合唱指導の練習方法
~声が出ない小中学生への声かけ・発声練習~
少人数でも!思春期でも大丈夫!
即パッと使える実践アイデア!

授業づくり
合唱指導の練習方法 ~声が出ない小中学生への声かけ・発声練習~少人数でも!思春期でも大丈夫!即パッと使える実践アイデア!

執筆/八千代市立睦小学校
西澤 財先生

もうすぐ合唱行事のシーズンですね!


合唱指導でよくある悩みが、「子どもが恥ずかしがって声を出さない」「練習が盛り上がらない」「少人数で迫力が出ない」というものです。特に小学校高学年から中学生にかけては、思春期の影響もあり、発声練習や声かけの工夫が欠かせません。


この記事では、音楽が専門ではない先生でも実践しやすい合唱指導のポイントを紹介します。子どもの「歌いたい」という気持ちを引き出す選曲・声かけ・発声練習に加え、ICTを使って練習の振り返りを見える化する方法も解説します。


この記事でわかること

    🎵 音楽が専門ではない先生でも実践できる、合唱指導のポイント

    🎵 子どもの「歌いたい!」を引き出す練習方法や声かけ

    🎵 少人数や思春期の子どもでも取り組みやすい合唱づくりの工夫

    🎵 ICTを活用した、子ども主体の振り返り活動の実践例

    🎵 明日からの授業や合唱コンクールですぐに使えるアイデア

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合唱指導で声が出ない原因は?まずは「歌いたい気持ち」を育てる

思春期の子どもが声を出しにくくなる理由

 

兎にも角にも、まずは精神的な障壁を取り払わないと、どれだけ姿勢がよかろうが声を出そうが、絶対に歌えません。

 

特に小学校高学年ぐらいからは思春期であることも伴って男子を中心に身体的に声を出しづらくなる環境になります。ですから、気分よく歌ってくれることが第一だと考えています。本当に個人的な考えにはなりますが、「美声だけど恥ずかしがって歌わない」ぐらいなら、「地声で意欲的に楽しく歌ってくれる」方が、子どもたちの人格が形成されていった時に、人生における音楽への関わり方が全然違うのではないかな、と私は思っています(合唱に美声を求める先生方、本当にごめんなさい…)。

 

合唱曲の選び方|子どものやる気を引き出す選曲のポイント


【中学生の場合】

中学生だと(共通教材を除き)教科書の中に数曲ある中から最初の授業開きで聴かせながらアンケートをとって1番人気の曲から取り組ませていました。学年の最初から強く声を出さないと、後からエンジンがかかることはまずありません。


よく「子どもに任せることは無責任だ」という先生もいらっしゃいますが、中学生にもなれば、ある程度は自分のことは自分でわかるはずです。ただ、「この曲が好き!」という気持ちは尊重しつつ、「自分の声にとって、これが似合う!」という理由で選曲するということを事前に指導する必要はあろうかと思います。


例えば、男声パートで連続して高い音が続く曲…これはできる生徒とできない生徒がはっきり分かれます。中1ぐらいだと、できる割合は多いかもしれませんが、中2からガクンと落ちるのではないかな、と思われます。


【小学生の場合】

小学生の場合は(なかなか自分で選ぶことは難しいので)「この曲、紹介するね!」と言って聴かせ、「この曲、○○だから似合うと思わない!?」と音楽的要素から根拠を明示しながら「ふさわしい」といったプラスの言葉がけを心がけます。


曲想や学年・学級の実態にもよりますが、明るい曲想の場合は聴きながら手拍子などでリズム遊びも交えつつ、学習の雰囲気・ボルテージを上げていきます。ポイントは大げさに言うこと。音楽はエンターテイメントです。プラスなことを言う時は先生自身が、大げさにたたえて演じてください。ほめられて嫌な子はあまりいません。

声が出る合唱へ!小学生・中学生に伝わる発声練習

「お腹から声を出す」をどう伝える?


よく、子どもたちに言いませんか?「お腹から声を出す」「身体の緊張をほぐしてよい姿勢で歌いましょう」…これって、一体どういう意味なのでしょうか?


自分は音楽の先生から上記のようなことを言われた記憶がうっすらとありますが、なんだか最後まで今一つ理解できないまま義務教育を終えました。(笑) 


小学生でも中学生でも心身ともに未発達だったり不安定だったりするなかで、「腹筋を使って腹をへこましてどうこう」「身体の緊張をほぐすために、ジャンプして丹田をどうこう」と言ったところで実態によっては理解に限界があります。少なくとも小学生にとっては、難易度が跳ね上がるのではないでしょうか。とはいえ、自分が子どもの時のような腹筋・背筋の筋トレ強制をしようものなら、不適切な指導になりえてしまう時代ですね…。


この「お腹から声を出す」とは、(個人的には)呼吸法の1つとして捉えています。大声で応援する時のように、「一気にお腹まで息をため込む」ことだと勝手にかみ砕いています。大きな声は地声も裏声もブレスの意識からです。空気が体内にあって、初めて大きな歌声になります。思春期の子どもたちも息がたくさんあれば、いつまでも息を保持しているわけにはいきません。生理的に息を吐く必要性が出てくるわけです。


ただ、せっかく空気をため込んだところで、その空気をしっかり吐ききらないと意味を成しません。空気をしっかり吐ききるためには、どうすればよいのでしょうか?…簡単です。体力を使わせればよいのです。マラソンのように、身体を使えば息が切れていきます。とはいえ、歌唱時にマラソンのような動きはしません。歌唱では、どのように体力を使わせれば良いのでしょうか?

 

 「クシャクシャ→パッ!」で楽しく取り組める発声練習

そのよいヒントが、テーマパークの人気キャラクターの姿勢に隠されています。基本は目がまん丸に開き、肩に力は入っていないけど背筋はピンと伸びている…これが理想の姿勢だと思います。目のつくり方は、よく「顔をクシャクシャにして!クシャクシャクシャクシャー(身体まで力が入ってきたことを確認して)…はい、パっと開けて!(自然とストンと肩まで落ちたことを確認してから)…そのまま歌ってみましょう!」と指導して、そのまま歌わせています(図1)。


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(図1)クシャクシャ→パッ!のイメージ図。眉毛も下がる→上げる意識づけも大事です。


最初のうち、子どもたちは大変困惑します。友達同士で、普段は見ないであろうパッチリした目と上がりに上がった眉…そんな顔を見合わせて笑ってしまうかもしれませんね。しかし、歌わない子どもたちにとっては、そこが大きな進歩なのです。ここで「笑うな!」と一喝したくなる気持ちはとても理解しますが、最初に申し上げた通り「楽しい!」「面白い!」と思わせないと歌いません。我慢しましょう。我慢することでプラスの思いにつながり、ひいてはガンガンに歌うようになるはずです。

少人数の合唱でも響く歌声に。普段の練習で意識したい3つの工夫

「人数が少ないと迫力が出ない」と感じる先生は少なくありません。
しかし、声の出し方や姿勢、練習方法を少し工夫するだけで、少人数でもまとまりのある合唱は十分につくることができます。


ここでは、日々の授業で取り入れやすい3つのポイントをご紹介します。

 

●工夫⓵ 口の開け方を意識して、響く声をつくる

大きな声を出そうと意識する前に、まずは口の開け方を整えることがポイントです。例えば、「指縦3本・横3本」を目安に口を開けることや、母音の形を意識して歌うことを日頃から取り入れると、自然と響きのある声につながります。中学生であれば、一度すべて母音だけで歌ってみる練習も、発声や響きを確認する方法としておすすめです。


●工夫② 顔を上げて歌うことで、声も気持ちもそろう

教科書ばかり見ていると、自然と下を向いてしまい、声も届きにくくなります。電子黒板にデジタル教科書を映して歌うことで、子どもたち全員が前を向いて歌いやすくなります。電子黒板を少し高めの位置に設置すると、自然と目線が上がり、姿勢や声の響きも変わってきます。子どもたちの視線がそろうことで、歌声だけでなく気持ちも一つになりやすくなります。

 

夫③ 伴奏を味方にして、自然と声量を引き出す

声が小さいからと何度も「もっと大きな声で」と伝えても、子どもたちはとまどってしまうことがあります。そんな時は、伴奏や音源の音量をあえて少し大きめに設定してみるのも一つの方法です。

「伴奏に負けないように歌ってみよう」と声をかけることで、無理なく声量が上がり、子どもたちも楽しく歌いやすくなります。

ICTで合唱練習の振り返りを見える化する方法

ICTで合唱練習の振り返りを見える化する方法

歌は、どんな子であれ「下手なままでいいや」と思う子は、あまりいないのではないでしょうか?極論「上手になれるなら、なれるに越したことはない」はずです。では、意欲的に取り組ませるには、どうすればよいのでしょうか?ここで、私は「オクリンクプラス」を活用した振り返りに取り組んでいます。特に、最近は「ピン集計」を活用した振り返りに、力を入れています。

 

オクリンクプラスのピン集計を使った合唱振り返りの実践例

ミライシードの「オクリンクプラス」における「ピン集計」とは、画像や地図の上にピンを配置して意見や投票を集計し、分布図として視覚化する機能です。クラス全体の考えや評価を瞬時に共有・可視化できるため、協働学習や意見の整理に活用されています。

 

私は、この「ピン集計」を活かし、次のようなカード群をつくってみました。(図2)この矢印を画像にし、自分たちの歌声を評価させています。左にピンを置けば置くほどほど要改善・右にピンを置けば置くほど完璧になります。

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(図2)「オクリンクプラス」を用いた、振り返りシート。

1番左の黄色のカードに「ピン集計機能」を用いています。


※授業ですぐ使える「合唱振り返りカード(PDF)」と「オクリンクプラスで使える共有コード」は、フォームへの情報入力でダウンロードいただけます。

(PDFは印刷して配布することもできるので、ICT環境に関わらずご活用いただけます!)

 


初回の時、これを使い方だけ説明して評価してもらい「みんなのボード」に提出させます。説明だけだと、初集計時だいたいはフラフラ~っと右寄りにピンが寄ります。(笑) タブレット端末を使った学習は楽しいし、気楽~♪そんな気分に釣られてしまうのでしょうか?そんな時に、こんな言葉がけがあると子どもたちにとって大きな学習のスパイスとなります。

 

 「おお、随分と右寄りだね!これからこのカードで振り返りしていくけど、大丈夫かい?毎回学習を進めればドンドンうまくなるはずだもんね!次回までには全員完璧になるかな!?」

 

子どもたちは大いに焦ります。

 

「ええ!」「そんな!」「これは困ったことになったぞ…」「言うのが遅いですよ先生!とまで言われてしまうかもしれませんね。(笑) それでいいのです。すかさず、こう声をかけてください。

 

「そうするための【次回、出来るようにしたいこと】でしょ?それが達成できれば右寄りにできるはずじゃん!頑張ってね☆」

 

子どもたちはハッとします。より冷静に練習というものを見聴きしていかないと、この振り返りでは、歌がまとまらないことを悟るからです。したがって、絶対に次回は左寄りになります。(笑) でも、ここで注意はしない。より冷静な目と耳で分析できている証拠です。長い目で見てあげてください。終わりよければすべてよし!です。まとめる時に、右に寄っていればよいのです。


小学校高学年~中学生になると、場合によっては自分たちでパートごとに練習することもあります。練習の雰囲気に左右されることもあってか、より上手に練習できる時と上手にできなかった時の感じ方の差が激しくなります。したがって、より長い目で見ることが大切ですが、ピンが左に大きく寄った時や、ピンクのカード(今日のふりかえり)でネガティブな言葉を発する児童生徒が増えた時には注意してください。何かしらの生徒指導的問題や心理的負担が重くのしかかっているかもしれません。そういったものの早期発見にも、このカードたちは役立ってくれています。

合唱指導で一番大切なのは「先生も音楽を楽しむこと♪」

まとまらない長文をここまでご覧頂き、ありがとうございました。最後に真面目なことを書かせてください。


合唱イベント直前になると、よくお見かけする場面があります。「この曲は楽しい歌なのだから、キミたちがつまらなく歌ったらダメじゃないか!!(怒)」というご指導です。確かに極度の緊張からくるものであれば、子どもたちはハッとするでしょうが、あまりそういった場面で出てくるご指導ではないのです。大抵は、かったるそうに歌っていたり、義務感が生まれていたりする時が多いです。「教える」ことや「コンクールに勝つ」ことに終始するあまり、音楽のもつ楽しさを押しつけてしまってはいませんでしょうか?個人的に、これだからコンクールは大嫌いなのです。音楽がご指導によって、他者を倒すための武器になってしまうからです。本来の音楽って、そういうものなのでしょうか?「音を楽しむ」と書くのに??


どうか、せめて、音楽の学習の時間は、そういった時間を子どもたちに過ごさせてほしくないのです。ほかのご指導とはスイッチを切り替えていただきたいのです。自分が指導する時は、子どもたちが失敗しても「難しいねえ~(笑)こうしてみようか!…こうでもないね~(笑)」と一緒に悩むことを楽しみながら取り組んでいます。ちょっとした大人の表情を、どんな子どもたちもよく見ていて、無意識に自分事と捉えがちです。大人が音楽や音楽の練習活動を楽しめば、子どもたちも自然と楽しんで歌ってくれるようになります。この記事を読んでいただいている先生方が、何より一番楽しんでご指導なさっていただきたいです。


本文では、たびたび「注意したい気持ちを我慢」と書きました。上記のような思いから、そのように記載しました。どうか、自分の思いを生温かい目で受け取っていただけますと幸いです。


さあ、本番まで、もうひと踏ん張り!全国の先生方、頑張りましょうね♪

先生のプロフィール

西澤 財先生
八千代市立睦小学校 教諭

西澤 財先生

桐朋学園大学在学中に第25回彩の国さいたまピアノコンクールF部門金賞・ヤマハ賞・審査委員長賞を受賞。2019年より中学校教諭経験後、2022年より現小学校教諭(音楽専科)着任。以後、音楽教育とICT教育の親和性を生かした学習手法を研究。2024年から2年間、八千代市教育の情報化推進委員会委員を務めたのち、2026年より八千代市教育研究会小学校音楽部長・八千代市学校音楽会原案作成委員会委員を拝命し、現在に至る。ミライシードDXエデュケーターとして千葉エリアコミュニティ共同エリアマネージャーも務める。

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