岩瀬流 先生が頑張りすぎない教室づくり

学級経営
岩瀬流 先生が頑張りすぎない教室づくり

執筆/ 練馬区公立小学校教諭 青木秀夫先生

学級開きで「すべてを決めない」理由

初任者の学級開きで最初にやることは?初任の私が効いたのは「指導」より「一緒に過ごす時間」 

学級開きで最優先したいのは、「信頼関係の土台づくり」でした。この記事では、初任時代にクラスが落ち着き始めたきっかけと、今でも続けている「子供と過ごす時間の作り方」を具体的に紹介します。

この記事のポイント

  • 学級開きで最優先したのは「信頼関係」
  • そのためにやったことは「とにかく一緒に過ごす」
  • 指導技術より“関係の土台”が学級を安定させる

初任校1年目、担任したのは3年生でした。仕事をするのが初めて、もちろん学級を担任するのも初めてでした。右も左も分からず、国語の「きつつきの商売」という物語をただ繰り返し音読させていた記憶があります。最初の授業参観のとき、子供たちが落ち着かず、立ち歩いてしまう子もいました。そんな状況だったので、保護者の方から「見ていて心配になりました。」という感想をいただきました。心配になってしまったのも当然のことだったと思います。最初の保護者会には副校長先生が一緒に入ってくれました。そんな状況で学級は落ち着かず、保護者の方も不安にさせてしまいました。悪戦苦闘の日々の中、どうすればいいのか悩んでいた時、副校長先生が「あなたは若いんだから子供たちとたくさん時間を過ごしなさい。子供たちと遊びなさい。」と声をかけてくれました。その日から子供たちとひたすら遊びました。休み時間、放課後、体を動かすことが好きだったので、子供たちと鬼ごっこをしたり、サッカーをしたり、野球をしたり、とにかくたくさん遊びました。あの時、学級をまとめる力も指導技術もなかった自分にできたことは子供たちとできるだけ多くの時間を過ごすことでした。休み時間に遊べるように、宿題の丸つけをいつやるかそんなことばかり考えていた気がします。すると子供たちとの関係に変化が表れました。子供たちが「休み時間に遊んでくれる先生」と思ってくれて、学習も頑張ろうという気持ちになってくれました。少しずつ学級経営がうまくいくようになり、子供たち、保護者の方からも信頼を得られるようになりました。自分自身も子供たちのことがより一層好きになり、先生という仕事が楽しくなりました。放課後に子供たちと遊んだ後、遅くまで教材研究をすることもありましたが、子供たちのことを思うと、全く苦ではありませんでした。そんな子供たちを3・4年生と持ち上がりで担任をさせてもらい、クラス替えをして5・6年生も担任をすることができました。初めて担任した子供たちを卒業式で呼名できる、こんなに嬉しいことはありません。今でもこの4年間が自分の教員としての原点であり、今の自分を支えてくれるものです。

卒業式から18年の時が経ちました。昨年の12月、その時に担任していた子が結婚式に招待してくれました。「教え子の結婚式に参加する。」それは一つの夢でした。教え子と言うのがおこがましいと感じるくらいその子はすてきな女性になっていました。時間が経っても慕ってくれて、連絡をくれることに幸せを感じました。先生になってよかったと心から思えた時間でした。エンドロールで流れてきたのはMr.Childrenの「GIFT」という曲でした。この曲は北京オリンピックのNHK放送テーマソングで、6年生の時、道徳の授業で北京オリンピックの主将であった柔道家の鈴木桂治選手の姿から生き方を考える授業を行いました。授業の最後にこの曲を聴いて、歌詞の意味を考えました。その子がその時のことを覚えてくれていて、この曲をエンドロールに使ってくれたそうです。心がふるえました。本当にすてきな再会の場でした。子供たちにすてきな個性があるように、先生たちにもすてきな個性があります。上手に絵を描くこと、楽器が演奏できること、自分にとってはそれが体を動かすことでした。先生たちも自分らしさを大切にしながら、子供たちと過ごす時間を大切にして、先生という仕事を楽しんでいきましょう。

学級開きで信頼関係をつくる“自己開示”の3つの実践

●自己開示の内容

4月、新しい教室、友達、先生。新しい環境で子供たちは緊張をしていたり、不安を抱えたりしています。少しでもそんな気持ちが和らぐように年度の始めにスライドを使いながら、自己紹介をするようにしています。自分の得意なこと、苦手なこと、家族のことなど、自己開示をして、伝えるようにしています。子供たちに自分のことを知ってもらい、安心して、新しい環境で生活してほしいと思っています。その際には、自分の思いも伝えます。

私は小学校3年生の時に出会った担任の先生の影響で「学校の先生になりたい。」という夢をもちました。その先生は初任者の先生で、若くて、バク転ができる先生でした。休み時間や放課後は一緒に遊んでくれて、学校に行くことが本当に楽しかったです。

自分が担任する子供たちにも学校生活を存分に楽しんでほしいと思っています。『「友達と仲良く生活する楽しさ」、「学習で”できた”」を実感する楽しさ」、「学校行事などでみんなで何かを成し遂げる楽しさ」など、様々な「楽しい」を味わって、学校生活を楽しもう』という話をします。また、指導することについても話をします。「人のことを傷つけたとき」、「うそをついたとき」、「何度も同じことを繰り返したとき」というように指導する基準を最初に伝えておくことで、安心して生活が送れるのではないかと思います。

●自己開示のスライドの型(7分)

  1. 名前、誕生日、出身、経歴(1分)
  2. 家族、得意なこと、苦手なこと(1分)
  3. このクラスで大切にしたいこと(2分)
  4. 指導する基準(1分)
  5. 今年度の予定(1分)
  6. 子供たちへのメッセージ(1分)

●学級通信第1号での自己開示

毎年、学級通信も発行しています。第1号の内容は自分の自己紹介です。

誕生日や家族構成、得意なことや苦手なことも載せるようにしています。保護者の方にも自分のことを知ってもらうとそれが保護者の方の安心感にもつながります。多くの学校で、年度始めに保護者会や個人面談を行うと思いますが、学級だよりで伝えておくことで、実際に会う前から自分のことを知ってもらえて、安心感・親近感につながると感じています。保護者会や個人面談で実際に会って話をすると「先生と同じ年です。」とか「主人もランニングをしています。」などと言ってもらえることもあって、自己開示をすることがよい関係につながることもあるなと感じます。

●QRコードで保護者の声を受け取る

学級通信はこちらが発行しているので、どうしても一方通行になってしまいます。保護者の方の感想も聞きたいと思い、最近は学級通信の下に感想を入力できるQRコードを載せています。

QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

そうすると学級通信を読んでくれた何名かの保護者が感想を入力してくれます。感想は励みになったり、保護者の方と次に話をするときの話題になったりするので、保護者とよい関係を築く上でもおすすめです。今年度、保護者の方からいただいた感想です。 ①クラス目標、「友情」いいですね。みんな思いやる子が多くて良かったです。小学校最後の学年でいっぱい思い出が作れたらいいなと思います。手紙を出してくれるのは遅かったですが、青木先生の子供たちに対する熱心さと愛情を感じられます。いつもありがとうございます。 ②お世話になっております。疾走に自主学習を取り上げていただきありがとうございます。先生からのノートへの一言と教室での掲載がいつも励みになっているようです。やる気を引き出して頂きありがとうございます。

学級目標は4月に作らない:1か月後に決める理由と話し合いの進め方

●手順整理

1.4月は様子を見る
2.1ヶ月後に理想のクラス像を話し合う
3.キーワードを束ねて学級目標に
4.月1回の学級集会で振り返る

●なぜ4月に「学級目標」を決めないのか

学級目標は1年間、学級の支えになるもので、大切なものです。大切なものなので、新年度が始まってすぐには作らないようにしています。子供たちがまだ新しい環境に慣れていないので、ある程度の期間、新しい学級で過ごして、学級の良さや課題を捉えてから話し合って決めるようにしています。/p>

●1か月後に話し合う前に、担任が見ておく観点 

新しい学級での生活が始まって、1か月ほど経った頃に学級の様子を見て、学級目標を決めるようにしています。担任として学級目標を作成することを念頭に置いて、子供たちの様子を見ておくと、よさや課題を把握することができ、学級目標をつくる時によいアドバイスができるようになると思います。 

 ●話し合いの進め方:子供の言葉を“キーワードに束ねるコツ” 

決め方は3月にどんなクラスになっていたいか、1年後の学級の姿を考え、目標を話し合い、その中で大切にしたい言葉を設定します。様々な表現の仕方があると思いますが、今年度は「友情」が大きなテーマで、友情を深めるために「学び合える」、「助け合える」、「信じ合える」、「思いやりがある」、「みんな平等」という言葉を周りに置いた学級目標を作成し、教室の後方に掲示しています。 

●決まった学級目標を“絵に描いた餅”にしない振り返りの方法 

学級目標が作って終わりになってしまい、「絵に描いた餅」にならないように、日常の学級活動の中で振り返る時間を設定するようにしています。今年度は月に1回学級集会を行っています。学級活動の中で話し合う時間を設け、内容ややり方を考えていきます。最初に学級目標を見て、その1ヶ月間の学級の様子を振り返り、良い点と課題を各班で話し合います。それを基に学級集会の提案を考え、各班の提案を受けて、内容を話し合っていきます。学級目標という大きな目標に向かって学級全体で進んでいけるようにしています。 

ミライシード「オクリンクプラス」を使って、学級目標に対する振り返りカードを子どもに配付。
クラス全体で共有し合い、話し合い活動にいかしている。

学級開きで差がつく!当番活動と係活動を分けて考える理由

●当番活動 

当番活動は「クラスのためにやらなければならないもの」、掃除当番や給食当番もこれに当てはまります。当番活動は一人一役当番にしています。毎年、クラスの人数分の当番活動を作り、ビンゴを使ってどの当番を担当するか決めています。1学期は友達の名前や数字のビンゴ、2学期は夏休みの体験ビンゴ、3学期は冬休みの体験ビンゴをします。体験ビンゴをして、当番を決め、ビンゴカードを回収すると夏・冬休みに子供たちが体験したことが分かるので、おすすめです。

当番活動のチェックはリバーシブルのマグネットを使っています。マグネットに名前を書き、終わったらそれをひっくり返すことで一目で終わっている子が分かるので、便利です。 

●係活動

 係活動は、当番活動とは違って、「クラスを楽しくしたり、豊かにしたりする活動」として行っています。係活動は“会社制”にして、目的→活動→報告→評価の流れで回していきます。はじめに子供たちが「会社登録申請書」を出します。どんな内容で、どんな目的で行いたいのかを考えていきます。その中から自分がやりたいものを決めていきます。特に人数制限は設けていませんが、人数が多すぎると活動をしない子がでてしまうので、6人以上人が集まった場合は同じ係でも2つに分けるようにしています。

ポスターを作り、そのポスターに応じて、ポイントシールを渡します。そのポイントがスタート時のポイントになります。毎週月曜日に前の週の活動報告をしてもらいます。その活動によってポイントを渡していきます。それと同時に税金として1ポイント回収します。そうすると活動をしないとポイントがなくなってしまうので、子供たちは活動に取り組みます。ポイントが全てなくなってしまうと先生の手伝いをしてもらうと伝えています。

また、各学期の終わりに、たくさんポイントが集まった係を「優秀係」として賞状を渡しています。なかなか取り組めない係、進んで取り組む係、それぞれありますが、少しアプローチをすることで、主体的な係の取り組みを促しています。 

インタビューした先生

青木秀夫先生
練馬区公立小学校 教諭

青木 秀夫先生

いよいよ新年度が始まります。新しい出会いに子供たちも先生たちもドキドキしますね。すてきな学級開きができるように、子供たちとワクワクするような出会いの場がつくれるように、何かのヒントになったら嬉しいです。

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