ジグソー型の意見交流で口語訳を練り上げ、カードを並べて整理する
島崎藤村 『初恋』

福住先生から一言:
今回はジグソー学習を用いて、自班だけでなく、同じ連を担当する生徒同士でも意見交流をしました。たくさんの友達とアイデアを交わし、自分の意見をブラッシュアップするためのヒントを多く得られたことが、解答への自信につながったと思います。
活用場面・活用背景
協働的な学びのなかで正しい口語訳を見出し、詩から感動を味わう
島崎藤村の『初恋』について、「初恋が実ったのか、そうでないのか、なぜそう考えるのか」という課題を与え、読み解いていく授業です。ポイントは、Web検索をしないこと。本時では、協働的な学びのなかで正しい口語訳を見出し、感動を味わってもらうことを目的としています。
How to
自班と担当する連のグループでジグソー的に意見を交わし、口語訳を練り上げる
教員はあらかじめ、班の数分ボードを作成する。各班のボード上には、連が書かれた画像と名前の記入欄を設けたカードを、第一連から第四連の4枚分用意。

生徒は4人の班に分かれ、誰がどの連を担当するか決めたら、各自で口語訳をする。このとき、教員は古語辞典を教室前方に用意し、必要に応じて使うよう促す。
班内で、それぞれが担当した口語訳を共有し、解説し合ったうえで、詩全体の口語訳を暫定的に完成させる。このとき、4枚のカードは第一連から順につなぎ合わせておく。生徒はボードを移動しながら、ほかの班で同じ連を担当した友達の訳を確認する。その後、自班を越えて同じ連を担当した生徒同士で集まって、意見交換をする。
生徒は自班に戻り、新しく得た気づきや情報を班内で共有しながら、詩全体の口語訳をブラッシュアップ。完成した現代語訳を受けて、本時の課題「初恋が実ったのか、そうでないのか、なぜそう考えるのか」について議論する。
教員は、ピンクのカードと青のカードを各班のボードに送信。子どもたちは班ごとに、「初恋が実った」と考える場合はピンクのカード、「初恋が実らなかった」と考える場合は青のカードに、そう考えた理由を共同編集でテキスト入力していく。書き終わったら、先ほど完成させた4枚のカードの先頭につなぎ合わせ、班ごとに「提出BOX」に提出する。


授業の最後には、教員が「詩」というボードに、詩全体を掲載したカードを作成。生徒たちはそれぞれ、その1枚のカード上で、訳すうえで意味の取りづらかった文や語に線を引いていく。これが、次時の「初恋が実っていると、わかる部分はどこだろう」という課題への伏線となる。本時の場合、第三連と第四連に難しさがあるとわかった。

取り組みの結果
先入観にとらわれず、「言葉にこだわって」読み解く。協働的に、根拠をもって話し合いながら、作者の思いを正しく解釈する
授業中は、身近なテーマということもあり、生徒の積極的な発言が目立ちました。一般的によく言われる、「初恋は実らない」という先入観にぴっぱられずに、「言葉にこだわる」ことで、読むよう指導しました。 次時で、さらに詩の意味や言葉にこめられた作者の思いを感じ取ることができました。単元について振り返りをしてもらうと、多くの生徒が作者の思いに共感していました。また、約130年前と現在で、恋愛観がそれほど変わらないことに気づいたこと、「君」もまた藤村への思いを解釈できた感動を味わえたことは、教員としても手応えを感じる瞬間でした。
▼動画でも実践の様子をご確認頂けます。
