小学5年 算数 東京書籍「分数の足し算、引き算を広げよう」

分数の解答ではなく“理由”に焦点を当ててクラス交流を行う実践

授業の狙い
  • 適応問題を通して、分母の意味も考える「思考・判断」に重点を置く
  • 授業中に生まれる子どもたちの純粋な疑問を解決することができる授業へ

この先生にご紹介いただきました

金沢市立鞍月小学校
田野健 先生

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授業のポイント

ムーブノートを利用し、時間の表し方を分数で考える授業の実践です。分数を用いた時間の表し方を理解することはもちろんですが、「時間の表し方を理解する」だけではなく、「分数の意味、特に分母の意味についての知識・理解を活用して、時間などの表し方を考えられること」に重点を置いた授業です。まとめの部分では、時間だけではなく“〇ヶ月は〇年”や“〇日は〇年”という適応問題を通して、本時のねらいに迫ります。

この教科や単元を研究授業に選択した理由

校内でGIGA推進担当を務め、ICTを用いた授業実践を広げる活動をしていましたが、 他の先生方にもICTを授業に取り入れてもらえる1番の方法は実際に授業を見てもらって「この使い方なら自分でもできそう!」と思ってもらえること だと感じていました。そのため、他の先生方もマネして実践に進めやすい計算の単元で研究授業を行いました。

研究授業を行った当時のクラスの様子

素直な子どもたちばかりだったため「わからないことをわからない」と抵抗感なく声に出して伝えることができるクラスでした。通常、クラスを“発展コース”と“基本コース”の2つに分けて授業を行っており、今回研究授業を実施したのは“基本コース”でした。自分で考えてグループ活動で意見交流、という授業構成が難しかったため、今回の授業はクラス全体で授業を進めるという流れにしています。そのような授業構成の中では、感じたことをすぐ口に出せるクラスの雰囲気は、とても重要だったように思います。

子どもたちに身につけてほしいと感じていた力

本時は知識・理解を狙った授業構成にするのが一般的ですが、子どもたちに“なぜ分母が60になるのか”を考える機会を与え、時間の表し方の意味を根本的に理解させる思考・判断に重点を置いた授業にしました。分母の数字の意味を理解したことで、適応問題に入れている1週間や1年間の表し方も考えることができるようになりました。

授業時のポイント

日常生活に生きる分数

教科書では時間の表し方のみを考える単元になっていますが、日常で分数を使って時の流れを考えるタイミングは多々あります。その時に分数を使って考えられるようになってほしかったので、分母を60に固定しない適応問題を作成しました。とは言え、九九の定着や、位をまたぐたし算・ひき算の理解が難しい、算数が苦手だと感じている子どもがクラスのほとんどを占めていました。よって子どもたちには算数の面白さや「自分にもできるかも!」というやる気を感じてもらえるよう、適応問題を考えました。その結果、分子だけではなく、分母まで思考した上で問題が解けるようになってくれたと思います。

先生が作成された思考補助の導入素材

ミライシードの役立ちポイント

算数の授業は問題⇒やり方⇒答え、で導き出していくことが多いと思いますが、自分の授業では全員で答えを導き出してからその答えになる理由を考えるようにしているため、自分の答えは合っているのかという不安を最後まで感じることなく、意味を考えることに集中できます。それを実現できたのは、ミライシードのおかげです。
今回の授業では『45分=■時間』について考えましたが、まずはムーブノートで全員の解答とその理由を書いたカードを集めました。もちろんそのカードは匿名機能を使用しているため、万が一自分の解答が間違っていたとしても恥ずかしいと感じることはありません。次に、広場に提出されたカードを同じ回答別にグループ分けし、クラス全体でまずはどれが解答として正しいのかを考えます。60分の45という解答にたどり着いたら、その理由を全体で見つけていきます。前述したとおり、クラス全体がわからないことをわからないと発言しやすい環境だったため、子どもたちが途中でたくさん疑問を投げかけてくれました。
上記の流れを取り入れることで、解答の正誤確認ではなく、その解答の意味に焦点を当てた分数の授業を展開することができたと思います。

子どもたちの解答とその理由を書いたカード

研究授業後の振り返り

今回の授業だけではなく本単元を通して、ムーブノートを使用すると子どもたちから出てきた純粋な疑問を全員で解決していく授業構成で進めることができるため、算数がニガテだと感じている子どもたちも授業を楽しんでいました。
また、今回の研究授業は本来は一部の先生だけに公開する“分科研”でしたが、事前に校内でPRして、結局全教員が見学に来てくれていました。ムーブノートの使い方に関して非常に評判がよく、特に高学年担当の先生方を中心に、マネをして実際の授業に取り入れてくれる先生方が増えました。

事例で使用しているカードは、共有コードでダウンロードできます
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