eポートフォリオを活用した自己評価とフィードバック
運動有能感を高める授業づくり
山下先生から一言:
運動に親しみ、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成するために、運動有能感を高める体育科の学習の在り方を考えました。音声や動画の共有がしやすいオクリンクを活用し、自己評価とフィードバックに重点をおいた授業づくりを行いました。
活用場面・活用背景
運動有能感を高め、より運動に親しむ
「令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」(2021)において、運動やスポーツをすることが「好き」「やや好き」と答えた児童は平成25年度に次いで低く、全国的に運動に親しむ児童が減少しています。運動やスポーツに親しむには、運動場面における自信である運動有能感を高めることが有効であることが報告されています。運動有能感を高めるために、eポートフォリオを活用して自己評価とフィードバックを行いました。
How to
eポートフォリオを活用した自己評価とフィードバック
① 自己評価カードを準備、配信
授業準備として自己評価カードを作成し、児童に配信しておきます。今回は、お手本の写真をカードに貼り付け、自分の泳ぎの動画と比較し◎〇△の3段階で評価を入力するカードを作成しました。また、フィードバックを送り合う「バディ」を決め、2人1組で活動します。
② 自身の泳ぎを動画で撮影し、自己評価カードを記入
先生が子どもの端末で、オクリンクのビデオ機能を用いて児童の泳ぎを撮影します。児童は自分の泳ぎの動画と、手本となる写真を比べながら自己評価を行います。
※水泳以外の授業では子ども同士で動画撮影を行っています。
自己評価カード
③ 仲間からフィードバックをもらう
自己評価カードが記入できたらタブレットを仲間(バディ)に渡し、フィードバックをもらいます。バディはオクリンクの音声入力機能で、よい点や改善点を録音し、カードに張り付けます。バディからのフィードバックをもらったら、カードを「提出BOX」に送ります。
バディのフィードバック(音声)が張り付けられた自己評価カード
ここまでの工程を毎時間行います。先生の毎回の授業準備は以下です。
(1)前回実施した授業の時間割の右上の「…」から「移動する」を選択し、これから実施する時間帯に移動します。
時間割の移動の仕方(画像はイメージです)
(2)毎時間、提出BOXを変えてeポートフォリオを蓄積するために、提出BOX内に授業を実施する日付を追加して受付中に設定します。
提出BOXを授業ごとに分けます(画像はイメージです)
④ 先生からフィードバックをもらう
先生は、提出BOXのカードを見て、フィードバックを記載したカードを児童一人ひとりに送ります。(2時間に1回のペースで実施)
※こちらのオクリンク操作は「任意の人にカードを送る方法(こちら)」をご参考ください。
先生からのフィードバックカード
⑤ eポートフォリオ検討会の実施
単元の途中では帯タイムなどを利用してポートフォリオ検討会を行い、これまで撮影した動画を見比べることで自己評価をさせます。作成してきた自己評価カードをつなげて、これまでに上達したところと、できるようになりたいこと、そのために行う活動をカードに記入します。(第5時と第8時終了後に実施)
ポートフォリオ検討会で作成したカード
⑥ 保護者からフィードバックをもらう
児童にタブレット端末を持ち帰らせ、eポートフォリオ検討会で作成した一連のカードを保護者に見てもらいます。保護者には、称賛やアドバイスを中心としたフィードバックをオクリンクのカードに記入いただくよう依頼します。(第5時と第8時のeポートフォリオ検討会後に実施)
保護者からのフィードバックカード
取り組みの結果
運動有能感の向上につながった
単元終了後の調査で、運動有能感が高まったことがわかりました。また、多くの児童が、泳げる距離が長くなり、水泳運動を楽しむ様子が見られました。子どもにとって自分の泳ぐ姿を自分で見て、できているところや課題となるところなどが見える化したり、教師や友達に加え、保護者の方にもフィードバックをもらったりしたことが、技能の向上や自信につながったのだと感じています。
さらに、興味深いことに、それぞれのフィードバックのうち、最も「役に立った」「わかりやすかった」と回答したのは教師からのフィードバックで、最も「やる気になった」「うれしかった」と回答したのは保護者からのフィードバックでした。また、仲間(バディ)からのフィードバックは全ての項目で全体的に高い回答率でした。これらの結果から、それぞれのフィードバックは児童にとって異なる効果があり、特に保護者からのフィードバックは回数が少なかったにもかかわらず、運動有能感を高めるのに有効であることが考えられます。
このように、eポートフォリオを活用した自己評価や多様な他者からのフィードバックによって、児童の主体的な課題解決を促し、技能の向上だけでなく、運動有能感の向上にもつながりました。