ICTが拓く、子どもたちの未来と「生きていく力」
~校長先生のビジョンを体現した2つの授業実践より~
——東京都江戸川区立第四葛西小学校
ICTが拓く、子どもたちの未来と「生きていく力」
~校長先生のビジョンを体現した2つの授業実践より~
江戸川区立第四葛西小学校は、伊藤校長先生の掲げる教育ビジョンをもとに、これまでの学びを土台としたICT活用を推進されています。ミライシードを活用し、子どもたちの「思考する時間」を生み出し、「主体性」を育む授業実践についてお話を伺いました。
伊藤 秀一校長先生
銘苅 達朗先生(3学年担当)
村山 爽先生(6学年担当)
「真の学び」こそ、子どもたちの未来をつくる鍵
——貴校の教育方針をお聞かせください。
伊藤校長先生:
これからの子どもたちが社会で生きていくために、ただ知識を学ぶだけでなく、その学びを「生きる力」として結びつけてほしい。そんな願いを込めて、本校は「確かな学力」の育成を教育目標の一つに掲げています。
GIGAスクール構想で教育の本質が変わるわけではありません。これまで大切にしてきた学びを基盤としながら、ICTをより良く活用し、学びを深めていく。私たちは、ICTを学びの土台に「上乗せ」するものだと考えています。ICTを活用することで、子どもたちが自ら問いを見つけ、情報を収集・整理し、友達と協働しながら課題を解決していく。そういった探究学習が、より良く達成できるのではないかと考えています。
インターネットの世界に国境はありません。ここで得た学びとICTを使いこなす力を、将来、日本だけでなく世界で活躍するための力にしてほしいと願っています。

ICTが生み出す「時間」と「安心感」が、子どもたちの主体性を育む
3年生の社会科を担当する銘苅先生の実践では、ICTが子どもたちの「思考する時間」を生み出しています。これまで作業に追われがちだった活動をICTに置き換えることで、学びの本質と向き合う時間を確保されていると言います。
——授業でどのように実践されているかお聞かせください。
銘苅先生:
以前は模造紙とシールで意見集約をするのに1時間かかっていました。それが「ピン集計」機能なら数分で完了します。作業が短時間で済むからこそ、作り出した時間を使って、子どもたちが思考する学びに落とし込める。これが一番大きいですね。

また、授業のまとめでは「キーワード集計」を活用。当初は意図しない言葉が多く表示されましたが、それをきっかけに、「次は大切な言葉だけを“単語”で入力しよう」と学んでいったと言います。ツールを賢く使う方法を子どもたちと見つけていくプロセスを大切にされています。

子ども達の意見を「キーワード集計」でまとめたオクリンクプラスの画像
6年生の教室で見られる、子どもたちが当たり前のように学び合う空気感。あまり学習が得意ではない子の中には、オクリンクプラスを使うことで得点が上がったという実感がある子もいると言います。
村山先生:
図形の解き方はまさに十人十色。ミライシードを使えば、多様な考え方に触れることができます。発言が苦手な子も、カードでなら自分の考えを発信でき、輝ける場になります。子どもたちが学びたいように学べる、そのための手段の一つですね。学習が苦手な子の中には、オクリンクプラスを使ったことで点数が上がったという実感があるという子もいました。子供たちが学びたいように学べる授業が改めて重要と感じています。

活動ごとにカードの色を学校の板書札と統一するなど、子どもたちが見通しを持って安心して学べる「学びの型」を整えることで、主体性を引き出しています。

板書札と統一されたオクリンクプラスの画像
ツールに使われるのではなく、主体的に「使いこなす」力を
伊藤校長先生:
学んだことがその場で止まってしまっては意味がありません。AIについても、これから子どもたちが使う明らかなツールであるのは間違いない。だからこそ、我々人間がツールに使われてしまってはいけないのです。
目的を持って、自分の問題解決のためにどう利用するのか。その意味を理解し、主体的に使いこなしていく力を育てることが重要だと考えています。わたしたち教員は、ICTを効果的に使った授業をどうやって構築していくのかをしっかり考えること、その意味を理解することが重要だと思っています。

ミライシードがもたらす「学びの時間の創出」と「思考のツール」
銘苅先生:
「ピン集計」が『作業の時間』を『思考の時間』に変えてくれました。そして「キーワード集計」は、自分の考えを言葉にすることが苦手な子にとっても、思考を整理し言語化するための『材料』になります。
チャイムが鳴っても夢中で書き続ける子どもたちの姿を見た時、やって良かったなと思いました。そういうふうに活かされるツールとしてICTを今後も活用していけたらと考えています。

村山先生:
一番の成果は、子どもたちが多様な考え方に一瞬で触れられることです。まとめで手が止まった時、『「提出BOX」を見てみたら』と声をかけます。それは答えを探すためではありません。
『自分の考えに自信がない、根拠がない』という時に、友達の考えを見て『これで合っていたんだ』と自分の考えの根拠や安心材料にするためです。『わからないから聞く』のではなく、『もっと他にいい方法はないかな』と考えるための、思考のツールの一つとして活用していってほしいですね。

【編集後記】
校長先生が語る明確な教育方針のもと、先生方がそれぞれの創意工夫で子どもたちの主体性を育もうとされている姿が印象的でした。お話を伺う中で、学校全体が一体となって「真の学び」というゴールに向かって進まれていることを強く感じました。ICTがその挑戦を力強く支えるパートナーとなっている好例です。
※取材の内容は2025年10月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。
