【先生のための超入門】著作権法35条の基本と「授業でどこまで使える?」を整理
― 澤田 将史弁護士が解説!学校現場の「著作権」お悩みあるある vol.1 ―
授業づくり
監修/高樹町法律事務所 元・文化庁著作権課 著作権調査官 澤田 将史弁護士
「著作権」―それは、学校現場の先生たちを日々悩ませる難題。
授業、学級通信、学校行事…様々な場面で頭をよぎる「これ、著作権的にOK?」という疑問。
本連載では、著作権分野に精通する、元・文化庁著作権課 著作権調査官の澤田 将史弁護士に、学校現場で押さえておくべき著作権の知識を解説いただきます。
「せんせいシード」編集部が澤田先生に疑問・質問をぶつけます!
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そもそも「著作権」とは?
澤田先生、さっそくですが…そもそも「著作権」って、ざっくり言うと「作った人の権利で、基本は勝手に使えない。許諾が必要」という理解で合っていますか?
だいぶざっくりですが(笑)、大枠はその理解で合っています。著作権というのは著作権者から見ると「自分の著作物について、法律で定められた利用を無断でされない権利」です。利用する側からすると、他人の著作物について、法律で定められた利用をするときには許諾が必要、ということです。
著作物というと、文章やイラスト、写真、音楽、動画…あと他には…
著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。「創作的に」というのは、芸術性の高さなどは考慮されず、個性が表れていればよいと解されていますので、皆さんの想像よりも多くのものが著作物にあたるのではないかと思います。著作物の例は下記のようにまだまだあります(図①)。
ダンスの振り付けやコンピュータプログラムまで!
様々なものに著作権があって、使うには許諾が必要ってことですね。
原則は許諾が必要です。ただ、著作権法の中には許諾不要で自由に利用できる例外が定められています。このような例外の規定を権利制限規定といいます。
そのひとつが、「学校その他の教育機関における複製等」に関する著作権法35条です。
「教育目的なら著作物を自由に使える」は誤解
著作権法35条…というと、急にハードルが上がった感じがしますが…
つまり、ざっくり言うと、学校現場で教育目的だったら特例で許諾がなくてもOKだよ、ということですか?
違います。
それは「あるあるすぎる誤解」ですね。
なんと…!!
35条をざっくりと説明するとすれば、「学校の授業で使うためには著作物をコピー・送信できる」と言った感じでしょうか。教育目的なら何でもOKなのではなく、35条が適用されるには条件があるのです。
まずこちらを見てください。正しく理解するためのポイントは5つです(図②)。
1の対象施設と2の対象主体は、理解できます。
一般的な学校で、教育を担当する教員の先生たちと、その授業を受ける児童や生徒たちが基本的に対象になるということですよね。
そうです。1.2は比較的わかりやすいのですが、誤解されやすいのはまず3ですね。
大前提として「教育目的の利用ならOK」となっておらず、「授業の過程」における利用であることが必要なのです。そして、「授業なのか授業ではないのか」の線引きが正しく理解されていないケースが多いです。
著作権法35条の「授業の過程」はどこまで?
「授業の過程」にはまず通常の授業と、運動会などの学校行事、部活動も含まれます。
しかし、例えば、学級通信や保護者会、教職員の会議、PTA主催の活動などは含まれません。
え?!行事や部活動は含まれるけど、学級通信や保護者会は対象外ということですか?
確かに線引きが難しい…
ポイントは「授業」です。「教育を担任する者が、児童・生徒・学生等に教育活動を行う」ことが授業です。学校でのいわゆる授業だけでなく、ホームルーム活動、部活動、委員会活動、学校行事などもここには含まれます。学級通信や保護者会はそもそもこの「授業」とはいえないので対象外になるのです。何が「授業」に当たるかは、著作物の教育利用に関する関係者フォーラム「改正著作権法第35条運用指針」が参考になります。
「授業」がポイントですね!
それでは、「授業」の時間しか対象にならないかというと、「授業の過程」とあるとおり、例えば、授業と紐づいた授業の準備や、授業のふり返りは、「授業の過程」に該当し、対象となります。
復習用プリントで使えないと困りますもんね。
あとは「必要と認められる限度」での利用しかできませんので、授業の過程で使わない部分までコピーをするというのは許されません。
コピー・スキャン・配信はOK?「複製」「公衆送信」の考え方
次に4の「複製、公衆送信、公衆送信を受信して公に伝達」なのですが…わかるようなわからないような…澤田先生、解説をお願いしたいです。
ちょっと聞きなれない言葉ですよね。まず比較的わかりやすい「複製」ですが、コピー機で印刷することだけではないので注意です。コピー、スキャンデータの作成、録音、録画、ダウンロード、これらすべて「複製」にあたります。手で書き写すことも複製です。
紙媒体だけではないですもんね…。
それから「公衆送信」ってなんでしょうか…?
Webへのファイルのアップロード、オンライン配信、メール配信、放送、有線放送などが「公衆送信」にあたります。
先生、さらに難解なのが「公衆送信を受信して公に伝達」という…だんだん頭がこんがらがってくるのですが、これはどういう…
例えば、体育の授業で、学校にあるテレビでオリンピックの中継を見せる(放送という公衆送信を受信してテレビで生徒に見せている)とか、YouTubeにアップされている動画を先生のPCをディスプレイに繋いで授業で見せる(YouTube配信という公衆送信を受信してディスプレイで生徒に見せている)、などですね。
ちなみに、35条に基づいて公衆送信を行う場合は、授業目的公衆送信補償金の支払いが必要で、先生方が利用の都度支払うのではなく、教育機関の設置者(公立であれば、国や地方自治体)がまとめて支払いをすることになっています。授業目的公衆送信補償金の仕組みについては一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)のウェブサイトをご覧ください。
「校内放送」で音楽を流すのは著作権法35条の対象?
素朴な疑問なのですが…「校内放送」で音楽を流す場合はこの「公衆送信」に該当しますか?
先ほど、「放送」が出たので、そう思いますよね。ただ、校内放送で音楽を流すような場合については、著作権法の中では「放送」とは異なる扱いがされています。校内放送のような同一の建物内限りの送信については、「公衆送信」ではなく、音楽の「演奏」ということになります。
難しいですね・・・
演奏ということでも35条は使えるのでしょうか?
ここがややこしいところなのですが、先ほど見たとおり、35条は複製、公衆送信、公に伝達ができる、という規定ですので、演奏や上演に対する適用はありません。
演奏や上演については、38条という別ルールの適用が問題になります。38条については、また別の機会に紹介しますが、結論としては学校で給食中などに流している校内放送であれば38条1項という規定が適用されて許諾なく行うことができます。どういう行為を行うかによって適用されるルールが変わりますので、自分が行うとすることが著作権法上の何に当たるのかを常に意識することが重要です。
ドリル・ワークブックのコピーはNG?35条でも注意したい「例外」
では先生、最後に5についてですが、
ドリルやワークブックなど、児童・生徒等の購入を想定した著作物について、購入を代替するようなコピー・送信は×
この違いがちょっとわかりづらいです。
例えば、担任している授業で新聞の社説を複写して生徒に配るのはOKです。ただ、児童・生徒が全員購入して利用する用に販売されているドリルやワークブックを、先生が1部だけ購入してコピー・配布して児童・生徒に解かせるというのは、例えそれが授業の中であってもNGだよ、ということです。著作物が本来想定している流通がされなくなってしまうからですね。
確かに…コピーして配られてしまったら、「商売あがったり」になっちゃいますもんね。
ストレートな言い方ですが(笑)、そういうことです。ただ、児童・生徒がドリルを忘れてしまった場合にドリルの一部をコピーして渡したり、児童・生徒全員が購入しているドリルについて解説のために書き込みを入れた資料を作って配ったりするようなことは、「商売あがったり」になるとまではいえないので許されると考えられます。
35条の他の要件を満たして授業に紐づいていた利用であったとしても、例外としてNGになるものがあるよ、というのが5なのです。
まとめ:35条のポイントを正しく理解しよう
では澤田先生、あらためて今回のまとめをお願いします!
・著作物の利用には基本「許諾が必要」
・ただし学校の場合、条件を満たせば「35条」が適用される
・「教育目的なら何でもOK」は大間違い
まずは35条のポイントをしっかり理解することが基本ですね。
本日はありがとうございました。
次回は、より具体的な学校での「こういうケースってOK?」のケーススタディを澤田先生に解説していただくので、ぜひお楽しみに!
※本記事は情報提供のみを目的としており、法的アドバイスを提供するものではありません。また、本記事は作成日時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。著作権法の適用は個別の事実関係により異なるため、具体的な案件については専門家の助言を受けることをおすすめします。
関連リンク
- 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム「改正著作権法第35条運用指針」https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin_20201221
- 一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)ウェブサイト
https://sartras.or.jp/
監修者プロフィール
澤田 将史弁護士