【中学校】読書感想文が苦手な生徒にも!
夏休みの宿題を2学期の学びにつなげる実践
授業づくり
執筆/茨城町立明光中学校 教諭 福住 里絵先生
働き方改革や「宿題の精選」が求められるなか、「何を残し、何を減らすべきか」と悩みながら夏休みの課題を組み立てている先生は多いのではないでしょうか。本記事では、「全員同じ」でもなく「完全自由」でもなく、自分で選ぶ楽しさとやり遂げる達成感を両立させる課題のつくり方を、中学校での実践をもとにご紹介します。鍵になるのは、読書感想文のハードルを下げる1枚の「読書感想カード」です。
この記事でわかること
- 読書感想文が苦手な生徒への支援方法
- 「読書感想カード」を活用した夏休みの課題のつくり方
- 2学期のビブリオバトル・図書館展示へのつなげ方
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【第1案 書店との打ち合わせ用】R0第0学年が選んだおすすめ本展示 実施要項
【第2案】R0第0学年が選んだおすすめ本展示 実施要項
【保護者宛て】案内状保護者宛メール文
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『宿題の精選』に悩む中学校の夏休み—全員一律でも完全自由でもない、第三の選択
かつては、生徒に同じ課題を課すような一律型の夏休み課題が一般的でした。しかし近年は、いくつかの課題の中から自分で選ぶ、選択型の課題を取り入れる学校が増えています。生徒の自主性を尊重するという点では意義のある取り組みですが、「夏休みを学力向上につなげたい」と考えても、次のような難しさもあります。
- 取り組む内容や学習量の差が大きくなりやすい
- 「何を学べばよいのかわからない」「自分で学習内容を決められない」という生徒がいる
- 選択肢が増えるほど、一人ひとりへの助言が難しくなる
教師がすべての課題に精通して、個々の進捗や成果に応じた支援を行うことは、現実にはなかなか大変です。自主性を尊重することと、必要な支えを届けることの両立が課題となっています。つまり、自由度を高めたことで、かえって学びの機会を十分に活かせない生徒が生まれてしまう可能性もあります。
そこで本実践がめざすのは、「全員同じ」でも「完全自由」でもなく、自分で選ぶ楽しさとやり遂げる達成感の両方を大切にした課題です。夏休みの課題を「2学期の授業をワクワクさせるための仕込み」として捉え直すことで、生徒が取り組んだことが2学期の学びや交流につながり、「やってよかった」と感じられる——そんな課題づくりをめざします。先生方の思いや工夫が、生徒の主体的な学びへとつながるヒントになれば幸いです。
夏休みの宿題は、生徒の時間を奪っていないだろうか
夏休みは、本来、生徒が自分の興味・関心を追究するための時間です。図書館や博物館に足を運び、知的好奇心を広げることもできれば、自然体験や地域活動、人とのかかわりを通して教室では得られない学びを経験することもできます。そのような貴重な機会があるからこそ、学校の課題によって生徒の時間を埋め尽くしてしまうことには慎重でありたいと考えます。宿題の目的は、生徒の時間を管理することではなく、生徒の学びを支えることです。夏休みにしかできない体験の価値を認め、その時間を保障することも、私たち教師の大切な役割です。
【実践】読書感想文の「最初の一歩」に。「読書感想カード」から始まる学びの連鎖
「読書感想文は苦手…、でも本を読むことは好き!」そんな生徒は少なくありません。そこで本実践では、まず「この本を誰かにすすめたい」という気持ちを1枚のカードで形にすることからスタートしました。本と向き合い、その魅力を自分の言葉で整理する経験が、読書感想文へのハードルをぐっと下げてくれます。
【1学期】「おすすめ本」をカードにまとめ、本と出会う時間をつくる
読書は、本との出会いが大切です。そこで1学期(7月中)には、「これまで読んだ本の中で、一番おすすめしたい本」を思い出す活動を行います。生徒は自分の読書経験を振り返りながら、心に残っている1冊を選びます。
選んだ本については、以下を一枚のカードにまとめます。
- 書籍の表紙
- 目を引くタイトル(キャッチコピー)※生成AI活用にもチャレンジしました。
- 著者名・出版社・発行年月・価格
- この本がイチオシな理由
特に大切にしているのは、「この本がイチオシな理由」を熱く語ることです。あらすじを書くのではなく、「なぜ自分はこの本に夢中になったのか」「どんな人に読んでほしいのか」「この本を読んで自分の考えが変わった!」を自分の言葉で表現します。この活動を通して、生徒は「誰かに紹介したい本との再会」を経験します。そして、このカードを共有することで、新たな本との出会いが生まれます。生徒にとって、教師のおすすめ以上に、同級生が熱く語る1冊は魅力的に映るものです。「その本、読んでみたい!」という気持ちが、次の読書への原動力になります。
読書活動の第一歩は、「読みたい本との出会い」です。カードを通して他者参照を行うことで、生徒は夏休みに読む本を主体的に選ぶことができるようになります。
【夏休み】読書感想文のハードルを下げる「カード作成」を宿題に
夏休みには、新たに本を1冊以上読むことを課題とします。そして、その本についても1学期と同じ形式の読書感想カードを作成します。これは読書感想文の下準備となります。本の魅力を整理し、自分の考えを言語化する過程は、その後に感想文を書く際の大きな助けになります。表現のハードルを下げることで、「読んで終わり」ではなく、「伝えたい」という気持ちを引き出すことができます。
【2学期】集めたカードが授業や図書室の主役に!
この実践の最大の特長は、宿題を提出して終わりにならないことです。
集まった読書感想カードは、2学期にさまざまな場面で活用されます。
① ICT共有で広がる、新たな本との出会い
まず、ICTを使ってカードを共有することで、さらに新たな本と出会い、読書への興味・関心を高めるきっかけになります。
② 過去の作品を「最高の見本」に。図書室への展示で後輩を育てる
完成したカードは図書館で本と一緒に展示します。本のPOPとして活用することで、学校図書館全体が「おすすめ本コーナー」へと変わります。この取り組みを継続すると、卒業生が残したカードも蓄積されていきます。歴代の生徒たちが紹介してきた「イチオシ本」が図書館の財産となり、後輩たちの読書活動を支えていくのです。
田中芳樹 『王都炎上』 /光文社文庫
③ 集めたカードが授業の主役に!ビブリオバトルへの展開
教科書単元のビブリオバトルの「素材」として活用することができます。カードがあることで、生徒は自信をもって自分のおすすめ本を紹介できるようになります。
④ 実態に即した図書予算の活用へ。生徒の「声」を学校環境づくりに活かす
図書購入希望アンケートを実施したこともありましたが、流行や話題性だけの意見が集まることが多く、生徒たちに本当に必要な本かの見極めの難しさがありました。しかし、このカードは実際に生徒が読んだうえで「本当におすすめしたい」と考えた1冊です。そこには確かな読書体験が伴っています。そのため、生徒のニーズを把握する資料としても信頼性が高く、次年度の図書予算を考える際の参考資料として活用することができます。
読書感想カードは、1枚の小さなカードです。しかし、その1枚が読書活動を広げ、授業を活性化し、学校図書館を豊かにし、次年度の学校づくりにもつながっていきます。宿題を、2学期の「仕込み」に。「提出して終わり」にしないだけで、夏休みの課題はもっと価値あるものになります。
そして何より、この取り組みは生徒自身の成長にもつながっています。ある生徒は「あの小さい紙のスペースで、どうしたら魅力が伝わるかを試行錯誤した経験が、今に活きています。テストの要約問題も、以前よりできるようになったと感じます」と話してくれました。
ほかにも、生徒からはこんな声が届いています。
・「おもしろかった」で終わらず、「なぜそう感じたのか」を考えながら読めるようになった。
・友達のカードを見て、これまで読まなかったジャンルの本にも挑戦するようになった。
・キャッチコピーづくりを通して、相手の興味を引く言葉や表現を意識するようになった。
・友達の作品から、自分とは異なる感じ方や価値観があることに気付き、人の意見を尊重できるようになった。
1枚のカードで「何を、どう伝えるか」と向き合った経験は、教科の学習にとどまらず、読み方や人との関わり方にも確かに広がっていきます。
教室を越えて。読書活動が「地域」へと広がる3つのポジティブな変化
変化1:POP作成を通した「相手意識」の芽生え
この実践は、教室の中だけで完結しません。実は、以前実施した地元書店との連携企画も、この読書感想カードが土台となっています。
今回は、地元書店の店長さんを講師としてお招きし、POPづくりの指導をしていただきました。(POPとは、書店などで本のそばに置き、その魅力を短い言葉やデザインで伝える紹介カードのことです。)私がする授業とは、説得力がまるで違いました。本当に本のプロでした。その中で印象的だったのは、店長さんの「これまでの読書感想カードは、この段階ではまだ自己満足です」という言葉でした。このカードで「完成品」と考えていた私にとってとても衝撃的であり、それでいて、深い納得感がありました。
読書感想カードは、自分の思いや感想を表現する活動として大きな価値があります。しかし、POPはその先にある「誰かに伝える」ための表現です。本を手に取ってもらうためには、相手意識が欠かせません。「どんな言葉なら足を止めてもらえるか」「この本の魅力をひと言で表すなら何か」「どんな色やデザインなら手に取ってもらえるか」。生徒たちは、読書感想カードに書いた内容をもとに言葉を精選し、キャッチコピーやデザインを工夫しながら、より伝わる表現へと磨き上げていきました。
変化2:地域とつながる実体験(地元書店での展示)
完成したPOPは、141名の作品の中から生徒投票によって代表12作品を選出し、実際に書店の本とともに展示していただきました。自分がつくったPOPが店頭に並び、それを見た地域の方が本を手に取る。そんな経験は、「読むこと」や「伝えること」が社会とつながる実感を生徒にもたらすことができました。
変化3:教員が「コーディネーター」となる新しい役割の発見
また、この実践を通して改めて感じたのは、「教員が教える」だけでは十分ではない時代になっているということです。書店の店長さんだからこそ語れる言葉や視点、プロだからこそ伝えられる価値があります。教員の私では、成しえない授業でした。
教員がすべてを教えるのではなく、本物の人や社会と生徒をつなぐこと。そのためのコーディネーターとしての役割が、教員にはこれからますます重要になっていくのではないでしょうか。
生徒主体の学びをつくる、これからの宿題のあり方
夏休みの宿題を考えるとき、私たちはつい「何を課すか」に目が向きがちです。しかし、本当に大切なのは、「2学期にどのような学びにつなげたいのか」を先に考えることではないでしょうか。
今回紹介した読書感想カードの実践も、カードそのものを完成させることが目的ではありません。2学期の交流活動やビブリオバトル、図書館での展示、さらには地域との連携へとつながる「学びの入口」として位置づけています。宿題を出すことから考えるのではなく、宿題がどのような学びの出口につながるのかを考える。そこから逆算して課題を設計することで、宿題はより価値あるものになります。
また、夏休みは学校がすべてを管理する時間ではありません。本来であれば、生徒が興味をもったことをとことん追究したり、図書館や博物館を訪れたり、自然体験や地域活動に参加したりできる貴重な期間です。
だからこそ、学校は「夏休みを宿題で埋め尽くす存在」ではなく、「夏休みにしかできない経験を支える存在」でありたいと考えています。
宿題を減らすことが目的ではありません。生徒の時間を大切にしながら、学びの価値を最大化することが目的です。夏休みの課題が、提出して終わるものではなく、2学期の学びや地域とのつながりへと広がる「仕込み」になる。そんな宿題づくりを、これからも模索していきたいと思います。正解のない時代だからこそ、目の前の子どもたちを信じ、実践を更新し続ける先生方の存在が、教育の最も大きな力なのだと思います。
先生のプロフィール
福住 里絵先生