アイデアを育む教師の余白をつくるノート術
―学級づくりで必要なのは「教師の余白」だった!―
学級経営
執筆/東京都大田区立公立小学校教諭 東山 峻先生
はじめに
前回の記事では、ICTを活用した学級レクをご紹介しました。「子どもたちが楽しめそう!」というアイデアは、どこから生まれるのか。今回は、その土台となっている私自身のノート術をご紹介します。
私は、子どもの心をほぐすような面白いアイデアを考えるために、教師自身の心にも 「余白」が必要だと感じています。余裕がないとき、人は「楽しい」を考えられなくなります。目の前の仕事をこなすことで精一杯になり、「あれもしなきゃ」「これも終わっていない」と、気持ちまで忙しくなってしまいます。
そんな毎日の中で、私を支えてくれているのが一冊のノートです。ノートに書くことで頭の中が整理され、自分の気持ちとも落ち着いて向き合えるようになります。すると、「子どもたちは何をしたら喜ぶだろう」「こんな活動なら楽しめるかもしれない」と考える時間が増えていきます。
この記事では、私が実践しているノート術を通して、忙しい毎日の中でも心に余白をつくり、その余白からアイデアを形にしていく方法をご紹介します。
この記事はこんな先生におすすめです!
- 面白いアイデアをもっと生み出したいと思っている先生
- 仕事も気持ちも整理できるノート術を知りたい先生
- いつも子どもを優先して、自分のことは後回しにしてしまう先生
なぜデジタルの時代に、
アナログのノートなのか
もちろん、スマホやPCは、予定管理や資料の保存・共有など、仕事を進めるうえで欠かせない存在です。
一方で私は、考えを深めたり、新しいアイデアを生み出したりするときは、今でもアナログのノートを使っています。(画像①)

画像①
アイデアを出す時のノート。実際に文字にすることで、考えが整理されていく。
その理由は、ノートを書く時間が、忙しい毎日の流れをいったん止めてくれるからです。
学校現場では、次から次へとやるべきことが押し寄せます。気が付けば、目の前の仕事をこなすだけで一日が終わってしまうことも少なくありません。そんなときこそ、私はノートを開きます。手を動かしながら書いていると、頭の中で散らばっていた考えが整理され、「今、本当に優先すべきこと」や「次に何をすべきか」が少しずつ見えてきます。立ち止まって考える時間があるからこそ、自分の考えをじっくり深めることができるのです。
さらに、ページを見返していると、それまで別々だった考えが思いがけずつながることがあります。「このレクを授業の導入に取り入れたらどうだろう」「この子のつぶやきを活動に生かせないだろうか」と、新しいアイデアが少しずつ形になっていきます。
こうしてノートの上で育った小さなアイデアが、子どもたちの笑顔や「楽しかった!」につながっていくことを、私は何度も経験してきました。
なぜ“手帳”ではなく、
“ノート”なのか
実は私は、スケジュール管理も手帳ではなく、ノートで行っています。もちろん、思考の整理やアイデア出し、自分と向き合う時間も、すべて同じ一冊のノートです。
その理由は、大きく二つあります。
(1)書き方に縛られないから
手帳には、どうしても「正しい使い方」があります。
・この欄には予定を書く
・このページには振り返りを書く
もちろん、それが手帳の良さでもあります。しかし、私にはその決まった形が、少し窮屈に感じることがありました。
一方で、ノートには決まった使い方がありません。忙しい週は箇条書きだけでもいい。じっくり考えたいときは、見開きいっぱいに書いてもいい。図を書いたり、矢印でつないだり、思いついたことをそのまま書き留めたりと、そのときの自分に合わせて自由に使うことができます。(画像②)
だからこそ、考えを止めることなく、思考を自然に広げたり整理したりできるのです。

画像②
この時期の使い方は、上半分に一週間の予定を書き(1)、
その他に「こんなこともできた(2)」や「小さな喜び(3)」を書いている。
(2)空白が罪悪感にならないから
実は、以前は私も手帳を使っていました。新しい手帳を買うたびに、「今年こそ続けるぞ!」と意気込み、最初の数か月は予定や振り返りをびっしり書き込んでいました。
でも、どうやら私は、手帳を買う瞬間が一番やる気に満ちているタイプだったようです。毎年6月頃になると少しずつ書かなくなり、「今日は忙しかったから、また明日書こう」と思ったまま数日が過ぎ、気づけば真っ白なページが並んでいる…。そんなことを何度も繰り返してきました。
その理由の一つは、手帳には一年分の日付があらかじめ並んでいるからです。
書けなかった日が続くと、そのページが空白のまま残ります。その空白を見るたびに、「今回も続かなかった」「またここから書き始めるのは気が重い」と感じ、ますます手帳を開けなくなってしまいました。
一方で、ノートには日付がありません。書けなかった週があっても、次に開いたときは前回の続きから始めればいい。「また始めよう」と自然に思えるのです。
さらに、ノートは軽くて持ち運びやすく、思いついたときにすぐ開くことができます。「このノートは今の自分には合わないな」と感じたら、新しい一冊に替えて、また心機一転スタートすることもできます。
手帳は私にとって 「続けなければならないもの」になってしまいましたが、ノートは「何度でも戻ってこられるもの」でした。だから私は今でも、ノートを使い続けています。
もちろん、手帳がしっくりくる方は、そのまま手帳を使うのが一番だと思います。大切なのは手帳かノートかではなく、自分が無理なく続けられること。私にとっては、それがノートだったのです。(画像③・④・⑤)

画像③
ノートはごく普通のB5サイズを主に使用しており、A6の胸ポケットに入るサイズを使っていたことも。
気持ちが乗らなくなった時は心機一転、新しいノートに変えることもある。

画像④
以前使用していた手帳(1)4月は予定を細かく書くことができている。

画像⑤
以前使用していた手帳(2)12月は予定を全く書くことができなかった。
おもしろい アイデアは、
「ちょっと気になる!」のメモから生まれる
「どうしてそんなにアイデアを思いつくんですか?」
ありがたいことに、そんな質問をいただくことがあります。でも実は、私は特別発想力があるわけではありません。大切にしているのは、心が少し動いた瞬間を、その場ですぐノートに残すことです。書くのは、「授業で使えそう!」と思ったことだけではありません。
「なんだか気になる。」
「これ、おもしろい。」
そんな、まだ名前もついていない小さな引っかかりも、とりあえずメモしておきます。授業につながっていなくても構いません。きれいにまとめる必要もありません。一言だけでも、箇条書きでも、走り書きでも十分です。大切なのは、そのとき心が動いたことを、忘れないうちに残しておくことです。(画像⑥)

画像⑥
「ちょっと気になる!」と思ったことはノートにメモしておく。
例えば、Amazonで本を探していたときのことです。
購入前にレビューを読んでいると、「この本のどこがよかったのか」「どんな人におすすめなのか」を、自分の言葉で伝えている人がたくさんいました。そのとき、「これって、子どもたちにもやってもらったら面白いかもしれない」と思いました。
本を読んだ感想を書くのではなく、友達におすすめするレビューを書く活動です。その場で、ノートに一言だけメモしました。このときはまだ、授業の形にはなっていません。でも、それで十分です。
私にとってノートは、完成したアイデアを書く場所ではなく、「ちょっと気になる!」を預けておく場所だからです。(画像⑦)

画像⑦
Amazonで本を探していたときに書いたメモから、友達におすすめするレビューを書く活動が生まれた。
下の写真は、「ウォーリーを探せ風」の学級レクを考えていたときの実際のノートです。(画像⑧)

画像⑧
「ウォーリーを探せ風」の学級レクのアイデアを出した時のノート。
このページを見ると分かるように、最初から「ウォーリー風のレクをやろう!」と思いついたわけではありません。まず考えたのは、「このレクを通して、子どもたちにどんな姿になってほしいのか」ということでした。
「普段関わらない友達とも交流してほしい。」
「安心して挑戦できる雰囲気を作りたい。」
そんな願いを書き出し、思いついたことを書き足しながら考えを深めていくうちに、一つひとつのメモがつながり、「ウォーリーを探せ風」の学級レクが形になっていきました。
このように、私にとってノートは、「ちょっと気になる!」を集め、子どもたちの笑顔につながる実践へと育てていく場所なのです。
アイデアだけじゃない!
ノートは困ったときに寄り添ってくれる味方!
私がノートを使うのは、予定やアイデアを書き出すためだけではありません。むしろ、本当に助けられているのは、困ったことや悩み事が起きたときです。
仕事でうまくいかなかった、人間関係でモヤモヤした。そんなときこそ、私はノートを開きます。
問題が起きたとき、私が必ず行うのは、「事実」と「感情」を分けて書くことです。例えば、以前こんなことがありました。
ある仕事で私は、「きっとここまでやっておいた方が、みんなが助かるだろう」と思い、頼まれていないところまで先回りして仕事を進めていました。良かれと思って始めたことでしたが、気付けばほとんどを一人で抱え込み、苦しくなってしまったのです。
そこで、ノートに事実と感情を書き分けてみました。まず事実として書いたのは、「担当は私を含めて 3 人いたこと」「主任から『あなた一人で全部やって』とは言われていなかったこと」です。つまり、最初から一人で抱え込む必要はなかったのです。事実から、「次は先回りしすぎないようにしよう」「自分にできることと、周りに任せることを分けて考えよう」と、次に生かせる行動が見えてきました。
一方で、感情を書いてみると、「みんなを助けようと思って頑張った」「そう思ってやっていたのに、なんだかしんどい」という、押さえつけていた自分の本音が見えてきました。
このように、 事実と感情を書き分けることで、 出来事を客観的に整理しながら、 自分の気持ちも大切にすることができます。 事実だけを書けば、「次はこうしてみよう」と改善策は見えてくるかもしれません。しかし、それだけでは、自分の気持ちは置き去りになってしまいます。
だから私は、感情も書きます。「本当はしんどかったんだな」「頑張ろうとしていたんだな」「だから苦しかったんだな」と、書きながら初めて気付く気持ちがたくさんあるからです。誰かに話を聞いてもらうと、気持ちが少し軽くなることがあります。ノートも、それに少し似ています。書き出すことで、自分の気持ちを否定せずに受け止められるようになるのです。
そうして自分自身に寄り添っていくうちに、まるでノートの中に、自分の話を静かに聞いてくれるもう一人の自分がいるような感覚になります。ただ話を聞いてくれる存在がいるだけで、不思議と心は整理されていきます。書き終える頃には、気持ちが少し軽くなり、「じゃあ次はどうしよう」と前を向いて考えられるようになっています。
私にとってノートは、アイデアを書き留める場所であると同時に、困ったときにそっと寄り添ってくれる味方でもあるのです。(画像⑨)

画像⑨
問題が起きた時に書いたノート。事実と感情を分けることで、
客観的に考えることができると同時に、自分の気持ちにも寄り添える。
おわりに
忙しい毎日の中で、「ノートを書く時間なんてない」と思う先生もいるかもしれません。
でも私は、その時間があるからこそ、忙しい毎日を乗り越えられていると感じています。ノートを書くことで心に余白が生まれ、その余白が子どもたちの笑顔につながるアイデアを育ててくれます。
ほんの5分でも構いません。ぜひノートを開いて、その日の出来事や先生方の大切な気持ち、「ちょっと気になる!」と思ったことを書いてみてください。その一冊のノートが、忙しい毎日の中で、あなたにそっと寄り添ってくれる味方になってくれたら、とてもうれしいです。
私のような三日坊主さんに伝えたい!ノートを続ける3つのポイント
続けるコツは、ハードルをとことん下げることです!
①書くことに時間をかけない
きれいに書こうとせず、一言でも、走り書きでもOK!
②常に持ち歩く
思いついたらすぐ書けるように、軽くて持ち歩きやすいノートを選びましょう!
➂完璧じゃない自分を受け入れる
書けない日があってもOK!書けるときに、またノートを開けば大丈夫。

先生のプロフィール
東山 峻 先生
東京都大田区立公立小学校教諭。
ベネッセ「ミライシード DX エデュケーター」としても活動し、ウェビナーや研修等を通じてICT活用の実践事例を全国へ発信。ベネッセコーポレーションとジブラルタ生命が共同開発した金融教育教材の監修を務めるなど、活動の幅は多岐に渡る。AIの勉強と出退勤時のランニングが日課。
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