【小5社会科】
「自動車をつくる工業」の調べ学習をアップデート!
3時間1サイクルの授業アイデア
授業づくり
執筆/千葉県浦安市公立小学校教諭 柳 圭一先生
社会科の学習を進めるうえで、あまり表に出てこない「調べ学習」の上手な進め方
社会科の授業は、「つかむ・調べる・まとめる・いかす」という問題解決的な学習の流れを踏まえて行われます。
この中で、「つかむ」「まとめる」「いかす」の過程は研究授業や授業参観で公開されることが多く、授業のイメージが持ちやすいと思います。 しかし、「調べる」の過程は実践例が少なく、現場の先生方からは以下のようなお悩みをよく耳にします。
「具体的にどう進めたらよいかわからない」
「見開き2ページを1時間で進めると、調べる時間が十分に取れない」
「子どもたちが教科書や資料集をただ写して終わり(作業化)になっている」
そこで、本記事では、「調べる」過程をより充実したものにするための単元デザインについて解説します。 実際に「調べる」の過程でどのように授業を進めたらよいのか、5年生「自動車をつくる工業」の実践例をもとにお話ししていきます。本記事を読んで、2学期の実践でぜひ試せるアイデアを見つけてみてください。
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小5社会「自動車をつくる工業」で
調べ学習がうまくいかない本当の理由
前述したように、調べ学習が教科書や資料集を写すだけの「ただの作業」になってしまうことはないでしょうか。しかし、子どもたちは調べ学習が苦手・嫌いかというと、そうではありません。
令和4年度に行われた、学習指導要領実施状況調査では、「自分の疑問や予想について、調べたり考えたりすることができますか」「自分で資料を集めて調べることができますか」という設問に対して、7割以上の児童が肯定的な回答をしています。[1]
つまり、子どもたちは調べるのが苦手なわけではないので、先生の進め方次第では、「調べ学習がおもしろい!」「社会科の時間がすき!」につながる可能性があります。
調べ学習の具体的な方法に進む前に、調べ学習がうまくいかない(いっていない)と考えられる理由をもう少し解像度を上げて分析してみたいと思います。
[1] 国立教育政策研究所
「令和4年度小学校学習指導要領実施状況調査 教科等別分析と改善点 小学校社会」P14
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/shido_r04/pdf/4_2_r4bunseki_shakai.pdf
(最終閲覧日令和8年7月22日)
うまくいかない理由①:
調べる内容が子どもの「調べたい」になっていない
自動車をつくる工業の学習でいうと、「つかむ」の学習で、「自動車工場では、どのように自動車をつくっているのだろう」という学習問題ができたとします。この、「どのように」という学習問題では、子どもたちが「事実」を見つけることに終始する、一問一答の学習になりがちです。この学習問題の答えは、「プレス→塗装→組み立て→検査」という手順です。子どもたちは、教科書や資料集を見ながら該当するページを探し、そこに書かれている内容を写していきます。教科書も資料集も、写真付きの工程が掲載されているので、その工程をノートに写し始める子や、写真の周辺に記載されている解説をそのまま写して終わる子が出てしまいます。
うまくいかない理由②:
調べる時間が十分に確保されていない
きちんと調べる計画を立てて調べ学習をスタートさせたとします。その時、教師であるみなさんは何をしているでしょうか。これから予測困難な時代を迎えるにあたり、令和3年に中央教育審議会から出された答申では、主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」が求められています。指導の個別化で、一人で調べたり、グループで協働しながら調べたりするなど、学習形態も多様化していくことが考えられます。教師は、調べ学習の時間、それらの子どもの様子を見取りながら学習が進んでいくように適切な指導をしていく必要があります。個に応じた調べ学習の指導をするのに、一時間の中の一部分だけを調べ学習としてしまうと、十分に指導する時間が確保できないことが予想されます。そこで、提案したいのが、「3時間1サイクルの問題解決的な社会科学習」です。

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調べ学習がうまくいく!
3時間1サイクルの問題解決的な学習の進め方
調べ学習の「あるある」を乗り越えて、子どもたちの学習を進めるためのアイデアをご紹介します。
ステップ① 調べ学習の羅針盤となる「予想」をしっかりとたてる
問題解決的な学習では、学習問題を作った後で、「予想を立てる」場面をつくります。一人ひとりが予想をきちんと立てられると、調べる方向性が明確になり、学習が進みます。
以下、東京書籍「新編 新しい社会 5下」をもとに、実際の進め方をご説明します。まず、車の写真からやカタログから、「自動車」のイメージを共有して、車を買うシミュレーションをします。
家庭によって車がある・ない場合もありますので、まずは子どもたちを共通の土台に乗せるところからスタートします。CMなどでよく見ることが多い車種の写真(カタログの実物だとなおいいです)を見せて、「もしみなさんが車を買うとしたら、どちらがいいですか?」と聞きます。
車を買うと言っても、その選び方は多種多様です。まずは車種を選び、色、グレード、オプションを決めていく必要があります。そうすると、一つの車種だけで「1200万通り以上」もの組み合わせが考えられるわけです。ここで、子どもたちの一つ目の驚きがあります。
一台の車だけでもこれだけの組み合わせがあるのに、一つのメーカーでは数十種類の車を売っているわけで、「これだけの車の中からお客さんの注文に合わせて作るのは大変そうだな」という感覚を共有します。
さらに、一台の車をつくるのに使われている部品の数を調べると、約3万個ということがわかり、ここでも「こんなに多くの部品を組み立てているんだ」という二つ目の驚きがあります。
最後に、これだけ多くの部品を使って一台の車をつくるまでにどれくらい時間がかかると思う?と問います。当然、多くの部品を使って組み立てているのですから、時間がかかることが予想されます。もしクラスにプラモデルを組み立てるのが大好きなお子さんがいたら、大活躍のチャンスです。一つを組み立てるのにどれくらい時間がかかるのかを聞いてみてください。きっと、その苦労を語ってくれるでしょう。
こうやって聞いたうえで、実際にかかる時間のデータを示します。そうすると、17~18時間で生産できることがわかります。ある一つの工場では、年間に37万2000台も車を作っているデータも示すと、子どもたちは「こんなに早くたくさんつくれるの?」という三つ目の驚きが生まれます。

これらの驚きを整理して、学習問題とします。子どもたちの「すごい!」「なんで?」「おーっ」という声の理由を集めると、「こんなにたくさんの車を短い時間でどうやってつくるのだろう」という問題ができあがります。
ここまで子どもたちの関心を高めたうえで予想すると、子どもたちは、「機械でつくっている」「多くの人でつくっている」という予想を立てることができると思います。
予想がたったら、それを実際に調べることになるのですが、予想のままだと「何を調べたらよいのかに戸惑う子もいるかもしれません。そこで、予想をグルーピングやラベリングをして、調べやすいようにします。先ほどの「機械でつくっている」という予想に対しては、「工場にはどのような機械があるのだろう」という問いを立てて、それを調べることに導くのです。子どもたちは迷うことなく調べ学習に入れます。「多くの人で」という予想には、「工場ではどれくらいの人が働いているのか」という問いになります。
ここで気を付けたいのは、「一人で全部の予想を調べようとしない」ということです。「ストレートに答えを出そうとしない」と言うこともできます。端末を使って調べることが容易になっている今、学習問題をそのまま検索サイトに打ち込んで答えを調べようとする子も出てきます。AIで回答を生成してくる機能もあるので、なんとなく答えがわかってしまうのです。しかし、それぞれが予想して、調べたことを共有し、みんなで練り上げていくことで学習問題の答えにたどり着くプロセスが、「課題を追究したり解決したりする活動」となります。

授業時の板書の参考例です
ステップ② 学習問題・予想(つかむ)ー調べ学習(調べる)ー共有・まとめ(まとめる)のサイクルを繰り返して時間を確保する
「調べ学習のあるある」で、調べる時間が十分に取れないということをお話ししました。その問題を解決するために、私が普段の社会科の授業の中で取り組んでいるのは、タイトルにあるような「つかむ・調べる・まとめる」のサイクルを繰り返す、問題解決的な学習のやり方です。学習問題を立てて予想する場面で1時間、調べ学習で1時間、共有・まとめをする時間で1時間と、それぞれの過程で1時間ずつ時間を取ることで、調べ学習にも十分な時間を取ることができます。
この調べ学習の時間が、個別最適な学びをする時間になります。子どもによって、教科書や資料集に黙々と向き合ったり、友達同士で同じ予想について調べたりするなど、自分のやり方を考えることができる時間とします。教師は、その1時間の中で子どもたちの見取りをしながら、調べが進んでいない子のフォローをしたりします。
このような1時間を取ることで、子どもたちは十分に資料と向き合って調べることができます。そのため、1時間の中で「学習問題を立てて、予想して、調べて、まとめる」を見開き2ページを1時間で進めるよりも、じっくりと調べることができるのではないかと考えます。
私の授業では以下のようにオクリンクプラスのテンプレートを活用して、調べ学習のまとめをカードで提出してもらっています。同様のことは、プリントや他のICTツールでもできるためおすすめです。

お子さんによっては、調べきれなかったことを授業と授業の間の時間でさらに追加で調べることもできますので、より深い調べ学習ができるのではないかと思います。参考までに、東京書籍の指導計画を「つかむ・調べる・まとめる」のサイクルを繰り返すやり方に変えるとどのようになるのか、次の表で示してみます。


クラスの変化とまとめ
実際に調べ学習に1時間を取るような、3時間を1サイクルとする問題解決的な学習を進めていくと、子どもたちも「今日は調べる時間」「今日は学習問題を立てる時間」など、社会科の授業の流れを理解し、「先生、もう調べ始めていいですか」と聞いてくるような、主体的に学習に取り組む態度が見られるようになっていきます。
ある程度見通しを持って学習を進められるようにするということは、子どもたちが安心して社会科の学習に取り組める大事な要素となります。これを続けていくことで、「やらされる学習」から「自分たちで問題を解決する学習」へと進んでいきますし、ゆくゆくは単元まるごと子どもたちに任せることもできるようになっていくでしょう。
ただし、社会科の学習において、多様な意見を練り上げる時間というのは、必ず確保したほうがよいと考えています。なぜなら、社会というのは、多様な考え方の人々が集まって成り立っているからです。自分と違う意見の人と交流することで、「そういう意見もあるんだ」ということを理解したり、それをもとにお互いが納得できるような考えをつくり上げていったりするやり方を学んでいくのは、社会科の大事な本質だと考えています。
また、先生の準備や授業中の精神的な負担軽減という点でも、このサイクルの進め方は余裕が生まれると考えています。もちろん、事前に先生が教材研究をして、単元の内容について理解しておくことが大切なのは言うまでもありません。しかし、1時間を調べ学習の時間にすることで、一人ひとりの子どもをじっくりと見取ることができ、進んでいない子どもには適切なアドバイスをしたり、調べる方向性をさらに示してあげたりすることができるでしょう。また、調べ学習を見取りながら、次の共有・まとめをする時間の指名計画を考えることもできます。調べた内容を見取りながら、「この子の意見とこの子の意見を組み合わせたら、面白い考えが生まれそうだな」「学習問題の答えにたどり着きそうだな」ということを見つけることもあるでしょう。
5年生の社会科は、資料や統計を読み取ることが中心の学習です。その学習が教師の解説で終わりにならないように、じっくりと調べる調べ学習の時間を取って、先生も子どもも大事に学ぶような社会科の学習を目指していってほしいと思っています。
最後になりますが、今回の授業内容を基に、生成AIを活用してウェブアプリを作成しています。こちらのウェブアプリとプロンプト文はDLいただけますので是非ご利用ください。
ウェブアプリはこちらから動きを確認いただけます。
実践例などは、Voicyやnoteの発信でも説明していますので、よろしければ参考になさってみてください。
先生のプロフィール
柳 圭一 先生
小学校教諭。ミライシードDXエデュケーターをはじめ、Microsoft Elevete Educator Fellow、Teacher Canvassadorなど各種認定資格を所持。Voicyパーソナリティ(しゃかラジ~社会をつくる! 子どもを育てる社会科学習~https://r.voicy.jp/0dVBW1kM8Kg)、note(社会をつくる!社会科https://note.com/chike2/m/m9b72fec2a397)で毎日発信中。
単著「子ども集団を束ねる鉄板スキル10」(学芸みらい社)