公開授業

富士見市立針ケ谷小学校に密着!学年を超えて実践する「自ら学びをデザインする力」の育み方

生涯にわたって学び続ける力を、子どもたちにどう身につけてもらうか。先日、日常的にICT活用が進む富士見市立針ケ谷小学校で開催された公開授業では、そのための明確なビジョンと具体的な実践が示されました。公開授業の冒頭、校長先生は「ICTはあくまで手段の一つ。大切なのは、子どもたちが自ら学びをデザインし、情報を取捨選択する力を育むことです」と発信されました。実際に学年や教科の異なる3つの授業では、子どもたちが主役となって学びを創り出す姿がありました。本レポートでは、その模様をお届けします。




実践レポート① 馬場先生・2年算数「時計とタブレットで計画づくり! "未来の時間"をデザインする子どもたち」
馬場先生が2年生と取り組むのは、「町探検」をテーマにした算数の授業です。黒板にはアナログの大きな時計。そして、子どもたちの手元にはタブレットが1台ずつあります。 「これから、自分だけの町探検計画を立ててみよう!」 先生がオクリンクプラスで「場所と見学時間」「歩く時間」と書かれたカードを送ると、子どもたちは慣れた手つきでカードを動かし始めます。アナログ時計の針を自分で進めて時間を確認しながら、タブレット上で計画を組み立てていきます。デジタルとアナログがごく自然に融合した学びの風景です。




「不安な人は時計を動かしながらやってみようね」「早くできた人は、もう一つ別の計画を作ってみてごらん」。先生は一人ひとりの進捗に合わせて優しく声をかけ、子どもたちの思考を後押しします。
授業の後半は発表の時間。数名の児童が前に出て、自分の立てた計画を発表します。オクリンクプラスでその児童のカードを電子黒板に画面共有し、みんなで時計の針を動かしながら「この計画なら、時間内に探検できるかな?」と一緒に確認。クラス全体が、友だちの思考を追体験する時間となっていました。
授業の最後は、「みんボ」の愛称で親しまれているオクリンクプラスのみんなのボードで振り返りを記入。そこには、子どもたちの試行錯誤の跡と、計画が完成した達成感が詰まっていました。




実践レポート② 鈴木先生・2年道徳「みんなの"本音"が見える教室 ~意見の可視化が引き出す学び合い~」
「ゲームと勉強、どっちの時間を長くしたい?」。鈴木先生がそう2年生に問いかけたのは、子どもたちの本音に迫る道徳の授業です。「あさもひるもよるもあそびたい」という教材を素材に、規則正しい生活について考えます。
先生が「オクリンクプラスで送ってね」と声をかけると、子どもたちの意見がリアルタイムで集約され、瞬時に色分けされたグラフとして画面に映し出されました。クラス全体の意見が可視化されると、「えー!そっちが多いんだ!」と子どもたちから自然と声が上がります。




鈴木先生は、なぜその意見を選んだのかをオープンな質問で一人ひとりに優しく深掘りしていきます。言葉がうまく出にくい子には、質問をより平易な言葉に言い換えるなど、個々に合わせた丁寧な投げかけが印象的でした。
この授業のハイライトは、ある児童が考え込んでいた時のこと。先生が「自分の意見が思いつかなかったら、他の人の意見を見てみよう」と呼びかけると、筆が止まっていたその子が、オクリンクプラスに表示された友だちの意見をじっと見つめ、やがて自分の言葉で書き始めたのです。自分から意見を出すのが難しい子でも、まずは他者の意見を参考にしながら自分の思考を形成していく。ICTツールが、学びの貴重な第一歩を支えていました。




実践レポート③ 川畑先生・6年社会「君たちはどう調べる? "文房具"としてのICTと探究する学び」
6年生の社会科、テーマは「天皇中心の国づくり」。歴史の学習が始まってまだ間もない子どもたちに、川畑先生は授業のゴールをこう伝えます。 「自分がわかるためのまとめじゃないよ。他の友だちが理解できるように説明することを意識してまとめてみよう」
その言葉を合図に、子どもたちの主体的な学びが始まりました。教科書や資料集を広げる子、配付された動画を視聴する子、そしてオクリンクプラスに情報を整理していく子。調べ方やまとめ方は、すべて子どもたち自身が選択・決定します。友だちに自分が調べたことを熱心に教える子がいる一方、会話は少なく、OSの協働編集ツールで黙々と共同作業を進めるグループもあるなど、学び合いの形も様々です。 この教室で、オクリンクプラスは特別なツールではありません。子どもたちがノートや鉛筆と同じ感覚で当たり前に使いこなす「文房具の一つ」として、40分以上にわたり、子どもたちの思考を支え続けていました。




授業の中盤、先生は全体に問いを投げかけます。「留学生や留学僧って、なんで来たんだろう?」「中大兄皇子と中臣鎌足は、なんで蘇我氏を滅ぼしたの?」――その「なんで?」という問いが、子どもたちの探究心に火をつけました。友だち同士で「どうやって協力したんだろう?」と教え合う場面では、教わっている子がオクリンクプラスにすごい勢いでメモを取る姿も。問いが学びを深め、学びがまた新たな問いを生む。そんな知的好奇心の連鎖が、教室中に広がっていました。




【授業を終えて見えてきたもの ~先生方の声から紐解くミライシードの価値~】
今回の3つの授業は、参加した先生方にも大きな示唆を与えました。アンケートに寄せられた声から、それぞれの実践とミライシードが持つ価値を読み解きます。

▼馬場先生の実践:「アナログとデジタルの融合」が育む思考力
具体的な操作(時計の針を動かす)と、抽象的な思考(計画を立てる)をオクリンクプラスで行き来させることで、低学年の子どもたちにとって難しい「時間の見積もり」という概念の理解を助けます。ミライシードは既存の教材や教具と対立するのではなく、それらの価値をさらに引き出す「架け橋」としての役割を担っていました。

▼鈴木先生の実践:「意見の可視化」が生む心理的安全性
オクリンクプラスが意見表明のハードルを下げ、子どもたちの本音を引き出す様子を見せてくれました。考えがまとまらない子も、画面に映し出された友だちの意見を見ることで安心して自分の考えを整理できる。「わからない」から始まり、他者と関わる中で思考を形成していく。ミライシードは、誰もが安心して学べる「心理的安全性」の高い学びの場を創出していました。

▼川畑先生の実践:一人ひとりの活動を支える探究の土台
子どもたちが学び方やツールを自己選択する中で、ミライシードは思考を整理するノートであり、友人と共同編集する作業台にもなります。重要なのは、ミライシードが学習の中心なのではなく、あくまで子どもたちの「探究」という目的を達成するための柔軟な道具の一つであった点です。まさしく校長先生の言葉通り、子どもたちが学びを自らデザインするための土台として機能していました。

 富士見市立針ケ谷小学校の3つの授業に共通していたのは、先生が教え込むのではなく、子どもたちが自ら考え、選び、創り出す「主役」であったことです。時計と組み合わせることで計画力を育み、意見を可視化することで学び合いを促し、多様な学びの選択肢の一つとして探究を支える。ミライシードは、先生方の「子どもたちに生涯学び続ける力を」という願いを、学年や教科の壁を越えて実現する強力なパートナーであることを改めて示す一日となりました。