「書くだけ」から脱却する漢字指導|語彙を育てる実践
~漢字指導がただ書かせるだけになってしまっている…そんな悩みを解決。効果的な漢字指導法を紹介します~
授業づくり
執筆/奈良教育大学名誉教授 棚橋 尚子先生
川崎市立公立小学校教諭 土居 正博先生
たつの市公立小学校校長 石堂 裕先生
漢字を何度も書かせているのに定着しない―
漢字ドリルは宿題にしてただ書かせるだけになってしまっている―
そんな悩みを抱える先生へ。本記事では「書くだけ」の練習を見直し、漢字の定着率を高める効果的な漢字指導法を、研究者の知見と現場の実践事例の両面からわかりやすく解説します。新学期から使える具体的な工夫や指導のコツも紹介します。
※本記事はベネッセが2026年2月6日に実施したウェビナーの内容をダイジェスト記事として編集したものとなっております。
本記事内でダウンロードできる資料はこちら!
漢字ドリル概要
【資料】棚橋先生ー言葉を広げる漢字指導ー
【資料】土居先生ー子どもたちが主体的に学ぶ漢字指導ー
【資料】石堂先生ーやらせる漢字から子どもが自分で学びだす漢字学習へー
漢字指導ウェビナー アーカイブ動画
第一部「言葉を広げる漢字指導~漢字指導は語彙指導~」
棚橋先生は、デジタル時代の到来や印刷字形と手書き字形の違いに触れながら、漢字教育を語彙指導として捉え直す必要性を説きます。評価に潜む落とし穴、 現場での配慮まで、具体的に語ってくださいました。こちらの記事ではダイジェストでお伝えします。
ウェビナー大反響!7分ダイジェスト
※詳しい講演内容や資料、全編アーカイブはフォームへの情報入力でダウンロード可能です。
漢字を定着させる指導の順番|読む→書く→使う
「そもそも漢字を習得するということはどのようなことでしょうか。本来、漢字の形、音、義と言われるように、字形、それから発音、意味の三要素を関連付けながら覚える必要があります。」漢字の習得は本来、次の三要素を関連づけて進めることが重要です。
• 形(字形)
• 音(読み)
• 義(意味)
現在の指導現場では「字形中心」になりがちですが、意味や読みと結びつけて学ばないと、書けるだけで終わってしまいます。漢字は「意味」「音」と結びついてこそ生きるのです。
漢字は語として使えることが大事
象徴的な調査結果も紹介されました。調査方法が少し異なりますが、二年生配当の漢字「海」を例にとると、出題の仕方で正答率が大きく変わります。
• 「海外」として出題:正答率 37.4%
•「海岸」として出題:正答率 70.1%
「漢字の字形を書けても、語句の形で書けなければ、その字形を書けるということの意味は非常に少ないわけですね。」
ここから導かれる結論は明快です。
「単漢字が書けるということは、漢字指導のゴールではないということになります。」
漢字は「語として使えること」が大事なのです。
では、語として使える漢字指導は、現場でどのように実現できるのでしょうか。
第二部「子どもたちが主体的に学ぶ漢字指導~明日から真似できる実践ヒントつき~」
土居先生は現場の試行錯誤から生まれた実践を述べられました。
キーワードは「読む・書く・使う」の段階性と「個別進度」。ドリルの使い方を見直すだけで、子どもたちの学習行動が変わる――そんな具体的なエピソードを豊富に語ってくださいました。こちらの記事ではダイジェストでお伝えします。
漢字を定着させる指導の順番|読む→書く→使う
「並行して、読める力と、書ける力と使える力のような感じで捉えるのではなく、段階性があるかなというふうに考えています。」
つまり、
① 見慣れる
② 読める
③ 大体の形を書ける
④ 正確に書ける
⑤ 使い方を知っている
⑥ 日記などで使える
この段階で捉えることで、「まだ②の段階だ」と冷静に子どもを見取ることができます。
一般的な漢字指導の問題点と土居先生の漢字指導改善
<一般的な漢字指導の問題点>
・定着していないこと
・画一的な指導に陥っていること
・一度教えたら終わり、になっていること
・運用力を育てることまで視野に入っていないこと
土居先生はこの4点をあげられ、指導の改善方法をお話しされました。(ここでは一部を紹介します!)
漢字ドリルは“まず音読”から始める
「漢字指導は基本的に読み書き分離の方がよいということがわかっています。」まず“読む”を徹底する。そのために行ったのが、ドリルの音読です。ドリル配付直後から約1か月、毎日読み続ける。「自ずと進出漢字に一日1回は必ず触れる、どんな子も触れるという機会を作れていました。」結果、読みを土台にすることで、漢字への自信と授業への参加意欲が高まりました。
漢字小テストの方式を変える|“用例加点方式”とは?
小テストをただ漢字を書くだけのテストではなく、用例を書けば加点する方式へ。テストの“出口“が変わることにより、子どもたちは辞書を買い、家族と語を集め、学校の掲示からも言葉を探しました。そして作文にも変化があらわれます。「いろんな漢字を使いたいという意識が生まれてきます。」結果、使える漢字にこだわる姿勢が育っていきました。
土居先生の投影資料でご覧いただけます!
第三部「“やらせる漢字”から子どもが自分で学び出す漢字学習へ!」
石堂先生は「自己調整学習」の枠組みを漢字指導に適用し、ICTを活用した学習ログと教師の外的強化を組み合わせた実践を紹介しました。子どもが自分の学習を設計し、振り返る力を育てることがねらいです。こちらの記事ではダイジェストでお伝えします。
自己調整学習を漢字指導にどう取り入れる?
「自己調整っていうのは自分の弱点に気づいて、その克服に向けて見通しを持つこと。」
子どもが
・どこでつまずいているかを知る
・どう取り組むか考える
・うまくいったか振り返る
この循環を回すことが鍵になります。さらに、実践で重視したのが“外的強化”です。「教員がチェックし、自己採点の状況を点検する外的強化というものを入れることが非常に効果があると判断しました。」このような教師の適切な介入が自己調整学習を支えます。
自分だけの参考書をつくろう
実践の核となったのは、学習の“やり切り”をなくす設計でした。取り組みは、まず「解答して、自己採点して、そこから外的強化が入って、その後気づきの整理と問題づくりという展開」で進みます。自己採点で終わらせず、誤りや気づきを次の学習につなげていく構造です。
「合言葉は『自分だけの参考書を作ろうよ』ですね。」
↓当日投影資料より:テストやほか教科のプリントにも付箋で気づきの整理をしています。
テストやプリントは提出して終わりではありません。「常にそれをどう生かすのか、書き切りで終わるのではなくて、テスト前には振り返ることができるようにしていこうという発想です。」
漢字だけを特別扱いするのではなく、学び方そのものを育てる視点も示されました。「漢字学習も算数もね、理科も社会も学び方っていうことであるのであれば同じっていう風に捉えていくのが非常に効果があるかなと思いました。」蓄積された誤りや気づきは“自分だけの参考書”となり、次の挑戦を支える土台へと変わっていきます。
パネルディスカッション
事前に申し込みいただいた先生方からの質問で、多かったものに答えていただきました!こちらの記事ではひとつめの質問についてお伝えします。
漢字は何回書けば覚える?専門家の答え
「6割とか7割の子にとっては、繰り返し書くということは、やはり有効かなという風に思っています。」(土居先生)
棚橋先生も、「やはり多くの子は繰り返し書かないと漢字を覚えることは少しと難しいと思います。」と語ります。さらに漢字習得の身体性について、「漢字圏の人だけが文字を想起するときに、指を動かしてその字を想起をするという行動をとります。それは身体的に漢字を習得しているということの証拠なのですね。」と具体例を挙げました。
しかし先生方は“ひたすら書けばよい”というわけではないことにも言及されました。
「何回書けとか、そういうことではなくて、自分の中でここまで書いたら覚えられたかな、というところまでで止めてもらって、構いません。」(棚橋先生)
「単純に繰り返す。機械的に書くという発想ではないということですね。」(石堂先生)
「ノートを、びっちり埋めてきなさいと指示すると、今度はもう手段の目的化になってしまいます。」(土居先生)
つまり、反復は必要。しかし「自分で必要回数を判断し、反復をする」設計があるかどうかが重要なのです。
今回のウェビナーでは、漢字指導は単なる字形指導ではなく、語彙指導であるという視点でお伝えいたしました。本記事ではそのエッセンスをダイジェストでお届けしましたが、実践の具体や先生方のやり取りには、まだまだ学びのヒントが詰まっています。続きが気になる方は、ぜひアーカイブ動画で全編をご覧ください。
漢字指導のやり方が楽しくわかる!漢字指導動画!
※ロングバージョンはこちら
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