中学3年 国語 東京書籍「初恋」

ジグソー学習を通して文語定型詩「初恋」を読み解く実践

授業の狙い
  • ジグソー学習を通して自身の解釈を考え直し、1つの課題にグループで迫ることができる
  • 初見題材を解釈する力を身につけ、高校受験に生きる授業へ

この先生にご紹介いただきました

茨城町立明光中学校
福住里絵 先生

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授業のポイント

オクリンクを利用し、四連構成の文語定型詩「初恋」について読み解く実践です。グループで一人一連を担当分けし、辞書を使用せずに詩の内容を捉えます。グループ活動の中にジグソー学習を取り入れることで、クラス全員が自主的に詩の内容を解釈することを目指します。最後にグループに各連の解釈を持ち返り、詩全体から初恋が実ったか、実っていないかを考えます。

この教科や単元を研究授業に選択した理由

まだICTを授業に取り入れることが一般的ではなかった3、4年前に今回の単元「初恋」を通常授業で行ったことがありました。その時は教師が一方的に教える授業だったため、子どもたちも口語訳が全くできていませんでした。文語調の詩を解釈することはここまで難しいものなのかと感じたことを覚えています。今回は子どもたちがより思考を深め、詩の解釈を自分たちで捉えられるように授業を組み立ててみたいと思い、ICTツールを使用して再度「初恋」を研究授業で実施しました。

研究授業を行った当時のクラスの様子

グループやクラスの話し合いでは、自分の考えや意見を積極的に出せる子どもが少なく、自ら挙手して発表する子が決まっていたため、ほかの子どもたちが受動的にならないような授業で構成することを意識しました。
また、自分の意見を発言できる子でも文章や詩を感覚で読んでしまう傾向にあり、本文から根拠を見つけられていないところが課題でした。2021年の「全国学力・全国状況調査」では「場面の展開、登場人物の心情や行動に注意して読み、内容を理解する」の正答率が51%で全国平均より7ポイント下回っているという状況だったため、友だち同士で解釈を比べることで考えを深められるよう助言も行いました

子どもたちに身につけてほしいと感じていた力

中学3年生の秋に行う単元なので、高校受験を意識して取り組みました。受験のためには、意味が分からない古語が含まれていても初めて読む題材を解釈する力を身につけなくていけません。そこで、今回はインターネット上での検索や古語辞典の使用もなしとしました。あくまでも自分たちで詩を解釈して、第一連~第四連の全体解釈もすべてグループで考える活動としました。
グループの答えが出たあとなぜそう思ったのか子どもたちに理由や根拠を語ってもらうことで他者の意見を取り入れ、自分の意見を深めていくことを目的としています。

授業時のポイント

ジグソー学習による活発な意見交流

「初恋」は四連構成なので4人グループを作り、一連につき一人が口語訳を担当しました。辞書を使わずに解釈するため、自分の考えだけでグループで話し合いをすることに自信のない生徒もいます。そのため、同じ連を担当した人で集まって考えを共有するジグソー学習を取り入れました。このジグソー学習のおかげで、自分のグループに戻った後に自信をもって自分の意見を発言できていたので、取り入れて良かったと思いました。

詩全体の理解を深め、グループで1つの課題に迫る

今回の授業の目的『初見の題材の内容を全体把握する力』を身につけるために細かな課題設定ではなく、詩全体を読み解きから「初恋は実った」「初恋は実らなかった」のどちらかを選んでもらうことにしました。
 「実った」と答えたグループが2つ、「実らなかった」が7つでした。文語の「こころなきため息」「かたみ」「おのずと」の三つ意味が取れなかったためと考えられます(後に古語辞典で調べ、辞書をひく大切さ、便利さも伝えました)。更に、「初恋は実らない」というイメージに引っ張られているようでした。しかし、正解した班が少数だったこともあり、盛り上がりは抜群でした。最後にクラス全員で答え合わせをした時には、一斉で授業をした時には起こらなかったどよめきがありました。正解できたグループは、きちんと根拠となるキーワードを見つけることができていました。自分で担当した一連に真剣に向き合った分だけ、子どもたちも課題に迫りたいという気持ちが湧いてきたのだと思います。

グループでの結論


ミライシードの役立ちポイント

クラス全員の意見を確認しながらグループ活動を進めていくために、ミライシードを使いました。活動中にカードを一斉共有できる部分はもちろん役立ちましたが、最終的に教員が全員のカードを見て解釈が間違っているところは線を引きもう1度考えることを促したり、理由が書けているところは花丸を付けてコメントを入れたりするなど、簡単にフィードバックできるところも大変便利でした。
また、感想や振り返りの文章の量がノートに書く時より格段に増えたので、子どもたちの理解度を確実に確かめることができました

研究授業後の振り返り

授業が終わった後に、「そもそも、初恋が実る、とはどういうことですか。」という質問がありました。初恋が実ったか、実らなかったか、という課題設定があったからこそ、このような質問が生まれたと思います。私自身は詩から読み取れる二人の気持ちが近づいている様子を“初恋が実った”と解釈しましたが、具体的な解釈基準がないため、この課題の解答は人それぞれだと感じています。その場合に、そもそも最初に投げかける質問に、「初恋が実る、ってどういうこと?」と全体に問いかけ「二人の気持ちが近づいている」というイメージをもたせたらもっと分かりやすかったと感じました。今回の課題設定「AかBか」は、生徒にとって大変分かりやすく、興味をもって取り組むことができたように感じました。「授業は課題設定で決まる」と言われていることを痛感しています。生徒がワクワクしながら、自分事として捉えられるような課題設定を、今後も研修していきたいと思っています。

事例で使用しているカードは、共有コードでダウンロードできます
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