すぐに授業に生かせるたくさんの事例発表と情報交換。
先生の交流の貴重な場にもなっています。

——君津地方教育研究会 視聴覚部会

教育DXストーリー

4市合同でのミライシード研修会
自治体を超えた連携でICT活用を促進中

君津地方教育研究会 視聴覚部会によるミライシード活用の取り組みをご紹介しています。

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合同研修は、短時間で多くの事例に触れられる情報交換の場

——4市合同でのICT研修実施に至った経緯を教えていただけますか。
小路先生:
君津地方の4市(袖ケ浦市、木更津市、君津市、富津市)では、すべての公立学校でミライシードを導入しています。市によってiPad、Chromebook、Windowsなど、使用しているタブレットが異なるのですが、ミライシードはどの市でも導入されているため、合同で研修を行なうメリットは大きいと思います。

各市の課題もありますから、基本的には自治体ごとに活動をしていますが、「ミライシードのこんなテーマで研修をやります」と呼びかけると、結果的に合同に実施することが増えています。最近では、年間4回研修があるとすると半分程度は合同開催です。

合同研修は6月下旬、放課後15時から16時30分まで。活用事例発表とアップデートされたドリルパークの研修が行われた。

柴崎先生:
君津地方教育研究会 視聴覚部会には40名ほど所属していますが、昨年度まで、私が勤務している奈良輪小学校がICTの研究校だったので、私たちが中心になって研修の企画をして他市の先生にご参加いただくことが増えています。私たちは主に情報を提供する形ではありますが、4市合同での開催は情報交換や交流の場としても役立っていると思います。市をまたいでの教員の異動もありますから。

小路先生:
私の学校(長浦小学校)でも2年間ICTの研究をしていました。その時期はかなり活用が進みましたが、実はその後、タブレットの使用頻度が少し下がってしまいました。ただ、先生たちも使い方が具体的にわかれば 、これはどうやら便利だぞと気づいて、新しい使い方を工夫するような動きが出てくるものです。校内では、教務主任という立場からタブレット活用を促進するよう呼びかけています。

小路先生の理科の授業での事例。君津地方教育研究会視聴覚部会による研修の事例発表で共有された。

——ICTの活用事例を共有する場はこの合同研修以外にもありますか。
小路先生:
私は書写や算数の少人数のクラスなどを担当していて、ほかの先生の学級に入って授業をすることも多いので、実際にタブレットを使いながらその学級の先生と活用方法を共有することがあります。ただ、校内でも先生同士での実践共有の機会は少ないですね。そのような状況の中、合同研修では短時間で多くの事例を知ることができます。

例えば今回は、柴崎先生の算数の事例を筆頭に、2年生のオクリンクを利用した好きな遊びランキング、1年生の算数でドリルパークを使ったあめを分ける授業、3年生の理科の豆電球実験でのムーブノート活用、4年生の立方体の展開図についてのドリルパークの取り組みなど幅広い発表がありました。先生方にとっても有意義な時間になっていると思います。

柴崎先生による3年生の算数の実践事例。この日、オクリンクを利用した「1万をこえる数」の学習についての発表から研修は始まった。

苦手だったことにも意欲的に取り組む子どもたち

鈴木先生
私も今回、合同研修に参加して発表もしましたが、ICTの活用に関しては、実際に校内でも自分の学年のことくらいしかわからないので、ほかの学校の事例発表はとても参考になります。ベネッセの事例集にある全国の学校の事例も、いつも参考にしています。今日のドリルパークの研修もかなり興味があったので、研修後に早速授業でも試しに使ってみたところ、子どもたちも意欲的に取り組んでいました。

——これまで学校では、どんな活用をされてきましたか。
鈴木先生:
4年生の担任をしていた昨年度は、道徳でオクリンクを利用しました。以前からアナログでもやっていたことですが、カードで心のバロメーターを作りました。場面によってカードの色を変えたりできるのでとても便利です。
 
オクリンクは国語の随筆でも使いましたが、カードに書いたことを見て友だちと意見交換して並べ替えたりすることで、作文を書くのが苦手な子も、意欲的に取り組んでいました。友だちからコメントをもらえるとやる気も出て、作文への苦手意識も薄れるようですね。

鈴木先生による4年生の道徳。考えのバロメーターや色分けカードを使うと視覚的にわかりやすく、考察にも役立つ。

鈴木先生: 
教材準備もずいぶん楽になりました。画面上で一度教材を制作すると何度でも使えますし、応用もできる。印刷の準備も必要ありません。授業の準備時間も短縮でき、本当に助かっています。

鈴木先生による4年生の算数。タブレットにしたことで、どの場所が垂直か、平行かがすぐに図に書き込める。修正もでき、繰り返し使えるようになった。

鈴木先生: 
それから、最近とても驚いたことがあるんです。字を書くのが苦手で、勉強が始まると好きな本を読み始めて授業に参加しなかった子がいるのですが、その子に、みんながノートをとっているときに「タブレットで入力できる?」と聞いてみたんです。

そうしたら、「できる」と答えて、大事なポイントを捉えて文章を打ち込み、さらに聖徳太子の絵をスクリーンショットで貼り付けるなどの工夫もして一生懸命スライドを作っていました。そうして自ら積極的に授業に取り組んでくれたのも、オクリンクのおかげだと思います。保護者の方にもお伝えすると、とても喜んでくださいました。

授業力がある先生がタブレットを使うとより面白い授業に

——小路先生、柴崎先生はタブレット活用のメリットはどのようにお考えですか。
小路先生
私は同時性が魅力だと思います。複数の子どもたちが同時進行で何かを作ったり、それぞれが好きなものを選んで見たりできるので、授業効率がとてもよくなります。積極的に発表できなくても、文章を打ち込んだり絵を描いたりして表現できますし、特別支援の観点からもインクルーシブな環境に近づくと思います。

柴崎先生: 
スライドや動画を使った発表もできますよね。やはり、先生も子どもたちも、その時々でアナログかデジタルかを選び、文具のように自由に使いこなせるようになることが理想ですが、そこに至るにはまだ少しハードルがあるかもしれません。

「タブレットのメリットはたくさんあります」と語ってくださった柴﨑先生と小路先生(写真左より)。

小路先生:
お話しくださった鈴木先生のように、もともと授業力がある先生がタブレットを使い始めると、より面白い授業になるのは明らかです。それに、ベテランの先生がタブレットを使い始めてすばらしい授業をされると、若手にもかなり刺激や影響力があり、自分も取り組んでいこうと意欲的になります。合同研修に参加してくださった先生方には、ここでの気づきを各学校に持ち帰り、さらに広め、発展させていただけるとうれしいですね。

【編集後記】

合同研究の事例発表では、スライド1枚に1事例をまとめ、効率よく短時間で多くの事例が共有されていました。また、その後のドリルパーク研修では、2023年春にアップデートした内容についての報告、そしてオリジナル問題の作成などにも参加者全員で取り組んでいました。平日放課後の貴重な時間を使っての研修でしたが、4市から集まった先生方がそれぞれに言葉を交わす様子も印象的でした。

撮影/株式会社 デザインオフィス・キャン 加藤武 取材・文/太田美由紀

※取材の内容は2023年6月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。

■君津地方教育研究会 視聴覚部会プロフィール
所在地:千葉県
学校数:袖ケ浦市(小学校7校、中学校5校)、木更津市(小学校18校、中学校12校)、君津市(小学校12校、中学校7校)、富津市(小学校8校、中学校3校)(令和5年度)
特色:千葉県内の隣接する4市(袖ケ浦市、木更津市、君津市、富津市)で、年に数回、主にミライシードを中心にICT活用推進の合同研修を行っている。
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