「研究授業」が不安な先生へ
算数「面積」で成功する教材研究
~授業づくりのコツ~
授業づくり
執筆/鳥取県米子市公立小学校教諭 友定 章子先生
「研究授業」で授業をすることになってしまった。(>_<)😢
なぜ、私が授業をしなければならないのか、逃げだしたいほど不安でいっぱいですよね。どこから手をつけたらいいのか、どんな授業をすればいいのか、「誰か助けて―!」と叫びたくなりますね。教師の「研究授業」を楽しむ姿が、きっと子どもたちの考えることを楽しむことにつながると思います。「研究授業」を任されて困っている先生方へヒントになれば幸いです。

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単元計画
「研究授業」ってなんのためにしなければならないの?
そもそも、「研究授業」って何?なんのためにやらなければならないの?こんなに忙しい毎日を過ごしているというのに、どうして私が“まな板の上の鯉”にならなければならないの?人の授業を観るならまだしも、どうして私が授業をして評価されるの?いろいろな疑問や不安が聞えてきそうです。その一つひとつごもっともです。
『授業研究会』は、1900年代の師範学校の頃から、教師の成長に大きな役割を担っているとされ、今でも規模や目的に違いはあっても学校種にかかわらず日本中で行われています。その『授業研究会』は、次のようなサイクルであると示され、授業をする授業者とその授業を参観する観察者という立場があります。

授業研究の過程と構成要素(藤井,2014)
観察者なら事前にもらった指導案を持って授業を観察する。そのことによって、授業者の発問や支援、板書などの授業テクニックを学んだり、自分のクラスと比較しながら子どもの実態や反応の仕方を学んだり、指導案や授業を通して授業者の教材分析の仕方を学んだりすることができます。
授業者の立場で『授業研究会』に参加する場合は、自分、あるいは周りの先生と一緒に教材研究をして、どの単元をどんな単元計画で、どんな問題、どんな発問、どんな支援を通して子どもたちに数学的見方・考え方を理解させるか、授業構成を考えて指導案を作成して実施する立場です。授業者は、緊張するし、準備から考えれば本当に大変です。それでも私は授業者という立場だらからこそ学ぶことが多いと思います。周りの先生を頼りながらチャレンジしてみてください。
「研究授業」何から始めればいいの?
①実施日を決める
研究会は、外部の指導助言者の招へいなど、既におよその日程が決まっていることが多いです。もちろん実施する学年や学級は、担任が決まっているので自ずと決まってしまいます。自分で決められるのは、(多少の単元の入れ替えは可能ですが)単元と授業の流れ、何時間目に公開するかということだけです。
②実施する単元と単元計画を決める
公開する授業では、子どもたちが活発に発言したり多様な思考をしたりする単元を公開したいです。とすると、計算問題の練習をしたりテストに黙々と取り組んでいる時間を公開するのは不適切です。単元の第1時の新しい単元との出合いや単元の中で子どもたちがあれこれ考えることができる本時はどの時間なのか考えてみましょう。
➂単元の教材研究をする
〈教材研究のための資料を集める〉
〇教科書の指導書や研究編をもとに、この単元で子どもたちに理解させたい数学的見方・考え方とは何かを考えてみましょう。
〇文部科学省の教科ごとの学習指導要領をもとに、この単元でねらう数学的見方・考え方やこれまでに学習してきた系統性を分析してみましょう。
〇周りの先生の実践経験、過去の指導案やインターネットにある実践事例を参考にしてみましょう。周りの先生の実践経験なら直接話を聞くことができます。成功例だけでなく失敗例や注意する点なども教えてもらえますし、質問することもできます。また、インターネットに“第○学年、単元名、実践例」というキーワードを入力すれば、たくさんの指導事例がヒットするとは思います。しかし、その一つ一つを精査したり担当している目の前の子どもたちにどの事例が一番合うのか検討したりするのは至難です。
教材研究の本質は、この単元(本時の学習)を通して子どもたちにどんな数学的見方・考え方を理解させるかです。問題の解き方や公式としてのHow toや計算の方法であるアルゴリズムを覚えさせることではありません。どのように考えれば解決することができるのか、その発想の起源は何か、公式はどのように作り出されたのか、どうしてその方法で解けるのかという、Why(なぜそのように考えればよいか)を考察して数学的見方・考え方を理解させることだと思います。
〈単元計画を立て、本時を決める〉
教材研究を通して教科書の単元計画を再考し、1時間ごとの学習内容と子どもたちに理解させたい数学的見方・考え方を考慮し、単元計画をつくることで、公開授業となる本時が見えてくるはずです。それを示したものが指導案です。ここで注意です。いきなりパソコンを開き枠をつくって書こうとするのではなく、子どもと同じように問題や解き方、本時のめあてやまとめをノートに書いてみることが大事です。


「教材研究」ってどうすればいいの? ~4年生「面積」を通して~
①既習事項の系統性を明確にした単元計画
〈「面積」の系統性は?〉
第1学年
「おおきさくらべ」:長さや広さ、かさを比較する直接比較、間接比較、任意単位による比較、大きさの数値化
「かたちづくり」:図形の構成要素(点、線、面)色板を使った図形の合成・分解、複合図形の構成と移動
第2学年
「長さ」「かさ」:任意単位による数値化、普遍単位、単位の関係
「かけ算」:アレイ図による九九の構成(縦と横の数がアレイ図の数、乗数と被乗数の関係(交換法則))
第3学年
「長さ」「重さ」:普遍単位による数値化、単位の関係、測定対象と単位の選択
「三角形」「角」:図形の構成要素と定義、角の大きさの比較、しきつめ
「面積」の学習だから図形に関するものだけが既習事項としての系統性ではなく、「面積」の構成要素や普遍単位の必要性、単位の関係性、測定対象に対する適切な単位の選択など、たくさんの数学的活動の経験が数学的見方・考え方を思考する根底になると考えます。
〈「面積」の単元計画〉 私自身の実践事例
第4学年の「面積」を指導する際、目の前の子どもたちが変われば単元計画も少しずつ違います。この単元計画がどの学級にも当てはまるというものではありませんが、参考にしてみてください。
「面積」の単元計画の一例(当記事から全体をダウンロード可能です)

②子どもたちの多様な思考を引き出す発問
複雑な面積の求積問題の時間を本時とした実践を振り返ります。L字型の図形の面積をどう考えるか問いかけます。ただ、この問題は、25分程度で解決したため、5時で考えさせようと思った図形を補完して考えた児童もいました。
〈子どもたちの思考を引き出す発問「どうしてそう考えたの?」〉

〈子どもたちの思考は子どもたちの言葉で〉
4つの思考過程を共有する時、「ここ・・」とか「この図形・・」という言葉では、あいまいだと考えたため、この教室のこの子どもたちだけの表現の言葉を考えさせました。

〈子どもたちの思考を整理する板書〉
上記の授業の板書です。板書のレイアウトは予め想定しています。また、数学的見方・考え方について子どもたち自身が自分の言葉でまとめるためのキーワードを明確に示しておきます。

➂学んだ数学的見方・考え方を実生活に活かす
〈系統性と単位の関係〉
第2学年の「長さ」や「かさ」の学習、第3学年の「重さ」の学習では、計測対象によって、的確な普遍単位を選択し、単位の関係を考える経験をしています。その経験から、ノートや机の面積なら1㎠のいくつ分(縦と横の長さを㎝で計測)で数値化することができますが、教室の大きさとなれば、㎠のいくつ分、では、数値が大きくなりすぎる。そのために計測対象が大きくなれば、長さの単位を変えて普遍単位を考える必要性が出てきます。ただ、「面積」は、測定値だけで普遍単位が決定されるのではなく、正方形の面積が単位となるため、長さと面積の関係は、長さが10倍になれば面積は100倍になるということが子どもたちにとっての困難性を高めます。
〈学びを実生活に活かす〉
第5学年の「体積」の学習には、「面積」の学習が基礎となります。また、「割合」の学習でも、人口密度にも「面積」の学習が基本となります。第6学年の学習「単位の関係」としてメートル法の整理において、長さと面積の関係が活かされます。さらに、これからの人生で部屋を借りたり家を建てたりするときに面積の知識は必要不可欠です。だからこそ、運動場の面積を比較したり、花壇の面積を考えたりする問題を作ることもできます。実際に面積を計測してみることも面白いと感じる経験になることでしょう。子どもたちが実感を持って考え理解する活動につなげることで量感を育てることになると考えます。
おわりに
この面積の授業、今までに何度もやりました。4年生を担任した時だけでなく、飛び込みで授業をしたこともありました。ただ、同じ授業構成を考えていても同じ授業は一つもありません。単元計画の2時と3時が45分ですんなり進んだり、複雑な図形の4時と5時が45分でできてしまうこともありました。目の前の子どもたちの状況によって、単元計画も変化します。学級によって「分解法」と名づけたり「たし算法」だったり「分けて考える方法」だったりと、その子どもたちの言葉はいろいろ。自分たちでしっかり考えたからこその名前です。一度も同じものがありません。それってとってもすてきだと思いませんか。私の予想をはるかに超えて一生懸命考える子どもたちからたくさんのことを学んでいるのは、私自身だと実感できます。それは、日常の授業でも味わうことができますが、研究授業になると、見られているという子どもたちの緊張感が日頃の子どもたち以上に思考を深めているように感じます。
研究授業をすることになったら、かなりプレッシャーですね。授業している私のことをみんなが評価するんだろうって怖くなりますよね。私は、ちょっと違います。考えることを楽しんでいる子どもたちを観てほしい。算数が好きになってきている子どもたちを自慢したい気持ちでいっぱいになります。すごいでしょ?って。だから、観られているのは先生たちだけでなく、子どもたちも一緒です。緊張は伝播します。ただ、緊張感は日頃の実力以上にたくさんの学びがあります。観られているからこそ、子どもも先生も大きく成長すること間違いなしです。
先生のプロフィール
友定 章子 先生
大学卒業後、鳥取県の公立学校で約35年間、教員として勤務。
管理職を経験後、退職。
現在は公立小学校の講師として勤務。
子供たちが生き生きと学習に取り組むためには、先生方の楽しさが伝わるといいなぁと感じている。何より学びの集団作りのために若い先生方に授業をする楽しさを感じてほしい。そのために私のつたない経験や実践(うまくいったことより失敗が多い)を伝えることで、今の先生方に少しでもヒントになればと思う。本当はユーチューブでもSNSでも情報発信できるといいのでしょうが、なかなか使いこなすこともできずにいる。私は算数の授業で学級づくりをしている。若い先生方に何とか伝えることができればと思っている。