「人」を教材に、日本とつながりの深い国々とのかかわりあいを全員参加で学ぶ実践
- 「人」を教材にし、自分たちの暮らしと外国とのつながりに実感がもてる
- 調べ学習にとどまらず、比較や背景理解を通して、違いを受け入れる大切さを深く考える
新宿区立落合第二小学校
福成利之先生
この教科や単元を研究授業に選択した理由
「世界の中の日本」は、政治や歴史など6年生の社会科のこれまでの学習の集大成的な位置づけで、このあとに学ぶ国際協力の学習につながる大事な単元です。3学期の最後の方で学習するので、時期的に時間をかけてやることが難しい単元だという課題意識がありました。また、教科書に掲載された事例国は身近に捉えることができなかったり、Webサイトでの情報収集で満足してしまったりということが起きがちです。
この単元では、日本と他国の相互の関わり合い・違いについて考えることにじっくり取り組ませてあげたい。考えを共有して協働することで、みんなで学びを進めていく面白さに気づいてほしい。そうした狙いに迫る進め方として、ICTは効果的に使えるのではないかと思いました。
研究授業を行った当時のクラスの様子
学習に集中できていて、自分の意見を持って伝えようとする気持ちは強いものがありました。興味をしっかり持つことができれば、意欲的に勉強しようという姿勢の子も多いので、授業をしていて楽しいクラスです。政治や歴史にも関心が高く、新しい資料に出合うことを楽しみにしていました。
一方で、表現力や思ったことを言葉や文章で表していく力はあと一歩。思いついたことをすぐに口にするのではなく、じっくり考える力の醸成が必要だと思っていました。意見や主張のある子を中心に話が進んでいくことが多かったので、みんなで考えを作り上げていくとか、グループで一緒に考えてみるなどして新たな発見があると、全員参加で学びを進める楽しさに気づけるかなと期待していました。
子どもたちに身につけてほしいと感じていた力
日本とつながりが深い国として教科書でも取り上げられているアメリカ、中国、ブラジル、サウジアラビアのほか、既習であったトルコ、モンゴル、オーストラリアといった国の中から、子どもが自身で調べたい国を選びます。単元を深めていくためにベトナムを取り上げたのは、日本を好意的に見てくれている国のひとつで、一見日本が支援をしているように見えるけれども、日本で働いているベトナム人も多く、そうした人たちに支えられていることを理解してもらいたかったからです。過去に自分がベトナムの日本人学校に派遣されていたことがあり、ちょっとした疑問には答えられたことも大きいです。日本の中でもいろいろな国の人がいて社会が成り立っていること、違いのある人たちと一緒に協力し共生していくことの大切さを深く考える力をつけてほしいと思っていました。
そのあとで、外国の人と会う機会を設け、実際に異なる国の人と出会うことで「違いを認めることの大切さ」に実感が持てます。自分たちの当たり前が当たり前ではない、普通って一体なんだろう? と考え直す力も大切です。
学習のツールはノートでも、タブレット端末でも、使うことで自分の考えをしっかり人に伝えたり整理したりする力をつけてほしいと思っていました。
授業時のポイント
必然性のある教材選び
例えばベトナムの人に出会わせてあげる、その前に、今日本で働くベトナム人は中国人より多い、だからベトナム料理屋さんが増えているといった事実を表すグラフ、写真といった資料は「カード」にしてみんなで共有できるICTツールで用意しておく。なぜベトナムに注目するのかがわかったうえでゲストと交流すると、もっと知りたい、わかり合いたいという思いや考えを深められます。
共有や協働する場面をつくる
みんなで考えを作り上げたり、グループで一緒に考えてみたりすることで、新たな発見がうまれます。共に学びを深めていく面白さに気づかせたい、協働的に進める部分を確保したい、という思いからICTの活用を考えました。今回は特に「広場」を活用することで「カード」をカテゴリごとに分類するといった作業も、子どもたちが自主的に行ってくれました。
ミライシードの役立ちポイント
ムーブノートのスタンプ機能を使うと、クラス内の意見の分布がひと目でわかります。コメントからキーワードを集計するのにも、その言葉が誰の発言だったかとともに把握できます。そうした子どもたちの反応の全体像をきちんとつかんでから、ねらいに沿って子どもたちに発言を促すなど、授業の展開が主導できる点がとてもよいと思います。
また広場機能での共有は、みんなの顔・みんなの様子がわかり、参加しているという気持ちが湧くようで、子どもたちにとってすごく使いやすいようです。
研究授業後の振り返り
日本にいる外国の方との出会いの前に、7時間かけて既習事項の振り返りから個人・グループ活動での全体学習まで、教科学習にじっくりと取り組みました。自分なりの視点をもって教科書、資料集に加え図書資料やWebサイトを使ってまとめたり、情報を比較し考察したりする子もたくさんいました。
気づきや疑問を多く持てた状態でゲストティーチャーと出会うので、「もっとこんなことも聞いてみたい」「思っていたイメージと違って驚いた」など新しい興味や発見が生まれます。「人」との出会いが、さらに考えを深めることにつながりました。
ムーブノートなどのツールは全員参加型の授業に適している印象です。初めて使うツールでも子どものほうが慣れるのが早いので、時間をちゃんと確保してあげて任せてみるのもいいなと感じました。これからもぜひ使っていきたいと思います。
事例で使用しているカードは、共有コードでダウンロードできます
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