ムーブノートでの“伝え合い活動”を通して、外角の和の求め方を追究する実践
- 数学的な表現を使って“理由”を説明することで、論理的思考力を高める
- 他者の考えを尊重し、子どもたちが自信をもって意見を発表できる授業へ
加須市立加須平成中学校
小暮 涼介 先生
授業のポイント
ムーブノートを利用し、多角形の外角の和が360度になる理由を考える授業の実践です。既習事項に着目しながら、事前に用意されている三角形~六角形までの図形を基に、子どもたちが多角形の外角の和について考えます。外角の和の求め方を「広場」で共有し合うことで、相互に学びを深め、クラス全員の数学的な思考力・表現力・判断力を深めることができる授業を構成しています。
この教科や単元を研究授業に選択した理由
数学でICTを使用することは難しいですが、個人的には図形の授業でミライシードを使用したい、という気持ちが元々ありました。また、発表や言語化が苦手な子どもたちにおいてはICTツールの活用によって学習がスムーズに進むのではないかと考えていたので、この機会に「図形×ICT」の授業を実施しました。
研究授業を行った当時のクラスの様子
数学を好きな子どもたちは多かったのですが、今回の図形については大半の子どもが苦手意識を持っていました。
クラスの子どもたちに事前にアンケートを取った結果、「数学が好き、どちらかといえば好き」と答えた子どもは76.6%でしたが、「数学が得意、どちらかと言うと得意」と答えた子どもたちは50.0%にとどまっていました。特に今回の単元である図形については、「苦手、どちらかといえば苦手」と答えた子どもが、53.3%と過半数を超えていました。
授業の様子を見ていても、図形の体積や面積、角度の大きさの求め方についての理解が十分ではなかったと思います。また、成績の差異が大きいクラスだったため、授業の中で話し合い、学び合い活動を主に、既習単元の整理も進めていきました。わからないところを教え合うだけでなく、他者の考えのよさを学び、考えを深めながら問題を解決していくことに意欲的な子どもたちだったため、この方法はより理解の定着に繋がったと感じています。
子どもたちに身につけてほしいと感じていた力
数学は「説明する教科」なので、最も大切なことは数学的な表現を使って、筋道を立てて説明するという論理的思考力だということを理解してほしいと感じていました。例えば、今回の単元でいうと「外角の和が360度になる」ことは公式として覚えてしまえば簡単ですが、なぜ360度になるのか、というその“理由”を追及してほしいと思っていました。
授業時のポイント
“伝え合いの活動”から、自分の考えを伝える表現方法を学ぶ
自分の考えをどう表現したらクラスの友だちに伝えることができるのか、活動を通して学んでもらいたいと考えていました。今回の授業では、本時の展開の中の『課題1』の活動が、まさにこのポイントを意識していたところです。自分の考えを伝える表現を知ることはもちろんですが、ほかの友だちの意見を聞くことで「そんな伝え方もあるのか」と気づくことも、表現方法を身につける材料になり、正しく伝える表現方法を知るための一歩にもなると思います。このような“伝え合いの活動”を意識しながら、授業に組み込んでいます。
外角の和の求め方を自由に表現している「みんなの広場」
“伝え合いの活動”を通して、子どもたちは自信をつけながら発表できるようになりました。授業後の振り返りシートでは、「自分でカードを作って表現することが楽しかった」「こういう伝え方をしたら、相手にも自分の考えを理解してもらえるんだということがわかった」という前向きなコメントであふれていました。ムーブノートでいちばん多く花丸をもらっていた子どもは普段発表をしたがらない子でしたが、タブレット上でクラスの友だちに花丸をもらっているという安心感からか、自信をもって発表してくれたことがうれしかったです。
図形にマーカーを入れ、計算式または文章で自分の考えた求め方を全体に共有
ミライシードの役立ちポイント
成績関係なく、クラス全員が同じスピード感で授業を進められたところが、ムーブノートを使用してよかったと感じた部分です。成績に差があるクラスだったため、クラス全体が飽きない授業をすることが課題だと感じていました。ミライシードを使用すると、すぐわかる子はどんどんカードをコピーして自分の考えを入力しながら「みんなの広場」に送りますし、わからない子は「みんなの広場」を見に行って、できている子のカードを参考にしながら考えを広げたり深めたりすることができます。これがムーブノートで達成できることで、全体が同じスピード感で、かつどの子も飽きさせない授業づくりができたのではないかと考えています。
研究授業後の振り返り
今回の学習は公式を使って計算することが多い単元ですが、自分の考えを表現する活動に重きを置いたことで、子どもたちにとっても楽しい授業になったと思います。授業後、子どもたちの振り返りを読みながら、花丸をもらえたり、友だちにほめてもらえたりすることが自信につながっていることがわかり、やはり子どもたちの成長において認め合うことは不可欠だと感じました。図形や文章題など、考えを表現できる単元では、今後もICTを積極的に使う授業を行っていきたいと思います。
事例で使用しているカードは、共有コードでダウンロードできます
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