今日の「できた!」を明日に「繋ぐ」小学校の水泳指導〜安全管理・泳法指導・着衣泳の実践〜

〜安全管理・泳法指導・着衣泳の実践〜

授業づくり
今日の「できた!」を明日に「繋ぐ」小学校の水泳指導〜安全管理・泳法指導・着衣泳の実践〜

執筆/広島市立公立小学校教諭 宇和佑輝也先生

今日の「学び」を明日に「繋ぐ」

いよいよ子どもたちが楽しみにしている水泳の季節がやってきますね。水泳は命に関わるリスクもあるため、「絶対に事故を起こしてはいけない」と、私たち教員はどうしても肩に力が入りがちです。毎日の多忙な中で安全面に気を配り、さらに泳力も伸ばすとなると、プレッシャーを感じて当然ですよね。そんな全国の先生方の心を少しでも軽くしたい。私が水泳指導において大切にしているキーワードがあります。それは「繋ぐ」です。 先生同士の連携を繋ぐこと。子どもたち同士の関わりを繋ぐこと。今日の「できた!」という喜びを明日の意欲へ繋ぐこと。そして何より、かけがえのない「命」を未来へ繋ぐこと。本記事では、「繋ぐ」をテーマに、先生が一人で抱え込まず、子ども主体で動く水泳指導の仕組みづくりについてお伝えします。「今年の水泳は子どもたちと楽しく乗りきれそう!」と思っていただけるよう、明日から現場で実践できる「安全面」「泳法指導」「着衣泳などの命を守る指導」のアイデアをお届けします。

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水泳授業が始まるよ

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【指導手順1】顔つけ・頭つけ・浮く

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【指導手順2】ノーブレクロール・クロール

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なぜ小学校の「水泳指導」は毎年悩むのか? 安全管理との両立

・「絶対に事故を起こせない」プレッシャーと、先生一人で抱え込む構造的な限界

水泳指導で最優先すべきは「安全」です。プールサイドでの注意喚起に加え、WBGT(暑さ指数)や水温を測定し「31度を超えたら中止する」などの基準を徹底して、安全な判断を明日へ繋ぐことが必要です。
しかし、先生一人が全体を見張りながら個別指導も行うのは構造的に限界があります。だからこそ、他学年や支援員、地域の方々にも協力していただき、監視と指導の目を「繋ぐ」チーム体制を作ることが大切です。

・「なぜこのルールが必要?」プール開き前に子どもたちと話し合う最初の一歩

先生一人で抱え込む状況を変える第一歩は、「先生がルールで縛り、見張る」スタイルを手放すことです。プール開き前の教室で、「なぜルールがあるのか」を子どもたち自身に問いかけ、対話を繋いでみましょう。
本校では、水泳指導が始まる前に、全校放送で全児童と確認する時間を取っています。スライド画像を使いながら、「どんな力を身につけてほしいか」「命を守るためのルールは何か」を伝えます。子どもたちが主体的にルールの意味を理解すれば、監視の目は「みんなで安全を守る基準」へと変わり、結果的に先生の見張る負担軽減へと繋がります。

※全校指導で使える資料は本記事からダウンロードできます

【小学校泳法指導】「スモールステップ」と「バディシステム」で成長を「繋ぐ」

・泳力差が大きく、一人ひとりに合わせた指導が届きにくい現実

水泳の授業では同じクラス内でも泳力差が大きく、一人ひとりに合った指導を届けるのが困難です。スモールステップで「今日は浮けただけで大成功!」と、その子なりの成長の軌跡を認めて繋いでいくことが重要ですが、先生一人の目と手には限界があります。

・バディやグループ学習で「教え合い」を引き出す関わり方

そこで、子ども同士の関わりを繋ぐ「バディシステム」を取りましょう。入水前後に「バディ!」と確認し合う習慣は、お互いの体調管理や協働の精神を育みます。

・【学年別】低・中・高学年の水泳指導のPOINTと具体例

低学年:水との優しい出会いを繋ぐ
低学年の目標は「水に親しむ」こと。無理やり顔をつけさせるのは逆効果です。「今日は浮けただけで大成功!」と、小さな進歩を見逃さずに思い切りほめて、水泳への「楽しい」気持ちを繋ぎましょう。

① 「水中じゃんけん・にらめっこ」で顔つけの恐怖心をなくす
水に顔をつけるのが苦手な子には、ペアで水中に潜ってじゃんけんやにらめっこをする遊びを取り入れます。遊びに夢中になるうちに、自然と水中で目を開けたり、息を止めたりする感覚が身につきます。

② 「動物なりきりごっこ」で水の抵抗や浮力を体感する
ワニのように手をついてはって進んだり、カエルのように水中でジャンプしたりして遊びます。水の抵抗に負けずに走ったり、ぴょんと跳ねたりすることで、無理なく水中の身体操作を学びます。

③ 「くらげ浮き・だるま浮き」でリラックスして浮く感覚を養う
全身の力を抜き、水面にぷかっと浮かぶ心地よさを味わわせます。息を吸い込んで丸まる「だるま浮き」から、手足をだらんと下げる「くらげ浮き」へと展開し、水に身をゆだねる安心感を身につけます。

中学年:「けのび」と教え合いで学びを繋ぐ
中学年では、体の使い方を学びます。特に水の抵抗を減らす「けのび」が重要になります。

① 「イルカジャンプ(連続ボビング)」で呼吸のリズムをつかむ
水中で鼻から息を「んー」と吐き、水上に顔を出した瞬間に「パッ」と息を吸う動作を連続で行います。このリズミカルな呼吸法が、のちのクロールや平泳ぎの息継ぎの土台となります。

② バディと協力する「引っ張りけのび」で姿勢を確認する
「頭の先から足の先まで、一本の矢になろう」と声をかけます。バディにビート板や手を引っ張ってもらいながら水面を進むことで、体に力が入っていないか、足が沈んでいないかを子ども同士で確認し合い、まっすぐな姿勢の感覚をつかみます。

③ ビート板を使った「ばた足・かえる足」のドリル
壁や補助具(ビート板)につかまり、ももの付け根から動かすしなやかなばた足や、足の裏でしっかり水を押し返す足の練習を行います。バディとお互いの足の動きを見合い、「足首が柔らかく動いていたよ」などとアドバイスをします。

高学年:体の連動を繋ぐ、クロール&平泳ぎ
高学年では、手と足の動きに呼吸を合わせ、続けて長く泳ぐことを目指します。

① 「腕枕のイメージ」でクロールの息継ぎを克服する
息継ぎで顔を上げすぎて沈んでしまう子には、「伸ばしている腕を枕にするイメージで!」という言葉が効果的です。壁につかまっての息継ぎ練習から始め、横を向いてリズムよく呼吸する動作を定着させます。また、水中では鼻から「んー」と息を吐ききり、横を向いて「パッ」と吸うリズムを大切にさせましょう。

② バディの「足首サポート」で平泳ぎのあおり足を直す
平泳ぎが進まない原因の多くは「あおり足(足首が伸びている状態)」です。足首を直角に曲げたまま蹴る感覚を体で覚えるために、先生やバディが足首を軽く支えてあげる補助が有効です。手と足を同時に動かさず、「1かいて、2けって、3のぉ〜びる」のリズムを声に出して、体の動きをスムーズに繋いでみましょう。

③ 自分に合った課題を選ぶ「自由選択コース」の設定
一律の練習ではなく、「息継ぎ特訓コース」「バディとフォーム確認コース」「25m完泳コース」など、自分の力に応じた練習の場を設定します。自分が挑戦したい課題を自由に選択して取り組むことで、子どもたちの主体性と意欲が飛躍的に高まります。

・無理のない時間配分とスケジュール術

全員が無理なく取り組めるよう、水深の浅い安心できる場所を確保する環境を整えます。また、30分おきの水分補給や日陰での休憩をルール化することで、体調を崩さず次の時間へ繋ぐ見通しを持たせることが肝心です。

【実践事例】小学校水泳指導のやり方を見直して起きた、クラスを繋ぐポジティブな変化

・子ども同士で認め合い、安全を守る姿

指導を「子ども主体」へシフトしたことで、授業風景は大きく変わりました。「腕を枕にするイメージ」という言葉を子ども同士が使い合い、「〇〇さん、息継ぎ上手になったね!」と自然に教え合う姿が見られます。バディでの安全確認も、やらされる作業ではなく「お互いの命を預かる絆」へと変化し、子どもたちの目線が「もう一つの監視の目」として安全を繋ぐ機能を生み出しました。

・先生の「見張る負担」が軽くなり指導に専念できる実感

プールサイドでの先生の様子も一変します。子どもたちが自らルールを守るようになったことで「見張る負担」が劇的に軽くなりました。その分、一人ひとりへ優しく寄り添って個別の補助をすることができ、指導に専念できる時間が増えました。授業の最後には「今日は〇〇ができるようになった!」と振り返り、喜びの共有を次の授業のワクワク感へと繋ぐことができるようになったのです。

【命を守る安全教育】もしもの時に未来へ命を「繋ぐ」着衣泳

水難事故の多くは、衣服を着たまま不意に水に落ちてしまうことで発生します。水泳指導の集大成として、「着衣泳」の授業を取り入れてみてください。

・目的は「泳ぐ」のではなく、救助へ「浮いて待つ(繋ぐ)」こと

着衣泳の目的は上手に泳ぐことではありません。パニックを抑え、救助が来るまで呼吸を確保して「浮いて待つ」ことです。まずは長袖・長ズボンで水中を歩かせ、「服が重い! 動きにくい!」という水の中で動けないほどの重さを体感させます。「無理に泳ごうとすればすぐに体力がなくなる」という現実を知ることが、冷静な判断へ繋がります。

・身近なアイテムを「命綱」に繋ぐ

自力で浮き続けるのには限界があるため、空のペットボトル(2リットルのフタ付き)などを浮き輪代わりに使う練習が効果的です。「あごの下に抱える」「お腹に抱える」「服の中に直接入れてしまう」など、体のどこに置けば一番浮きやすいか、子どもたち自身に試行錯誤させてみましょう。「誰が一番長く浮けるかな?」と競わせると、真剣に取り組んでくれます。

・「絶対に助けに飛び込まない」という命の約束

着衣泳の授業で最も強く伝えなければならないのが、「友達が溺れても、絶対に泳いで助けに行かない」というルールです。パニックになった人にしがみつかれると、助けに行った人も一緒に溺れてしまいます。大きな声で大人を呼び、岸からペットボトルやランドセルなど「浮く物を投げる」ことに徹する。これが、お互いの命を未来へ繋ぐための絶対の約束です。

【水泳指導がもたらす効果】すべての子どもが輝くために、明日へ「繋ぐ」

・スモールステップでその子なりの成長を繋ぐ

水が極端に怖い子や泳ぐのが苦手な子には、一人ひとりに合わせた目標を設定しましょう。「今日は水の中で目を開けられたね!」「壁を持って浮けたね!」と、その子自身の成長の軌跡を認めて繋いでいくことが大切です。プールの中でも水深の浅い、安心できる場所を確保してあげることも配慮の一つです。

・授業の終わりの「振り返り」を次の時間へ繋ぐ

授業の最後には、今日できるようになった泳ぎ方で確かめを行い、使った筋肉をしっかり伸ばす整理運動をしましょう。そして、「今日は〇〇ができるようになった!」「次はあそこまで泳いでみたい!」と子どもたち同士で振り返る時間を取ります。この「できた!」という喜びの共有が、次の授業へのワクワク感へと繋がっていきます。
私たち教員が行う水泳指導は、子どもたちに一生モノの「運動の楽しさ」と「命を守るスキル」をプレゼントできる、尊い仕事です。一人で抱え込まず、先生同士、子ども同士で手を繋ぎ、笑顔あふれる水泳授業をつくっていきましょう。明日からの授業に一つでも参考になることがあれば幸いです!

イラスト出典:

  • 書 名 「わたしたちの体育」1~6年(発行年度 2023年度)
  • 編著者名 広島県小学校教育研究会体育科部会
    中・四国小学校体育連盟
  • 発行者名 株式会社文教社
  • 使用箇所および使用範囲 以下ページに掲載のイラストの一部
    「わたしたちの体育」 1年生 p16.17.18
    「わたしたちの体育」 2年生 p18,19
    「わたしたちの体育」 3年生 p24,25
    「わたしたちの体育」 5年生 p22,24,25
    「わたしたちの体育」 6年生 p28

先生のプロフィール

宇和 佑輝也先生
広島市立公立小学校教諭 教諭

宇和 佑輝也先生

広島市公立小学校教諭。中・四国小学校体育連盟 研修・調査委員。広島県小学校体育連盟事務局員。広島市小学校教科研究会体育科部会員。
体育科教育およびICTを活用した授業づくりに力を入れており、各種教育研究会等での実践発表を通して、子どもが主体となる学びのあり方を探究し続けている。また、広島市小学校体育連盟水泳教室においては指導者として長く携わり、現場の視点を生かした安全で楽しい水泳指導の普及に尽力している。現場の先生方や子どもたち同士を「繋ぐ」温かい授業づくりを大切にしている。

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