修学旅行準備の進め方は?
事前指導・引率・当日対応のポイントを解説

学校行事
修学旅行準備の進め方は?事前指導・引率・当日対応のポイントを解説

執筆/大阪府公立小学校教諭 松下 隼司先生

に最高の思い出を。その思いが強いほど、修学旅行は悩ましい。


 2学期が始まると、修学旅行の準備や事前指導が本格化します。

「準備することが多すぎる…」

「宿泊を伴う行事だから責任が重くてプレッシャーを感じる」

「子どもたちを安全に引率して無事に帰ってこられるだろうか」


そんな不安や重圧を抱えている先生方も多いのではないでしょうか。修学旅行は、子どもたちにとって小学校生活の中で最も楽しみで、一生の記憶に残る特別な行事です。しかし、それを支える教員にとっては、事前準備から当日の安全管理、夜間の対応に至るまで、極めて負担が大きく気を抜けない行事でもあります。


そこで、事前準備の進め方、子どもたちの主体性を引き出す事前指導、当日のトラブル対応などポイントを整理して紹介いたします。 お読みいただいた後、先生方が見通しを持って、安心して当日を迎えられる一助となれば幸いです。

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小学校の修学旅行準備が大変なのはなぜ?
先生が抱えやすい3つの不安

修学旅行の準備を進める中で、なぜこれほどまでに、精神的・物理的な負担を感じるのでしょうか。先生方には、抱え込みがちな不安が3つあります…。

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宿泊行事だからこその「安全管理と責任の重さ」


日帰りの遠足とは異なり、宿泊行事は24時間体制で子どもたちの命と安全を預かることになります。アレルギー対応、持病や常備薬の確認、入浴や就寝時の安全確保、夜間の急な体調不良…。普段の学校生活とは異なる環境だからこそ「万が一、事故やケガがあったら」という責任の重さが、先生方の肩に大きくのしかかります。

 

保護者対応と膨大な事前業務に追われる日々


修学旅行の準備は、通常の授業や校務と並行して進めなければなりません。班長や入浴係、バスレク係への指導、見学コースやバス座席の調整、しおりの作成、旅行会社との打ち合わせなどに加え、保護者説明会の開催や各種アレルギー・健康調書の回収・確認など、確認事項は多岐にわたります。書類の締め切りに追われ、精神的に余裕をなくしてしまうケースも少なくありません。

 

だ楽しい思い出」で終わらせたくないプレッシャー


楽しかったね」だけで終わらせるのではなく、小学校段階の集大成として「集団行動のマナー」や「公衆道徳」を身につけさせたいという教育的な意図もあります。しかし、「指導を厳しくしすぎると楽しい雰囲気を壊してしまう」「野放しにするとルールが崩壊してしまう」という塩梅の難しさが、担任を悩ませる要因となっています。

成功のカギは事前指導にあり!
修学旅行前に育てておきたい
子どもの力

修学旅行を成功させる最大のカギは、当日の頑張りだけではなく「事前指導」にあります。日帰りの遠足との最大の違いは、子どもたちが自分で判断して動く場面が圧倒的に多いからです。旅先で生きる「自分たちで考えて動く力」をどれだけつけておくかがポイントです。

 

指導の鉄則は「短く・何度も・あっさりと」視覚化すること


宿泊行事での指導項目は、活動班・バス・食事・入浴・部屋・お小遣いなど50項目以上に及ぶこともあります。例えば、「お風呂は、かけ湯をしてから(できたら、体を洗ってから)入る」「おこづかいは、金額を守りましょう」などなど本当にたくさんあります。


そのたくさんの指導項目を口頭だけで説明しても、子どもの記憶には残りにくいです。学校で事前指導したのに、現地で子どもたちが決まりやマナーを守らず叱ってばかりになってしまったこともあります。


そこでおすすめなのが、指導内容をパワーポイント等のスライド資料として「完全視覚化」し、給食の時間や掃除後の時間、休み時間などの時間も使って「自動再生」で繰り返し見せ続ける方法です。下の画像は、私が教室で繰り返し見せているパワーポイントの画像一覧でつくったものです。よろしければダウンロードしてお使いください。

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教師が熱弁を振るわなくても、子どもたちは「短く・何度も・あっさりと」目にすることで、自然とルールを深層意識に定着させられます。そして意識づけられたことを土台に、子どもたちは修学旅行当日に引率教員が見ていない中でも、自分たちで考えて行動するようになります。

 

「しくじりポイント」をユーモアを交えて先回りする


ルールを厳罰として教えるのではなく、「やらかしがちなしくじり」をユーモアを交えてポップに伝えることで、子どもたちの主体的マナー意識が高まります。


たとえば、修学旅行先で発生しがちな「告白問題」があります。フラれた場合の気まずさや班行動への影響を考え、「学習中に、告白は、しません。帰ってしてください。(フラれたら、悲しい修学旅行に…)」とスライドで先回りしておきます。

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また、就寝時刻になって布団に入ってからの「ねえ、寝た?」という呼びかけも「ちょいNGワード:『寝た?』(起こすな!)」とポップに示すことで、子ども同士で「あ、それスライドにあったやつだ!」と楽しく注意し合える空気が生まれます。

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動を機能させる「役割意識」と「時間の逆算」


見学先や買い物では「活動班」、宿泊先では「生活班」があります。その両方の班活動でおすすめの担当が、「カメラ」です。修学旅行には、教職員や管理職の他に「カメラマンさん」が同行しています。カメラマンさんにたくさん写真を撮ってもらうために、カメラ担当の子どもは次の役割をしてもらいます。


①「撮ってください。お願いします」とカメラマンさんに呼びかける。


すぐに撮ってもらえるように、班のメンバーに並んでもらい、笑顔とポーズをしてもらう。 (友達がマスクをしていたら、マスクを外すように声をかける)


写真をとってもらったら、率先して「ありがとうございました」と挨拶する。

 修学旅行シーズン、テーマパークや水族館などでは、他校の子どもが多くいるかと思います。その中で、カメラマンさんからでなく、子どもたちからカメラマンさんにアプローチをとることは、カメラマンさんはもちろん、子どもたちや親御さんにとっても良いことです。大切な思い出の写真を多く撮ってもらえることになるからです。

先生は何を準備すればいい?
下見・持ち物のポイント

当日に教師側が焦らないためには、事前の環境整備と役割分担が、不可欠です。

 

下見(下見調査)で必ず確認したい「お土産ショップ」


お土産ショップを下見する際は、単に「値段や品ぞろえ」を見るだけでなく、子どもの目線に立った「リスク」を確認します。

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お土産ショップに、剣やおみくじ、ルーレット機能が付いたキーホルダーが売られていることがあります。子どもたちに「買ってはいけない」とは言いませんが、「何のためのお小遣い」かを考えさせます。そして、「もし買っても、修学旅行中は遊ばない。かばんから出さない」ことは事前指導しておいた方がいいです。

 

テーマパークや水族館などの施設内に、「ガチャガチャ」があった場合は要チェックです。ガチャガチャの中身が、どこにでもあるような物だったら、お土産にはふさわしくないです。ただ、お土産としてふさわしい物が入っているガチャガチャもあります…。ややこしい場合は、「ガチャガチャはなし」とはっきりさせておいた方がいいです。

 

意外と盲点なのが、施設内の自動販売機や軽食の販売店です。お家の人からお土産代にもらったお小遣いで、「喉が渇いたから」「お腹が減ったから」「美味しそうだから」という誘惑に勝てない子どもがいるかもしれないからです。そして、ジュースやフランクフルトなどを購入して、施設内で飲み食いしてしまうのです…。それと伊勢方面に行く学校の場合は、「赤福」の値段もチェックして、子どもたちに事前に伝えておきます。「赤福は絶対」という家庭が意外と多いからです)

 

日慌てないための「引率グッズ」

バスや電車などの乗り物酔いをする子どもが多いかと思います。養護教諭だけでなく、引率する全教職員が、嘔吐対策グッズを持っておくことをおすすめします。嘔吐してしまった子どもの近くの教職員がすぐに対応できるようにするためです。


嘔吐対策グッズは、

①不透明のビニル袋(4枚ほど)

②ウェットティッシュ

③飴 

です。

 

また、個人情報の管理対策もしておくことをおすすめします。「しおり」を常に手に持って歩いたり、リュックサックから頻繁に出し入れしたりすると、紛失のリスクが高くなります。「しおり」は子どもの名前がたくさん載っています。教員が個人情報が書かれたしおり紛失すれば処分の対象になってしまうかもしれません。私は自分のしおりが見当たらなくて大慌てしてしまったことがあります。(すぐに見つかりましたが…)そこで、次のような対策をしておくことをおすすめします。

 

子どもの名前を黒の油性ペンで少し黒塗りしておく。

(例:「松下」→「松■」)


学校名を黒の油性ペンで黒塗りしておく。自分の名前も書かない。


活動班や生活班やバスの座席表のページなど、個人情報が書かれたページは別冊にしておく。その別冊は、必要でないとき以外、触らないようにしておく。


④行程表の最終案だけをA4~B4の紙1枚に印刷しておき、それを使うことにする。あるいは、個人情報の載っていない最終案を自分のスマホに撮っておき、スマホを見て確認するようにする。

夜の時間こそ要注意!
修学旅行当日のトラブル対応と
見守りのポイント

日中の活動が終わっても、宿泊行事の本番は「入浴から深夜2時ごろにかけて」です…。子どもたちの安全と安心、健康管理のために宿泊行事ならではのトラブルと対応策を押さえておきましょう。

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お風呂でのマナー


大浴場では、「走らない」「体を拭いてから出る」といった基本マナーのほか、「他人の体をじろじろ見ない・からかわない」「体を見せつけない」というプライバシーや人権への配慮も事前に伝えておきます。


「一般のお客さんが、もし偶然入っていなければ好き勝手してもいいか?」というお題で、教室で考えさせておくことも大切です。「だめ」なのですが、大切なのはその理由を突っ込んで考えさせることです。できるだけ多くの考え、できるだけ深い考えを子どもたちから引き出します。そうすることで、引率教職員のいない浴室でも、子どもたち自身が自律・自制することにつながるからです。

 

布団を敷くのは、就寝時間30分前から


宿泊施設の自分たちの部屋には、人数分の布団が置いてあります。最初から敷かれていることはありません。


引率者が何も言わなければ、子どもたちから「先生、布団を敷いていいですか?」という質問があったり、勝手に敷いたりします。そして、発言力のある子どもが真っ先に寝る場所を決めたり、寝る場所を決めることを原因に喧嘩になったりします。無事に敷けたとしても、闘いごっこをしたり、怪我をしたり、枕投げをして部屋の備品が壊れたりします…。何よりも、入浴前の汚い衣服で布団の上に乗るのは、不衛生です。布団を早く敷かせていいことは何もありません。


そこで、布団を敷くのは、「就寝準備の時刻になってから」とはっきりと子どもたちに伝えておきます。就寝時刻が22時の場合、就寝準備は21時半からというのが多いかと思います。

 

体調不良・悪天候への備え


子どもが、バスなどの乗り物酔いで嘔吐してしまうことは、仕方がないことです。ただ、嘔吐の仕方を事前に一言、「上手に、もどして(吐いて)ね。」伝えておくことだけで、子どもたちの行動が大きく変わってきます。下手なもどし方(吐き方)だと、自分の服や席、隣の席の友達の服まで汚してしまいます。原因は嘔吐用のビニル袋を、ズボンや上着のポケットや前の座席のポケットに入れておかないからです。それと必要以上に我慢しすぎてしまうからです。早めにもどした方がすっきりしますし、汚れません。こういったことを教室でシミュレーションしておきます。

 

同じように、悪天候も早めにシミュレーションしておくこともおすすめします。週間天気予報が出る前に、「もし、当日が雨だったらどうやって楽しむ?」と全体や活動班で話し合わせておきます。「楽しむ」ことが前提で、です。シミュレーションしておけば、当日、雨の予報が出たとしてもショックは少ないです。シミュレーションしておかなければ、「うわ~最悪や~」と悲観的なことを言う子どもたちが出ます。その子どもたちのネガティブ発言にクラスや学年全体が引っ張られてしまうこともあります。

修学旅行は“思い出づくり”と
“成長”を支える先生のチーム戦

修学旅行は、準備項目が多く責任も重いため、先生方にとっては大きなプレッシャーを感じる行事です。しかし同時に、普段の学校生活では見られない子どもたちの輝く笑顔や、友達と協力してトラブルを乗り越えるたくましい姿に触れられる、かけがえのない機会でもあります。


事前指導を仕組み化し、学年全体で臨むことができれば、先生自身の負担は大きく減り、子どもたちの「自分で考えて動く力」を飛躍的に伸ばすことができます。


修学旅行という大きな経験を経て、一回りも二回りも成長した子どもたちとともに、最高の達成感を味わっていただけることを、心から応援しています。

先生のプロフィール

松下 隼司先生
大阪府公立小学校教諭

松下 隼司 先生

1978年愛媛県生まれ。奈良教育大学卒業。大阪府公立小学校教諭。2児の父親。

NPOみおつくし教育ネット。コンチャン劇団。

教育書『先生を続けるための「演じる」仕事術』『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』、絵本『がっこうとコロナ』『せんせいって』『ぼく、わたしのトリセツ』。連載「AERA Kids+」など。教科書編集員。

第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回読売教育賞優秀賞、日本最古の神社である大神神社の第17回短歌際で額田王賞など受賞。

テレビ出演「ABEMA Prime」「報道特集」など。Voicyパーソナリティ。

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