小学5年 社会 東京書籍「自動車をつくる工業」

オクリンクを使った意見交流で日本の工業の特徴を考える実践

授業の狙い
  • 世界に視野を広げて、日本車の偉大さと課題について捉える
  • 自動車生産の質と量を担保する工夫や努力を体験しながら学べる授業へ

この先生にご紹介いただきました

金沢市立鞍月小学校
田野 健 先生

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授業のポイント

オクリンクを利用し、日本の工業生産に関する理解を深める実践です。今回は自動車メーカーのトヨタ自動車を取り上げ、工業生産に従事している人々の工夫や努力を考えていきます。世界の普遍のニーズに大量生産で応えるトヨタ自動車に対して、ニーズの応え方が異なる光岡自動車を提示し、子どもたちが主体的に違いを学ぶことができる授業となっています。

この教科や単元を研究授業に選択した理由

海外に行った時に“外国なのに走っている車は日本車ばかり!“と感じたことが、大きなきっかけです。日本車は世界の人から評価されていることを実感しました。10年経験者研修でどの単元を実施しようと考えたときに、自分が世界を見て実感したことを子どもたちにも感じてほしいと思い、この単元を選択しました。

研究授業を行った当時のクラスの様子

素直な子が多いクラスだったので、周りの人が話した言葉を表面的に理解し、受け止める力は持てていましたが、その一方で物事を批判的に捉える力が足りていないと感じることもありました。
今回の単元では、トヨタ自動車が自動車生産において質と量の両方を担保していることがどれほど偉大なことなのか、表面的な理解で終わらないようにモノづくりを疑似体験してもらいました。ペーパークラフトを班に1セットずつ配布し、制限時間内に工作を行うことで、子どもたちは初めてモノづくりの大変さを実感したはずです。
この活動を通して、トヨタの自動車が速さと正確さの両方を実現していることがどれほど偉大なことなのか、理解を深めてくれたように思います。

子どもたちに身につけてほしいと感じていた力

学習指導要領の中では、あくまでも日本の工業を学び、国民生活との関連を考える単元として位置づけられていますが、私は日本の工業と世界との関わりも考えてほしいと思っていました。というのも、日本車は発展途上国から先進国まで、世界に浸透しており、世界の人々の暮らしと密接に関わっているといっても過言ではないと感じていたからです。
また、日本車は“壊れにくい”とよく言われますが、“壊れない”わけではありません。“壊れにくい”からこそ、日本車が世界で引き起こしている問題についてもしっかり理解してほしかったのです。日本では10万キロほど走った車はもう寿命と考えられ、次の車に乗り換えられることがほとんどです。しかし、世界の人たちは日本車の本当のポテンシャルを理解しているため、その車は海を渡って色々な国の人たちに使われながら、どんどん発展途上国に向かっていきます。そして、車の処分のノウハウもないほど貧しい国の路上でいよいよ動かなくなり、その国の人々を困らせているという事実も一部で起こっています。
これだけのクオリティをもつ日本車などの工業製品を生み出す日本の工業生産の素晴らしさを知ることはもちろんですが、より視野を広げて、自動車を含めた日本の工業生産が世界に与えている影響を知り、考えてほしいとも感じていました。

授業時のポイント

教師の介在を最小限にする授業づくり

社会科の授業だけではなく、日頃から教師の介在を減らしていきたいと考えており、子どもたち同士で思考する時間を必ず確保するようにしています。
また、ミライシードを使用するときは、白紙のカードを使用して子どもたちに自分の意見を入力してもらうというスタイルで進めています。これは、子どもが型に捕われることなく、自由に意見を表現してほしいという思いから生まれたやり方です。白紙のカードでは自由に表現することができるため、字を書いたり、絵を描いたりする子どももいます。
※本授業では先生によるカードの事前作成は行っていないため、共有コードは配布しておりません。



世界中の人々が日本車(トヨタ自動車)を選んでいる理由をカードへ入力

物事の本質を理解する

字面でキャッチした事実を表面的な理解で終わらせることなく、一歩踏み込んでその事実が持つ価値について子どもたちに考えてほしいと思っていました。そこで、「丈夫」で「安価」という世界の普遍のニーズに大量生産で応えるトヨタ自動車に対して、本当に車が好きな人だけにターゲットを絞って一台一台職人が手作りで自動車生産を行っている光岡自動車を深めの資料として提示しました。どちらも消費者のニーズに応えているという意味では共通しているのですが、そのニーズの質の違いについてより理解を深めることができていました。

ミライシードの役立ちポイント

私が理想としている全員参加型の授業を実現するためにミライシードを使用していますが、ミライシードを使用すると、全員分の意見をシェアする時間が圧倒的に削減できます。
このおかげで、子どもたち同士が思考しながら交流する時間、学習内容の理解を深める時間を確保することができました。

研究授業後の振り返り

今回の授業では、トヨタ自動車と真逆の戦略を取りながらニーズに応えている光岡自動車を比較対象として提示しましたが、授業後の振り返り会では、日本車と世界の関わりを学ぶためには、トヨタ自動車の比較対象になることができるような海外の自動車企業を探すべきではなかったのか、というご意見をいただきました。ニーズや価値に着目しすぎていましたが、単元全体で考えたときに比較対象として光岡自動車が適切であったか検討してみるのも良いと思います。

事例で使用しているカードは、共有コードでダウンロードできます
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