【安全管理】理科室で毎年ヒヤリとしていませんか?

火事や薬品事故の不安をなくす!子どもとつくる安心の実験ルール

授業づくり
【安全管理】理科室で毎年ヒヤリとしていませんか?

執筆/京都府京都市公立小学校教諭 大﨑 雄平先生

 理科室での実験、毎年「ヒヤリ」としていませんか?


「安全面だけは毎回気を張るなぁ…」

理科を担当する先生なら、一度はそんな思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。


小学校の理科では、実験用ガスコンロを使った加熱実験や、塩酸・アンモニア水などの薬品を扱う実験、ガラス器具を使用する実験など、安全に十分配慮しなければならない場面が数多くあります。実験が始まれば、教師は火の様子、薬品の扱い方、器具の使い方、子どもたちの動きなど、教室全体に目を配ります。しかし、一人の教師が30人前後の子どもたち全員を見続けることには限界があります。だからといって、「危ないから教師が全部やる」「失敗しそうだからやらせない」という指導では、子どもたちは安全に行動する力を身に付けることができません。

 

理科室で本当に目指したいのは、教師が見ているから安全なのではなく、子ども自身が危険を予測し、安全な行動を選択できるようになることです。


そのために私が大切にしている安全指導には、三つの柱があります。

  • ●安全に行動できる子どもに育てること
  • ●教師自身が安全に関する知識を身に付けること
  • ●安全指導を一度きりで終わらせず、継続的に徹底すること

本記事では、まず一つ目の「安全に行動できる子どもに育てること」について紹介します。

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理科の実験 安全チェックシート

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なぜ理科室の「安全管理」は難しいのか?教師1人では防ぎきれない「ヒヤリ」の背景

30人の児童と多様な実験作業が生む「見落とし」のリスク


実験中、教師は常に複数のことを同時に見なければなりません。ある班では実験用ガスコンロで加熱を始め、別の班では薬品を扱い、さらに別の班では観察結果を記録しています。一斉授業の中でも、どうしても進度の差は生まれてしまいます。


その中で、

「安全メガネをかけ忘れている。」

「加熱中なのに友達と話し始めた。」

「いすにつまずいて器具を落としそうになった。」


そんな「ヒヤリ」とする場面は決して珍しくありません。


教師が注意深く見守ることはもちろん大切です。しかし、教師一人がすべての危険を防ぐことには限界があります。だからこそ、「教師が見ているから安全」という考え方ではなく、「教師が見ていなくても安全に行動できる子ども」に育てることが、安全教育では何より重要になります。

「命令」で終わらせない!
子どもが納得して守る理科実験のルールづくり

 理科室には多くの約束があります。

  • ●安全メガネを着ける
  • ●長い髪は束ねる
  • ●実験中は歩き回らない
  • ●勝手に薬品を触らない

しかし、「守りましょう」と伝えるだけでは、子どもは本当の意味で納得できません。


【工夫①】

教科書の「まちがいさがし」から、安全について考える

毎年最初の理科の授業では、教科書に掲載されている理科室のイラストを大型提示し、「この絵の中には、どんなまちがいがあるかな?」と問いかけることから始めています。


例えば、ある教科書では「まちがいさがし」として、理科室での実験の様子が描かれています。


子どもたちは、

「安全メガネを着けていない」

「長い髪を束ねていない」

「実験器具を机の端に置いている」

「服のひもが出ている」

「椅子に座ったまま実験している」

など、イラストの中から安全上の問題を探していきます。


ここで大切なのは、

単に「○○が間違っている」と答えて終わらせないことです。

「どうして、それが危ないの?」

「このままだと、どんなことが起こるかな?」

と問い返します。


すると、

「髪に火がつくかもしれない」

「器具が落ちて割れるかもしれない」

「服のひもが器具に引っかかるかもしれない」

など、それぞれのルールの意味を子どもたち自身が考え始めます。


そして、子どもたちから出てきた「なぜ?」をきっかけに、安全な実験の仕方を一つずつ確認していきます。


ただ「安全メガネを着けましょう」「髪を束ねましょう」とルールを覚えさせるのではなく、「なぜ、その行動が必要なのか」まで考えさせることがポイントです。


なお、教科書の構成は教科書会社によって異なります。今回のように「まちがいさがし」として、実験中の誤った行動を探すイラストが掲載されている教科書もあれば、正しい実験の様子を示したイラストを掲載している教科書もあります。使用している教科書に合わせて、「どこが危険なのか」「なぜこのような行動をしているのか」を考えさせるとよいでしょう。


こうして、最初の理科の授業から、子どもたち自身が安全について考える時間をつくります。


「危ないから」ではなく、「なぜ危ないのか」を伝える

安全指導で最も大切なのは、ルールの理由まで理解させることです。


【工夫②】

濡れ雑巾・安全メガネは「なぜ必要なのか」

理由を演示・解説する

例えば、火を使う実験では必ず濡れ雑巾を準備します。しかし、「どうして濡れ雑巾が必要なの?」と聞かれると、答えられない子どもは少なくありません。


そこで、小さな炎を濡れ雑巾で覆い、空気を遮断することで火が消える様子を演示しています。


子どもたちは、

「本当に火が消えた!」

「火事になりそうなときのためなんだ」

「だから実験の前に濡れ雑巾を準備するんだね」

と、その意味を理解します。


もちろん、実際に火災が起きた場合は教師が対応します。しかし、「なぜ濡れ雑巾を準備するのか」を知ることで、子どもたちは安全を自分事として捉えられるようになります。


安全メガネについても同じです。「着けなさい」では終わりません。

「薬品がほんの一滴目に入るだけでも、大きな事故につながることがある」

という背景まで伝えることで、安全への意識は大きく変わります。


安全指導で大切なのは、「○○しなさい」と行動だけを教えることではありません。その行動にはどんな意味があり、どんな事故を防ぐためのものなのかまで理解させることです。


理由が分かれば、子どもたちは教師に言われなくても、安全な行動を選択できるようになります。


【工夫③】

事故を防ぐだけでなく「もしも」の応急対応を事前共有する

事故を起こさないことはもちろん大切です。しかし、安全教育はそれだけではありません。


実験を始める前には、子どもたちに問いかけます。

「薬品が目に入ったら、どうする?」

「やけどをしたら、まず何をする?」


すると、多くの子どもたちは戸惑います。


だからこそ、

  • ●やけどをしたとき:すぐに流水で冷やす

  • ●薬品が目に入ったとき:
  • ためらわず大量の水で洗い流し、すぐ教師へ知らせる

  • ●ガラス器具を割ったとき:
  • 自分で拾おうとせず、触らずに教師を呼ぶ

などを、実験前に必ず確認しています。


事故を起こさないための知識だけでなく、「もしも」の場面で、どう行動するかまで共有しておくことで、子どもたちは安心して実験に臨むことができます。

教師自身が知っておきたい安全の知識

教師の準備として、実験前には救急用品や洗眼できる場所、水道の使える状態なども確認しておきたいところです。


みなさんは理科室の水道にホースがついている理由をご存じでしょうか?


主な理由の1つが、「目に入った薬品をすぐ洗眼(流水洗浄)できるようにするため」です。ホースがついていなかったり、汚れがあったりする場合には、新しいものをぜひご準備ください。


「事故は起きないはず」ではなく、「起きたときにどう対応するか」を想定して準備しておくことが、子どもたちの安全につながります。

安全指導を継続する!クラス全体で安全を守る「仕組み化」と「声かけ」

 安全指導は、その日だけ頑張っても定着しません。


だからこそ、「先生が注意する」から「子どもたち同士で確認し合う」仕組みをつくることが大切です。


班ごとの「安全チェックシート」での相互確認を習慣化する


例えば、安全面のチェックシートを各班に用意しておきます。

☑️安全メガネをかけた

☑️長い髪を束ねた

☑️濡れ雑巾を用意した

☑️机の上を片付けた

☑️いすを机の中にいれた


など、班で互いに確認してから実験を始めるだけでも、安全への意識は大きく変わります。


教師が毎回確認するだけではなく、子どもたち自身が、安全確認を行う習慣をつくることで、「安全はみんなで守るもの」という意識が、育っていきます。

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こちらのチェックシートは当記事からダウンロード可能です

実験中は「危険な行動」より
「安全な行動」を認める

実験中、どうしても目に付くのは危険な行動です。


しかし、安全指導では「できている行動」を積極的に認めることも大切だと考えています。


例えば、

「安全メガネを最後まで着けていたね。」

「班のみんなで声を掛け合って確認できたね。」

「使い終わった薬品をすぐに元の場所へ戻せたね。」


そんな声かけを続けることで安全な行動が学級全体に広がっていきます。


「危ない!」という注意だけではなく、「その行動が安全につながっているよ」という価値付けが、子どもたちの意識を高めます。

教師自身が安全メガネの着用や丁寧な器具扱いのアシスト(手本)になる

子どもたちは教師の姿をよく見ています。


教師が安全メガネを着けずに演示をしたり、薬品を雑に扱ったりすれば、「そのくらい大丈夫なんだ」と受け取ってしまいます。


だからこそ、教師自身が手本となる行動を示すことが重要です。

  • 安全メガネを着用する
  • 薬品は丁寧に扱う
  • 器具は両手で静かに運ぶ

こうした一つ一つの姿勢が、子どもたちへの最も分かりやすい安全指導になります。

まとめ
安全指導は「自他ともに命を守る力」を育む大切な理科の学び

 理科の授業では、実験の結果や考察に目が向きがちです。しかし、安全に実験できることも、理科で身に付ける大切な力の一つです。


「どうすれば安全に実験できるだろう。」

「どんな危険があるだろう。」

「事故を防ぐためには何が必要だろう。」


こうした問いをもち、自分で考えて行動できる子どもは、理科室だけでなく、日常生活でも危険を予測し、安全な判断ができるようになります。


安全教育は、「事故を防ぐための指導」ではありません。

子どもたちが自分自身や仲間の命を守る力を育てる教育です。


教師がすべてを管理するのではなく、子ども自身が安全を理解し、自ら行動できるようになること。


その積み重ねが、安心して学びに向かえる理科室をつくり、子どもたちがより楽しく理科の学習へと向き合うことに繋がるのだと考えています。

先生のプロフィール

大﨑 雄平先生
京都府京都市公立小学校教諭

大﨑 雄平 先生

EDUBASE CREW、ミライシードDXエデュケーター、Canva認定教育アンバサダー、Microsoft認定教育イノベーター、ロイロ認定ティーチャー。SNSでは理科授業に役立つ情報を発信している(@mogurin_rika)。LINEオープンチャット【小学校理科の部屋】の管理人を務め、2026年6月現在、参加者は630名を越える。第7回全小理教材開発コンテスト ケニス賞、ウチダ教材開発コンテスト(2021)奨励賞を受賞。主な著書は『はじめての理科専科』『「困った!」をみんなで解決 理科のお悩み相談室』(共に東洋館出版社)

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