ICTによって、先生に余裕が、子どもたちに達成感が生まれる。
もっと理解したい、伝えたい!の学習連鎖。
——和歌山県橋本市立あやの台小学校
ICTによって、先生に余裕が、子どもたちに達成感が生まれる
もっと理解したい、伝えたい!の学習連鎖
和歌山県橋本市立あやの台小学校では、デジタルと紙の良い部分を融合させ、最終的に子どもたちが自分に合った学び方を自ら選び取れることを目標としています。電子教科書、紙のノート、黒板、タブレットといった様々なツールを状況に応じて使い分けながら、「何が最適だろう」と先生方は日々奮闘しています。またICTは子どもたちの学習意欲を引き出し、次々学びたくなるサイクルを生み出しています。
今回は、丸山校長先生、五十川先生、筒井先生、そしてサポータの奥野さんに話を伺い、あやの台小学校の実践の核心とこれからのビジョンを探りました。
先生に余裕を。子どもたちには達成感と自立を。
丸山校長:
「あやの台小学校では、ICTを『とりあえず使ってみる』段階から一歩進み、紙とデジタルなど「ツール」のいいところを深く組み合わせた授業づくりを目指す段階にあります。
電子教科書、紙のノート、黒板、そしてタブレットのそれぞれの特徴を踏まえ学習を進めており、子どもたちがメリハリをつけてツールを活用きるようになってきました。先生も自分たちのスタイルと、なにより目の前の子どもたちのリテラシーに合わせた授業設計が可能になり、授業の幅を広げることにつながっていると感じています。

表現することで深まる達成感、意欲が育つ授業づくり
——今日拝見した4年生社会の授業では、先生が作った説明文カードの「間違い」を指摘するICT上での班活動から、なぜおかしいかをグループでまとめて言語化し「直接先生を説得する」という、タブレットから直接のコミュニケーション、ノートにまで横断した学び方を取られていましたね。
五十川先生:
「子どもたちが授業の中で自分の考えを『表現する』ことは、ただ答えを出す以上に重要だと感じています。自分で考え、まとめ、それを表現できたときに得られる達成感が、『もっとこうしたい』という意欲の源泉になっています。
授業中は、思考を整理する段階や表現する段階で紙とデジタルをうまく使い分けることを意識しています。例えば、デジタルは、線を引く1つの動作にしてもやり直しが簡単で、拡大したり書き込んだり、作業しながら人に見せやすい。子どもたちの意欲を途切れさせません。
ミライシードの「オクリンクプラス」では、一枚のカードを作るのがとても簡単です。自分で「表現」できるようになると、達成感につながりますよね。「作る」「見てもらう」という行動が沢山繰り返せることで、「もっと見てほしい!」という、次の学習に自ら向かう意欲につながっていると感じます。もちろん、直接人と話すことや書くことも大切にしたいので、この活動は何で行うのが最適かな?と、選んで使っていくようにしています。」

時間短縮と双方向コミュニケーションで授業をより豊かに

——次に、5年生担任筒井先生の算数の授業を見学させていただきました。学んだ公式をつかって自分で問題を作ってみる、友達のものを解いてみる、という協働学習で、公式の理解をより深める授業を展開されていました。ICTの導入によって、授業の時間配分や児童同士のコミュニケーションに変化はありましたか?
筒井先生:
「ICTツールの導入で、授業の効率化につながっているのは間違いないです。以前は、提出物の回収や配布に時間が必要でしたが、今はその作業がほぼ不要になり、その分、児童自身が「自分でやってみる」「児童同士の意見交換」の時間に充てられています。算数では、いくつかの「カードの型」を作っておけば、単元が変わっても使える素材になります。自分の授業準備も効率化されますし、それを使う子どもたちもちゃんと理解してくれていて、目的に合わせたカードを自分で探してきて使っているシーンも見られます。
また、提出物や出された意見を、授業終了後いつでも見返すことができるのも便利ですよね。例えば、授業中に友達の問題を解いてみる、という課題まで終わらないこともあります。でも次の時限までの空いた間に、自分の手元でいつでもさっと友達の提出物にイイねを押したり解いてみたりできます。『反応がもらえる』という喜びや安心感は、学習意欲の向上に役立っています。あとは授業が終われば自動的に回収も終わっている。評価についても助かっていますね。」

サポータによる日々のサポートで先生の負担軽減を実現
——あやの台小学校では、ICTサポータの奥野さんも教員支援とICT研修などに取り組まれていますね。

奥野さん:
「あやの台小の先生方においては機器操作はもうお手の物ですので、授業の取り組みをサポートすることを第一にしています。具体的に「こうしたらいいですよ」というよりは、先生方の「もっとこうしたいんだけどどう思いますか」という相談を伺ったり、別の先生のお取り組みを紹介したりしています。他にも先生方と協力して、学期に1~2回、効果的なICT活用に関する研修を実施したり…先生方としっかりコミュニケーションがとれるので、スムーズに活動できてありがたいです」
五十川先生:
「今日の授業でも、『タブレットでの話し合い時間をもっと短くすべきだっただろうか』みたいなちょっとした会話ができて助かっています。「あえて児童さんたちに判断させるのもいいですよね」のように客観的にその場で意見がもらえるので、では次はこうしてみよう、という改善につながります。」
丸山校長先生:
「奥野さんが欠席連絡の仕組みを整えてくれたおかげで、欠席の電話連絡が激減しました。先生方の朝の時間に莫大な余裕が生まれたこともありましたね。」
筒井先生:
「最近ではAIの活用についても教えてもらいました。今、この学びを行う上で最適な手法は何か?を我々がしっかり選んで子どもたちと学んでいける、その余裕を生んでくれているのかなと。」
——最後に、あやの台小学校でのICT活動の今後の展望を詳しくお聞かせください。
「ミライシードは、基礎学力を強化したい子や早く進めたい子が自分のペースで取り組めるので、個別最適化学習にもつながっていますし、タブレットを学校から持ち帰ることができれば、宿題や復習の効率がさらに高まると考えています。家庭学習の環境も整えていくことが、今後の大きな課題であり楽しみですね。
時代が進む中で、AIのような新しい技術も学習に取り込まれていくでしょう。正解がないなかで、それらをただ使うだけでなく、『本当に必要なものは何か』を子どもたち自身が見極め、自分の学び方として選び取れるようになることを私たちは最終目標としています。
ICTにおいて、取り組み始めは負担に感じることもあるかもしれないですよね。でも、先生に余裕が生まれる部分が確実にあり、そしてそれは今の教育環境には絶対必要なものだと考えます。先生に余裕があるから、子どもたちが楽しく学べる、授業が楽しくなるというサイクル。先生方の負担軽減と授業の質向上の両立を目指し、日々努力しています。」

※取材の内容は2025年9月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。
