室全体の追い風となり、学級をよい方法に導き、やがて職員室全体の追い風となり、学校全体をよい方向に導いてくれると思います。
おわりに
最近、生成AIのシンポジウムで興味深い話を聞きました。それは、児童は好きな教師から最もよく学ぶという調査結果です。
生成AIは人間のよきパートナーです。生成AIと共に生み出した時間で児童一人ひとりの学習を丁寧に見取り、声をかけ、支援する、それが児童の学習意欲を高め、生成AIと共に取り組む教材研究と授業展開で児童の学力を伸ばす。
教師と生成AIの二人三脚こそが、これからの教師の進む道なのだと、今は思っています。
先生のプロフィール
宇山 由則 先生
千葉県市川市公立小学校教諭
元SEGAゲームプログラマー、2010年より小学校教諭。プログラマーとしての経験を生かし、情報主任としてICTや生成AIを活用した教育を推進、ミライシードなどを効果的に取り入れ、児童主体の個別最適で協働的な学びを各教科で実践・探究している
【主な受賞歴・活動】
・市川市教育実践論文 最優秀賞 テーマ「Society5.0を担う子どもたちを育てるために ~AIとプログラミングで身近な課題を解決しよう~」
・ミライシードDXエデュケーター
・千葉県教育研究会市川支会 情報ICT部会 運営委員
・柏メディア研究会 会員