小学校国語「くじらぐも」の授業導入アイデア|子どもの心をつかむ4つの工夫
授業づくり
執筆/兵庫県雲雀丘学園小学校教諭 樋口綾香先生
「くじらぐも」は、1年生の教科書に掲載するために書き下ろされた作品です。はじめて教科書に掲載されたのは、1971年。今から55年も前になります。長い間、子どもたちだけでなく教員にも愛されてきたこの作品に多くの魅力があることは、言うまでもありません。
教科書を一読してみてください。みなさんは、どんなことを感じられますか。わたしは、「ああ、雲っていいなあ」「雲に乗れるなら、私はどこへ行きたいだろう」という想像が膨らみました。大人でもこのように感じるのですから、きっと子どもたちも、くじらぐもに会いたくなるでしょう。そして、「もしかしたら自分たちのもとへもあのくじらぐもが来てくれるんじゃないか」と感じる子どももいるかもしれません。
本作品の魅力が、最初の範読の段階で失われることなく、単元全体で読み味わうためにはどのようなアプローチが考えられるでしょうか。
今回は、「くじらぐも」の授業の「導入」で子どもたちを引きつける技を紹介します。
この記事でわかること
- 「くじらぐも」の授業導入で子どもの興味を引きつける方法
- 空を見上げる活動から物語の世界に入る声かけ
- 範読で意識したい5つのポイント
- 初発の感想で「好き」「ふしぎ」を引き出す書かせ方
- 想像を広げる活動を音読や書く活動につなげる工夫
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樋口綾香先生‗研究会用指導案『くじらぐも』〜くもの生き物、何に乗りたい?〜
まずは空を見上げることから始めよう
「くじらぐも」は、子どもたちが「もしかしたら自分たちのところにも来るかもしれない」と空を見上げたくなるような、日常の延長線上にあるファンタジー作品です。
授業の冒頭では、「くもがきれいだね」と空を見上げるような声かけから始め、子どもたちの生活や経験と物語の世界を自然に繋ぐアプローチが有効です。また、題名を提示した際に「『くじらぐも』ってなんだと思う?」と問いかけ、本文に出てくる「くものくじら(現実に近い表現)」との微妙な違いに目を向けさせることで、子どもたちの関心を高めることができます。
範読は"物語の世界へ誘う時間"
教師の範読は、単に文字を音声化するのではなく、内容や情景、登場人物の気持ちを深く理解し、声にのせて表現することが重要です。音読する際は、「心情」「位置関係」「読む速さ」「声の大きさ」「集団性」の5つのポイントを意識して工夫します。
●心情(気持ち)
登場人物がどんな気持ちでいるのかを想像し、それを声に込めるポイントです。
●位置関係
物語の世界の空間や距離感を声で表現するポイントです。この物語では、「空にいるくじら」と「運動場にいる子どもたちや先生」という、離れた場所にいる者同士が呼びかけ合います。たとえば、空からの「ここへおいでよう」という声と、下からの「おうい」という呼びかけなど、それぞれの場所から相手に届けるような距離感を意識することが重要です。
●読む速さ
場面の様子や行動に合わせて、読むスピードを工夫するポイントです。くじらぐもがゆっくりと空を進む場面や、子どもたちが元気に体操をする場面など、それぞれの情景を声のスピードで表現することで、物語の世界がより立体的に伝わります。
●声の大きさ
場面の盛り上がりや、伝えたい相手に合わせて声のボリュームを変えるポイントです。「もっとたかく、もっとたかく」というくじらぐもの応援によって、どんどん空へ近づいていく場面では、応援が力になっていることに気づかせたいところです。範読でも意識してみましょう。
●集団性
みんなで声を合わせることのパワーや楽しさを生かすポイントです。「天までとどけ、一、二、三」という掛け声は、子どもたちと先生が「みんな手をつないで、まるいわになって」心を一つにする場面です。クラス全員で息を合わせて音読することで、物語の子どもたちと同じような一体感を味わうことができます。
教師自身が「思わず読みたくなる音読」をすることで、物語の魅力が子どもたちに伝わり、子どもたちの「ここが好き!」という思いをどんどん引き出すことができます。師自身が「思わず読みたくなる音読」をすることで、物語の魅力が子どもたちに伝わり、子どもたちの「ここが好き!」という思いをどんどん引き出すことができます。


「子どもたちが音読の工夫を考える授業につなぐ」
初発の感想で「好き」「ふしぎ」を引き出す
読み終わった後に、「どこがすき?なぜすき?」と理由とともに感想を書かせることで、物語のよさへの気づきを引き出します。
1年生が書きやすいように、「わたしは、〜のところがふしぎだ(いいな)とおもいました。なぜなら、〜からです。」という具体的な型を黒板で示すのがコツです。
板書・ワークシートで使える感想の型
わたしは、___のところが、ふしぎだ/いいな とおもいました。
なぜなら、___からです。
「いいな」や「ふしぎ」という視点を持たせることで、「ほんとうにいるの?」「現実では落ちてしまうから不思議」といった、空想と現実の間を行き来する子どもらしい豊かな感想が生まれ、それをクラス全体で読み味わうことができます。


自分ならどんな雲にのって、どんなことをしてみたい?
想像を広げ、「みんなだったら、どんな雲に乗って、どこへ行きたい?」と問いかけ、自分だけの物語を創造させる活動へと繋げます。
「パンダぐも」や「アルパカぐも」など好きな生き物の雲を想像し、どこへ行き、どんな景色を見て何をしたのか、ペアやグループで対話させながら、一人ひとりの想像の違いを楽しむことが大切です。
さらに、生成AIを活用して子どもたちが想像したオリジナルの雲の画像を作成し、それをもとに「空想日記」を書かせると、表現の幅が広がり、子どもたちが「自分らしい言葉」で書く楽しさを味わうことができます。


おわりに 導入で、子どもの「読み」が変わる!
中川李枝子作品の最大の魅力は、登場人物である子どもたちが生き生きと描かれることで、読者も空想と現実を自由に行き来するような物語世界にあるのではないでしょうか。ファンタジー作品を読むとき、読者は、物語の世界と現実の世界をはっきりと分けてしまうのが自然です。しかし、1年生のために書き下ろされた本作品は、「運動場で体操をする」という日常から、「くじらのような雲とお話しする」、「みんなで雲にのって冒険へいく」というワクワクした出来事へと、子どもたちの感性を次々と刺激しながら、物語世界を見事に泳ぎ切ります。だからこそ、読み終わったときに、いつの間にか「くじらぐもに会いたいな」「会えたら何をしたいかな」と空を見上げてしまう。お話を読むことで現実の世界がもっと色鮮やかになるような読後感に包まれるのでしょう。
導入で子どもたちが「くじらぐもに会いたい」「乗ってみたい」と思える時間をつくることが、その後の音読や感想交流、物語の読み深めにつながります。まずは子どもたちと一緒に空を見上げることから始め、物語の世界へ自然に入り込める授業を構想してみてください。
インタビューした先生
樋口 綾香先生