「あれやりたい」「これやりたい」
子どもがすすんで話してくれます。

——東京都 練馬区立大泉第四小学校

教育DXストーリー

活用を深められたのは、みんなで動いたから
子どもの“楽しい”を引き出す授業とチームづくり

練馬区立大泉第四小学校では、教務主幹の内海 孝亮先生が中心となり、髙橋 佳子先生(推進主任)、荒木 哲郎先生(推進リーダー)、壬生 修二先生、橋本 直志先生(研究主幹)、田口 颯也香先生の6名が、学校全体のDX化を進めています。「絶対、このメンバーだから取り組みを進められた」と話すほど、結束の強いチームの絆。どのようなことを大事にされながらチームとして動いているのか、また活用が深まった今どのような授業を行っているのか、6名の先生方に伺いました。

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学校全体の活用を牽引する「チーム」のあり方

内海先生
本校のICT推進は、私を含めた次の6人が中心となって学校組織全体で取り組んでいます。まずチーム全体の総括を行う、教務主幹としての私。次に研修や情報共有など、校務を含めたICTの活用全般を検討する推進主任の高橋先生、推進リーダーの荒木先生、壬生先生。最後に、特に授業での効果的な活用法を検討する研究主幹の橋本先生と1学期に研究授業を実践した田口先生です。

高橋先生 
昨年までは私が推進リーダーという形を取っていたのですが、今は荒木先生に引き継いでもらって、私は推進主任として、ICTの活用全般のスキルアップを促しています。

荒木先生 
今は研修の体制づくりに力を入れていて、どうすればもっと多くの情報をほかの先生方に還元できるかを考えています。壬生先生もサポートに入って、気づいたことをどんどん伝えてもらいながら、一緒に取り組んでいます。

内海先生
チームとしては、校務の改善、授業の推進、端末の管理の3つが主な役割です。端末の管理は高橋先生、荒木先生、壬生先生の3人が進んで取り組んでくれています。それから高橋先生が中心になって、校内の実践例を集めた冊子もつくっていますね。


左から、荒木先生、壬生先生、田口先生、内海先生、高橋先生、橋本先生。

——いつ頃から、このチームで動き出されたのですか。
内海先生
ICTの活用自体は、前校長のときから始めていました。そのときはまだとりあえずやってみようという程度でした。それから今の校長が赴任されて、私も教務主幹となり、ICTの活用をもっと組織的に深めていきたいなと思って、学校運営組織の働きかけをしました。
もともとコツコツと職員会議や夕会ではICTを活用する考えを共有していたんです。だから、最初からみんなが同じ方向を向いて動けました。すでに校内では、ICTの活用がかなり深まっています。練馬区の支援や、支援員さんのサポートもありましたが、一番大きな要因はこのメンバーでチームとして動けたからでしょう。このメンバーだからICTの活用を進められたのだと私は確信しています。

——チームとして大事にされていることはなんでしょうか?
内海先生:
課題の共有ですね。学校現場は、課題を共有する意識が意外と薄いんです。それでみんなのパワーバランスが崩れたり、勝手に動こうとしたりしてしまう。それからいわゆる「氷山モデル」の上の部分の「できごと」だけを見て議論しがちなんですね。なので、できごとだけを見て議論するのをやめて、きちんと根本の課題は何かを考え、共有して、解決方法を考えていく。「ポリシーメイキング」という考え方ですが、この考えに則って、チームがまとまって動くことを重視しています。

橋本先生
例えば今運動会の準備をしていますが、それもああしたらいい、こうしたらいいというやり方の部分の意見は、先生方一人ひとりが持っているんですね。授業も同じです。先生方は自分の授業の方法に当然意見やこだわりを持っています。その意見だけをぶつけ合っても、すり合わせが難しい。だから根本的な課題、たどり着きたいゴールはなんなのかを、まずみんなで共有するんです

内海先生:
課題の共有はICTをどんどん使います。例えば授業研究の終わりには、ムーブノートでお互いの振り返りを共有しました。

高橋先生
それから学校全体でチャットルームも立ち上げて 、気づいたことを書き込んでもらっています。これまでは年度末に慌てていろいろ共有することが多かったのですが、先生方が気づいたタイミングで都度書き込んでくれるようになってから、校務全般がスムーズに進むようになりました

内海先生
紙や口頭で共有するのと違って、ICTで共有すると記録や意識に残りやすいんです。それにわざわざ面と向かって伝えなくてもよくて、教室からでもさっと共有できる。回覧する必要も、時間も場所も縛りがありません
小さな積み重ねですが、こうした形で課題を共有するようになってから、多くの先生方がICTに慣れてくれて、最近は職員会議で「共有」というワードがどんどん見られるようになっています

内海先生は教務主幹として、組織づくりについて熱心に勉強されている。ポリシーメイキングの考えもその一つ。

子ども同士の承認を軸に、学習意欲を深化させる

——授業ではどのようにICTを活用されていますか。
田口先生
5年生の国語の授業で、オクリンクとムーブノートを活用した授業を行ったので、その授業を例に紹介します。
この授業の単元のねらいは「読書の楽しみを広げよう」。オクリンクで「〇〇という小説の魅力を紹介しよう」というワークシートをつくり、子どもたちに読書をしてもらったうえで、ワークシートを埋めて友だち同士で見せ合ってもらいました。それから、ムーブノートのスタンプ機能を活用し、「好き」「おもしろい」「なぜ」「また読みたい」の四象限で、児童たちの感想を集計して公開しました。

ムーブノートで簡単なシンキングツールをつくり、児童の感想を4つのカテゴリに分類した様子。

児童にワークシートを書いてもらうときは、先に教員が書いたワークシートの例を公開して、そのワークシートをリライトしてもらいました。見本を見せたことで、「自分たちも同じようにお話の魅力を紹介したい」という気持ちが高まっていましたし、少しでも見本に近いものをつくろうと色やレイアウトなど、見せ方にもこだわっている児童が多くいました。

 

見本となるワークシート。このワークシートをリライトする形で、児童も感想を書く。

田口先生
児童たちの感想を集計したねらいは2つあります。一つは、児童たちに自分の感想をメタ認知してもらうため。もう一つは、教員が返しの質問をしやすくするためです。集計結果を見れば、「おもしろいって感想が多いみたいだけど、なぜのところも考えられるといいよね」と、児童の考えをより広げるための質問がしやすくなります。

それから、学習の途中、ムーブノートで2回文章の感想を書いてもらいました。そして、その感想を一緒にグループ学習した友だちや、オクリンクのカードを読んでくれた友だちに、「ファンレター」として送ってもらいました

児童が互いに送り合った「ファンレター」。自分宛て以外のファンレターも確認できる。

田口先生:
学習の振り返りをノートのみで行うと、普通は自分の感想しか分かりません。しかし、ムーブノートを使えば、友だちの感想を見ることができたり、自分に宛てた感想も見ることができます。

内海先生
振り返りも一人で行うより、人から評価される、つまり承認されるほうが意欲を高めやすく、考えも深めやすい。そういった点で、簡単に共有や伝え合いができるムーブノートはやっぱり強いですね

田口先生:
オクリンクも、もちろんよいところがあります。特に、友だちがやっていることが見える点はオクリンクならではの魅力でしょう。いつも一人で取り組むときは書き方に迷ってしまう子も、友だちからヒントを得られるから、文章を書くことの抵抗が減ります。紙と違って、間違えたと思ったらすぐに書き直せますし。
実際、授業のあとに児童に感想を聞いてみたら、いつも本を読まない子が「すごく楽しかった!」「もっと本を読んでみたくなった!」と話していました。「読書を広げる」という単元のねらいから考えると、十分な成果だと思います。

子どもの「楽しい!」が、次の授業づくりの原動力に

——ICTを活用した授業を続けて、子どもたちの様子は変わりましたか。
橋本先生
授業中に、児童から「あれやりたい」「これやりたい」と、過去に行った実践をやりたがることが増えましたね

田口先生
私も橋本先生がお話した通り、子どもの「楽しい!」を引き出す授業がつくれるようになってきたなと感じます。授業の内容をどんどんブラッシュアップできるので、私自身、授業づくりが楽しくなっていますね。

――お話を伺っていて、チームの先生方がとても意欲的で、主体的に行動されているから、活用が進んだのだと感じました。先生方はなにをモチベーションに、ここまで意欲的になれているのでしょうか。

荒木先生
一つ言えるのは、高橋先生がすごくリーダーシップを発揮されて、みんなが動きやすいように環境を整えてくれていることですね。しっかりフォローアップしてくれるから、自分も頑張ろうと思えるところがあります。

壬生先生
マニュアルをはじめ、必要なものをいつも用意してくれていますよね。チームの中で、一人でも環境を整える役割をしてくれる人がいるから、みんな動き出しやすいんだと思います。

内海先生
高橋先生にはいつも助けられています。それから私は他校のある先生が話されていた、「20年先の教育を見据えて、今動いていく」という言葉がすごく心に残っていて。学校現場のDX化を頑張ろうと思う動機ですね。結局、ICTの活用は、これからの子どもたちにとって当たり前に必要なものであって、待ったなしなんですよね。だから毎回同じことをやればいいとも思わないし、よりよいものをつくっていかないと、といつも気を引き締めています。

――ICTの活用について、今後の展望をお聞かせください。
内海先生:
すでに端末の活用は十分進んでいて、子どもも当たり前に使う文房具になってきた達成感があります。ですので、今後はなにを、どこまでICTで行うのか、また考えていく必要があるでしょう。当然ながら、アナログな学習や校務のやり方にもよさがあります。大きな問いになってしまいますが、新しい学校の形を、みんなで考えていければと思います。

取材の最後まで、先生方は和気あいあいと、楽しそうにお話してくれた。

【編集後記】

取材を始めてすぐに感じたのが、このチームの結束の強さ。一人の先生が話し出すと、ほかの先生もどんどん話に乗って、相槌もたくさん打ち、和気あいあいとお話してくれました。初めてお会いした私でもすぐにわかる、風通しのよさや仲のよさが、チームとして動くうえでの堅い基盤になっているのだろうと感じました。

撮影/株式会社 デザインオフィス・キャン 加藤武
取材・文/株式会社オンソノ 鈴木康介

※取材の内容は2023年10月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。

■学校プロフィール
所在地:東京都練馬区
学校名:練馬区立大泉第四小学校
児童数:545人
1クラスの人数:28人〜35人
特色:東京都の公立小学校。練馬区の教育目標「より子どもたちが学ぶ喜び、分かる喜びを実感できるようICT教育を進める」を受けて、研究主題「ICTを活用した主体的・対話的で深い学びを目指した授業づくり」を設定。6名のメンバーを中心に、学びのICT化、学校全体のDX化に取り組んでいる。
  • 小学校
  • 公立
  • 主体的・対話的で深い学び
  • 協働的な学び
  • オクリンク
  • ムーブノート

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