導入事例
AARサイクルで、子どもが自分の学びを
信じられるようになるまで
- 取材
- 富山県射水市立片口小学校 | 福田 慎一郎先生
- 使用製品
- オクリンクプラス
学力だけでなく、「自分で学べる」という実感をどう育てるか——多くの先生方が抱くこの問いに向き合ってきたのが、射水市立片口小学校の福田先生です。
AARサイクルを取り入れた授業づくりに加え、オクリンクプラスとカルテを組み合わせ、授業と家庭学習を一つのサイクルでつなぐ実践を展開。その取り組みは、子どもたちの学び方そのものを大きく変えていきました。
本記事では、福田先生の授業実践と、そこに込められた思いを紹介します。
導入成果
「主体的に学んでいるはずなのに」──違和感から始まった挑戦
――この度「ミライシードAWARD」をご受賞された感想をお聞かせください。
この度は賞をいただき、ありがとうございます。受賞の知らせで最もうれしかったのは、子どもたちとともにつくってきた学びのプロセスそのものを評価していただけたことです。
今回の実践は、特別なことというより、「子どもがどう学んでいるのか」を日々丁寧に見続けてきた積み重ねだと感じています。
特に、オクリンクプラスへの進化やカルテのリニューアルをきっかけに、学びの定着がより実感できるようになりました。そうした取り組みを認めていただけたことを、とてもありがたく思っています。
――お取り組みのきっかけについて教えてください。
子どもたちはとてもまじめで、授業にも一生懸命取り組む素敵な子どもたちです。ただ指導を続ける中で、「本当に自分で学べているのだろうか」という問いが、ずっと心にありました。
PISA2022では、日本の子どもは高い学力を示す一方で、「自律的に学ぶ自信」が低い傾向が示されています。実際、私の学校でも、授業中は頑張っていても、学習計画や振り返りの場面では“先生待ち”になる姿が多く見られました。
一生懸命取り組んでいる。でも、学び方そのものはまだ自分のものになっていないのではないか——その違和感が出発点でした。

――そこでAARサイクルに着目されたのですね。
はい。自己調整学習やOECDのラーニング・コンパスに触れる中で、「見通す→実行する→振り返る」というAARサイクルが、自分の課題意識と重なりました。
当初は自由進度学習にも挑戦しましたが、「自由=放任」になってしまう危うさも感じていました。
その点、AARサイクルは、子どもが“自分で決める”一方で、学びの軸がぶれない。そのバランスに、しっくりきたんです。
――どのようにAARサイクルを組み込んでいらっしゃるかお聞かせください。
約4年前から、授業にAARサイクル(見通す・実行する・振り返る)を取り入れてきました。当初は前例も少なく手探りでしたが、学習計画表を活用する中で、子どもたちの学び方が少しずつ変わっていく手応えを感じるようになりました。
2024年度にオクリンクプラスが本格活用できるようになってからは、「みんなのボード」を使い、子ども同士が考えを共有しながら学ぶ形へと発展しました。現在は、協働的に学びながら、自分の考えや学び方を調整するスタイルが定着しています。
毎時間の振り返りでは、学習内容だけでなく、「どのように学び、次にどうつなげるか」を言葉にすることを大切にしています。
【AARサイクルの流れ】
1.見通す(Anticipation)
単元の始めに、子ども自身が目標と学習計画を立てる。「何を・どう学ぶか」を言語化。
2.実行する(Action)
計画をもとに、学習方法や進め方を自己選択。学習中はオクリンクプラスの「みんなのボード」を使い、友達と考えを共有しながら協働的に学びを進める。
3.振り返る(Reflection)
毎時間、自分の学び方を振り返り、次の計画に反映。「何を学んだか」だけでなく、「どんな学び方をしたか」「次はどうするか」を言葉にする。
家庭学習へと広げたAARサイクル
――AARサイクルが定着されてきた中で、次に見えてきた課題は何でしたか。
家庭学習との断絶です。授業では自分で学び方を考えられるようになってきたのに、家庭では「何をやればいいですか?」に戻ってしまう。学校の学び方を、どうやって家庭につなぐか。それが次のテーマでした。
――そこで「カルテ」に着目されたのですね。
ちょうどそのタイミングでカルテがアップデートされて、「これだ」と思いました。
カルテで週の目標を立て、オクリンクプラスで作成した1週間計画表をもとに、「ドリルパーク」「テストパークの解き直し」「オクリンクプラスでの自学」などを子ども自身が選び、組み合わせて取り組む。さらに、オクリンクプラスのカードで毎日の学びを振り返る。まさに、授業でやっているAARサイクルを、そのまま家庭に持ち出せる形でした。

【カルテを使った家庭学習のサイクル】
1.見通す(Anticipation)
カルテで1週間の目標を設定したのち、オクリンクプラスのカード(1週間計画表)を使って具体的な行動計画を立てる。
2.実行する(Action)
ドリルパーク、テストパークの解き直し、オクリンクプラスでの自学など、自分で立てた計画をもとに学習を進める。
3.振り返る(Reflection):毎日の振り返り・1週間の振り返り
毎日の振り返りを次の学習に生かし、1週間の振り返りではクラスの頑張りを共有。教師はコメントで価値付けを行います。

AARサイクルを取り入れるなかで子どもに起きた確かな変化
――授業に加え、家庭学習でもAARサイクルを定着していったのですね。お取り組みを進める中で、どのような変化がありましたか?
一番大きな変化は、子どもたちが「勉強しなさい」と言われなくても、自分から学習に向かうようになったことです。自分で立てた計画に基づいて取り組むため、うまくいかないときも原因を考え、修正まで自分で判断する姿が見られるようになりました。
家庭学習の振り返りも、当初は20~30字程度でしたが、6年生の終わりには200~300字が当たり前になり、学び方や次の行動まで意識した記述が増えてきました。
さらに、学習計画を調整する姿の定着や、PISA型質問紙における「自力で学ぶ」「振り返る」項目の向上からも、AARサイクルが家庭学習にも生かされていることが確認できました。
――印象に残っているエピソードはありますか。
一番印象に残っているのは、理科の授業で子どもから言われた言葉です。班の様子を見に行ったときに、「先生、邪魔せんといて。俺たち、自分たちの計画でやってるから」と子どもから言われたんです。
その言葉から、子どもたちが自分たちの計画を信じて学びを進めていることを実感しました。教師の指示がなくても、「今、何をすべきか」「次にどうするか」を自分たちで判断している。
その姿に、AARサイクルが子どもたちの中にしっかり根付いてきた手応えを感じました。

――AARサイクルを回すうえで、ミライシードはどんな役割を果たしていますか。
一番の価値は、授業と家庭学習が一つの流れとしてつながっていることだと思います。
オクリンクプラスで考えを整理し、テストパークで理解を確かめ、間違えた部分はドリルパークでやり直す。そして、その一連の学びをカルテで振り返り、次につなげていく。こうした流れが、自然に回るようになりました。
学校での学びがそのまま家庭につながり、家庭での取り組みが次の授業に生かされる。ミライシードがあることで、AARサイクルを学校と家庭の両方で連続して回せる環境が整ったと感じています。
――最後に、ICT活用や学び方づくりに悩んでいる全国の先生方へ、メッセージをお願いします。
私自身も、最初からうまくいったわけではありません。AARサイクルも当初は授業が混乱することがあり、「これでよいのか」と悩み続けてきました。
それでも、子どもと一緒に試し、振り返りながら形を整えていく中で、「学び方は教えるものではなく、ともにつくるものだ」と実感するようになりました。
ICTは目的ではなく、学びを支える道具です。完璧を目指すのではなく、小さな一歩から子どもとともに学び方を育てていく。その積み重ねが、「自分で学べる」という実感につながっていくのだと思います。
※ページの内容は2026年3月時点の情報です。
使用製品
オクリンクプラス
個人思考と共同作業の自由な行き来により
子ども同士が対話し、主体的に学んでいく授業運営を支援。


