小学4年 国語 光村図書「国語4 下巻 はばたき」

登場人物の心情の捉え方を深めるオクリンクの実践

授業の狙い
  • 登場人物の心内語や情景描写から、登場人物の性格や人柄を想像する力を養う
  • 問いに対する考えを蓄積し、友だちの意見から考えを深めることができる授業へ

この先生にご紹介いただきました

小田原市立新玉小学校
新保涼太 先生

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授業のポイント

「ごんぎつね」を読んで感じたことや考えたことを共有し、登場人物の気持ちに迫ります。「ごん」の性格・様子・行動を表す言葉の表現に着目しながら、オクリンクを使用して場面別に「ごんはどんなきつねか」という問いに対する考えを蓄積していきます。場面ごとにクラス全体で交流し、同じ文章でも捉え方の違いがあることを理解したうえで、友だちの意見から自分自身の考えを深めることを授業の目的としています。

この教科や単元を研究授業に選択した理由

『児童の主体的・対話的で深い学びを生み出す授業の追求 ~自分の考えをもち、進んで伝え合う児童を目指して~』という校内の研究主題に迫るために、「ごんぎつね」を選択しました。
また、4年生国語の定番教材である「ごんぎつね」に自分自身もチャレンジしたいと思っていました。定番教材だからこそ、ベテランの先生にご意見をお伺いしながら、ICTを組み合わせた新たな形の授業をつくることができたと思います。

研究授業を行った当時のクラスの様子

興味関心がある学習課題に対して、意欲的に解決しようと動けるクラスです。特にグループワークでは全員で協力し、課題解決を図る活動を行う姿が見られます。タイピングが不慣れな子どもは少なくないですが、抵抗なく意欲的に活用する子がほとんどです。
授業では活発に発言する子どもが多い反面、友だちの発言に対して反応や付け加えをしたり、友だちの意見から自分の考えを広げたりすることに課題がみられます。
カード入力の時間に差があるため、今回は追加問題のカードを作成・送付し、先に進められる子はごん以外の登場人物について考える時間を設けました。
※追加問題として作成されたカードも、共有コードよりまとめてダウンロード可能です。

子どもたちに身につけてほしいと感じていた力

既習の読みの力を生かして、叙述をもとに人物の性格や人柄などを想像する力を伸ばしていきたいと考えていました。また、発表が得意な特定の子だけではなく全員が自分の考えを持ち、友だちとの共通点や相違点を把握しながら、同じ場面であっても様々な感じ方があることに気づき、より考えを深めることを目的に据えていました。「ごんぎつね」は、登場人物の独話や心内語、優れた情景描写がふんだんに盛り込まれた教材です。よって、それらを関連付けながらより深く登場人物の心情を捉える力を身につけられたと思います。

授業時のポイント

単元全体を通して「ごんはどんなきつねか」という問いを持つ

3種類用意していたオクリンクのカードの中から、気持ちの変容を追う場面ごとに自分の考えに近いと思う色のカードを選択し、カードに考えをまとめ、蓄積していきました。そのおかげで、単元全体を通して登場人物に対する自分の考えの変容も視覚的に捉えやすくなりました
また、なぜそのように考えたのか判断した文章をカメラ機能で撮影しカードに貼ることで、子どもたちが文章を見つけようとする意欲につながり、教科書に基づいて自分の考えを書くという手立てになっていました。オクリンクで一人ひとりの感じ方の違いに短時間で触れられる点もとてもよかったです。単元が進むにつれて「今日の場面では何色のカードを選ぼうかな…」と授業前に友だちと楽しそうに話す子どももいて、授業に見通しを持って挑むことができていました。

よくないきつねカード

よいきつねカード

どちらとも言えないカード

子どもたちが提出したカード(第1場面前半)

子どもたちが提出したカード(第4・5場面)

子どもたちが提出したカード(第6場面)

ミライシードの役立ちポイント

ノートに書いたものを発表や教師からの紹介で共有するだけでは、活発に発言する子どもの意見が中心となって授業が進んでしまう傾向にあります。しかし、オクリンクは普段発表をしない子どもたちの考えも全体共有で確認することができるので、子どもたちはより多様な考えに触れることができました。オクリンクのおかげで、捉え方の違いに気づく機会が増えたと思います。

研究授業後の振り返り

ごんが誰にとって“よいきつね”だったのか、教師から示していなかったことで視点があいまいになってしまった点が課題でした。事前に視点を示すことによって、より深い話し合いをすることができたのではないかと思います。また、今回はカードの入力と共有を1時間の中で行いましたが、自分の考えをカードに入力する時間は別で確保できると、より深い学び合いの活動ができたはずです。
また、子どもたちがより考えの幅を広げられるようにと、あえて「よいきつね」「よくないきつね」と具体的でない表現で設定しました。この表現方法については「優しいきつね、などとしても良かったのではないか」という意見もありましたので、皆さんが参照されるうえでは、ぜひ一度校内で検討会を行ってみてください。

事例で使用しているカードは、共有コードでダウンロードできます
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