「どうすればできるか」を考えて実践。やってダメなら改善。
教師のそんな姿が生徒にもいい影響を与えています。

——茨城県茨城町立 明光中学校

教育DXストーリー

教師も学び合い全9教科でICT活用を促進
成功の秘訣は習熟度別研修や教科主任との連携

茨城町立明光中学校では、研究研修主任、ICTメンター(ICTツールの初期設定や操作方法の校内周知など)、全9教科の各教科主任が密に連携し、教員の習熟度別のICT研修や、参考資料の共有なども積極的に行い、全教科でICT活用を推進してきました。そしてそのチャレンジが生徒たちにもいい影響を与えているといいます。校長の尾花 淳先生、福住里絵先生(研究研修主任、国語)、小野寺雅之先生(ICTメンター、情報教育主任)、町井雄亮先生(ICTメンター、理科主任)にお話をうかがいました。

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習熟度別で教員のニーズに合うICT研修を用意

尾花校長先生:
本校の教育目標は「自立する生徒の育成」です。自己決定して実践できる生徒を育てたいと考えています。そのためには、教員が受け身ではうまくいきません。「先生方自身もぜひ、主体的・対話的で深い学びを実践してください」と日頃からお願いしています。
 
コロナ禍には休校をはじめ、制限される部分が多くありましたが、第一に考えるべきは生徒たちの学びの保障です。そのために必要な新しい取り組みはどんどんやらせてあげたい。教員はみんなとても前向きで、ICT活用に関しても「どうすればできるか考えよう」「とにかくやってみよう」という姿勢で積極的に取り組んでくれました。


「本校には、モチベーションの高い教員が集まっています。私が後からついていくような形ですね(笑)」と話す尾花校長先生。

——研修もかなり充実していたようですね。

尾花校長先生:
教員の研修は、研究主任の福住先生とベネッセのICT支援員の八戸さんが中心になって組み立ててくださいました。習熟度別に研修を分け、ICT対面研修、オンライン研修のどちらもあり、教員のニーズに合うものを選べるようになっていました。
 
その結果、全9教科でICT活用が進みました。ポイントは、教員の若さだったと思います。20代、30代の教員が多く、いい意味で頑固さやこだわりがない。新しいこと、新しいやり方に柔軟にチャレンジできる。そしてベテランの先生は、若い先生の提案にNOと言うことはなく、どうすればできるかを一緒に考えてくれました。


全教科の先生が自身のICT習熟度別に研修を選ぶことができる。参考資料などもすべてオンラインで共有していた。

尾花校長先生
今では、一方的に先生が生徒たちに話し、生徒たちが板書をひたすらノートに写すというような授業は、ほぼありません。テーマを持って周りの友達と相談したり、オクリンクで意見を交換したりしながらメリハリのある授業をしています。
 
また、総合的な学習でもタブレットが活用されています。昨年度は2年生がコロナ禍で職場体験学習が難しかったため、地域の多様な職場に取材して「茨城町仕事人図鑑」という冊子にまとめました。タブレットを持って取材に行き、写真を撮影したり、オンライン通話でつないでお話をうかがったりしていました。職業体験はできませんでしたが地域に根ざした企業を深く知ることができ、教員にとってもよい機会になったと思います。

オクリンクの活用で授業への取り組みも意欲的に


——授業では実際にはどのように活用しましたか。

福住先生(国語):
国語は本当にICTと相性がいいと感じています。単元のまとめや感想は、ほぼオクリンクで共有していました。教員はクラス全員の意見をきちんと確認できますし、生徒同士も授業時間内に見合うことができるので、テンポよく授業を進行することができます。個人で取り組んだ課題も、グッドモデルを簡単に共有できます。その効果だと思うのですが、記述式問題に意欲的に取り組む生徒の割合がかなり増えました。


5つの論語から一つを選び、その意味と、自分の体験談を書いて発表する。カードの色分けでどの論語を選択したかが一目瞭然となった。


「読書案内 私のおすすめの本」の授業では、グッドモデルをプリントアウトして、図書館のPOPとしても使用。

福住先生:
「初恋」(島崎藤村)の学習では、カードの連結や切り離し、送り合い機能を使いながら学習を進めました。この時間の課題は、「藤村の初恋は実ったか、実らなかったか」。四連構成の詩を4人1組のクループで分担し、現代語訳をして、他のグループと意見交換をしながら自分の訳を推敲しました。
 
生徒は自分たちで一生懸命吟味して答えを出したので、「初恋は実ったか、実らなかったか」の答え合わせのときには、教室はかなり盛り上がりました。



実ったと思うグループは赤のカード、実らなかったと思ったら青のカードを作成し、それぞれに根拠を書いて提出BOXに提出。

町井先生(理科)
理科では、大きく3つよい点があると思っています。1つ目は、実験などの説明を視覚的に見せることができる。2つ目に、意見を共有できるので、全員が自分の考えを表明しますから受け身ではいられず、話し合いも積極的になります。3つ目に実験結果の比較がしやすいことです。

小野寺先生(社会)
社会では、最初少し全体で授業をした後、その日の単元を生徒がそれぞれシートにまとめる時間を長く取るようにしています。最初の頃は教科書から文章を写すだけだった生徒も、工夫してよりいいものを作りたくなるのでしょう。インターネットから画像を持ってきて貼り付けたり、自分で写真を撮って画像を入れたり——楽しそうですよね。作業効率も上がるので話し合う時間も増えました。


小野寺先生の社会の授業では、各自でまとめる時間は長めにとり、個人で自由に進める。まとめたシートを共有し、話し合う時間も十分に確保。

——全教科でICT化を進めるのは難しかったのでは。

福住先生
導入当初はできる人が使うという状態でしたので、一部の先生同士での教え合いに留まっていたのですが、昨年度は研修をたくさん組んだことがとてもよかったと思います。ミライシードの理解や活用の習熟度別に初級、中級、上級とレベルを分け、初級はICT支援員の八戸さんに1対1で丁寧に教えていただき、中級は私が担当、上級はベネッセの社員の田中さんにオンラインで教えていただきました。
 
また、私やICTメンターの小野寺先生、町井先生だけではなく、教科部員会の教科主任との連携が大きかったですね。教科主任会で「助けてください」とお願いして、それぞれの教科の特性を教えていただき、意見を出し合いながら進めていきました。
 

写真左から町井先生、福住先生、小野寺先生。「町井先生は私が新任の時の教え子なんです。今も昔も、私が頼りっぱなしです」と福住先生。

福住先生:
他にも、単元末テストを導入して手作りの定期テストの回数を4回から2回に減らしました。単元末テストは教科により異なりますが年間6〜13回程度です。自動採点システムを活用することで採点業務や分析にかかる時間が7〜8時間から3時間49分の約半分になりました。

——生徒たちの反応はいかがでしたか?

福住先生:
抽出クラス30名にアンケートを取ると、ICTを活用した授業は生徒にとって「わかりやすい」ものになっていることがわかりました。また、ためになっているアプリを問うと、オクリンクが多く挙げられました。意見や作文などを共有できることによさを感じているようです。これからも自信を持って活用していきたいと思います。


「あまり変わらない」という回答の理由には、タブレット動作の不具合や管理ができていないことが挙げられた。


さまざまなアプリの中でもオクリンクを活用した授業がためになっていると感じている生徒が多い。

教員のチャレンジが生徒たちのチャレンジにつながる


尾花校長先生
福住先生は、「こういう状況なのでこういうことが必要です。その結果、このように成果が上がったので、もう一歩進めていきましょう」などと、具体的な場面や数値を見せながら提示してくれます。そうすると大変説得力があるので、他の教員も、「よし、またやってみよう」と、さらにプラスに動き出します。もちろんうまくいかないことも多々ありますが、それは決してマイナスなことではありません。やってみてダメなら改善すればいいのです。
 
生徒たちは、そうした先生たちのチャレンジを見ていますから、チャレンジが怖くなくなっていると思います。先日も生徒会の子たちが新入生歓迎会をすべて運営しました。多少失敗もありましたが、生徒たちがいい関係性の中でフォローし合っている様子が見られました。先生たちもそんな生徒たちを温かく見守ってくれていました。

——今後の目標は。

尾花校長先生:
ICTによって効率化が進めば、本来、教師としてやらなければいけないことや、生徒たちが学ばなければいけないことに注力できるようになります。これからは、学びのDXに向けてもう一歩進めていきたいですね。
 
よく、「先生はファシリテーター」となるのが理想だといわれます。台本に沿って進んでいく授業ではなく、生徒たちが授業のねらいや流れを把握したうえで、見通しを持って自分たちの手で授業を進めるところまで持っていきたい。もう少しでできそうだと思っていますし、本校の先生たちなら十分に実現できる力を持っている。心から期待しています。

【編集後記】

東日本大震災前に建てられた校舎は、全体的に明るくオープンで、教室には廊下側の壁もありません。「穏やかな子が多くとても落ち着いています」と尾花校長先生。普段から先生同士も活発にコミュニケーションをとっているそうです。校長室の1面は大きな窓で、その前をニコニコと手を振りながら通り過ぎていく生徒たちの姿が印象的でした。

撮影/株式会社 デザインオフィス・キャン 加藤武 取材・文/太田美由紀

※取材の内容は2023年4月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。

■学校プロフィール 
所在地:茨城県東茨城郡茨城町
学校名:茨城町立明光中学校
生徒数:425人
1クラスの人数:29人〜37人
特色:茨城町は町内のすべての小中学校が2022年度の学校情報化優良校に認定されている(市内全小中学校が認定されたのはつくば市に次いで2自治体目)。研究主任が全9教科の教科主任の意見をしっかりとリサーチし、校内のICTメンター、ベネッセのICT支援員も深く連携しながら全校でのICT化を推進している。
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