導入事例

豊富なアウトプット活動で、
4技能の力がバランス良く向上

POINT
  • 4技能のつながりを意識しながらアウトプットをできるだけ多く繰り返すことで、「話す」活動も単語や文法の習得につながる
  • 即興的な受け答えを重視した活動によって「考えて表現する」力を高める
KEYWORD
  • GTEC
  • 中学校英語
  • Small Talk
  • 4技能

新学習指導要領では中学校の英語の授業は英語で行うことを原則とし、一部の公立高校入試で英語4技能が評価される動きも見られる。しかし、実際の授業で「聞く」「話す」活動を重視すると、単語や文法の習得が十分できないのではないかと懸念する声もある。しかし、岐阜市立岐阜中央中学校では、活動の時間を豊富に取り入れつつ4技能をバランスよく指導した結果、英語4技能検定「GTEC」のスコアではすべての技能で成果が見られた。

学び合うアウトプット活動で、4技能を通して学びを積み上げる

4技能別スコアの伸び(2018年5月→ 2019年1月)

岐阜市立岐阜中央中学校では、市の英語教育研究校として、4技能のバランスのよい習得を目指した指導を行ってきた。2018年度の2年生が受検した、ベネッセのスコア型英語4技能検定「GTEC」の結果では、リーディング、リスニング、ライティングのスコアが年度当初と比べて年度末では大幅に伸びていた(図1)。スピーキングのスコアも全国平均より高く、ライティングの無解答率は5%以下だ。

該当学年担当の堀貴美先生は、指導の留意点として次の3つを挙げる。

豊富なアウトプット活動で、学習を蓄積

授業の基本的な流れは、あいさつと、Small Talkなどの言語活動の後、本時のメインの活動となっている。活動内容は、文法の習得や読解、英作文など、本時の目標によって異なるが、堀先生はアウトプットをできるだけ多く繰り返す。例えば、新出文法の習得場面でその文法を活用しながらペアとやり取りする際に、ペアの相手を替えながら何度も行う。生徒は、「「何回も話すから覚えやすい。間違えても相手が指摘してくれる」と学習の効果を感じている。

中間指導では、既習事項を用いた表現を加えたり、生徒が間違えやすい点を指摘したりしながら、スモールステップで学習が積み上がるようにしている。また、異なる文法や言い回しで表現した生徒に発表させることもよく行う。

「教員が模範的な表現を教えるよりも、クラスメートが使った表現を見たり聞いたりする方が、『自分にもできる』と思えるようです。その後の活動で、発表で聞いた表現をすぐに使う生徒の姿もよく見られます」(堀先生)

4技能のつながりも意識して指導している。Small Talkで話した内容を英文で書く活動は、その一例だ。その際も、共有したい英文を拡大投影機で映し、「この表現は、前の単元の学習内容を活用している」「この表現はこのようにも言える」など、クラス全体で共有している。

考えながら英語を使えるよう、やり取りは即興性を重視

参観した授業では、ペアワーク→中間指導→ペアワーク……という流れで、ペアワークを3回行った。中間指導では、堀先生がほかの生徒にも知ってほしい表現を使っていたペアを 指名して全体に発表させていた。

スピーキングでは、基本のやり取りに1文以上を加える「プラス1文」や、相手が答えたことについて更に質問する「つっこみ疑問文」を促していると、堀先生は語る。「会話は、相手が話す内容に応じて答えなければならず、話題も多様です。相手の話をしっかり聞き、考えながら話すことに慣れてほしいと考え、即興性を重視しています」

1年生では、“What sport do you like?” “I like soccer.” “What animal do you like?”と、好きなものの分野を変えるだけのやり取りだったものが、2年生の終わり頃には、例えばサッカーという答えに対し、“What team do you like the best?” “Where do you play soccer?”と、サッカーにかかわる別の視点からの質問ができるようになるという。生徒も「つっこみ疑問文が返ってくると、自分の英語が通じたと思ってうれしい。自分も頑張ろうと思う」と語る。

その一方で、正確性も重視し、「複数形になっている?」「代名詞はit? him?」など、生徒に問いかけることもある。

「正確性を気にし過ぎると、生徒からは言葉が出なくなってしまいます。表現の幅を広げることに重点を置く場合と、正確性を高めることに重点を置く場合とで、指導の仕方を工夫しています」(堀先生)

「単元学習カード」で学習の見通しを持たせ、成長を可視化

「単元学習カード」の表面には、言語活動の内容、つけたい力、評価規準、単元の最後に書く振り返りの欄が、裏面には、各授業の「本時のねらい」と授業後に記入する自己評価欄、活動で使いたい表現と実際に使った回数を記入する欄がある。単元の到達目標を示すことで、生徒が目的意識を持って授業に臨み、どれくらいできたかを可視化して示せるようにしている。

堀先生は、自作の「単元学習カード」(図2)を生徒に活用させている。これは、単元目標や評価規準などを示すとともに、毎授業の自己評価を記入させるA4判両面刷りのカードだ。生徒が日々の授業に目標を持って取り組み、達成感を持てるようにしている。単元の導入時には、カードに単元のテーマに関する英作文を書かせる。例えば、3年生で現在完了形を学ぶ単元では、外国人に向けて自分の特技とその理由を書かせた。

「ポイントは、既習事項を活用して書かせることです。現在完了形を学ぶ前は、生徒は1・2年生時に学習した文法を用いて、“I can play soccer very well. I was playing soccer when I was a little child.”といった2文以上で書いていました。それが単元の最後に同じテーマで書かせると、現在完了形を用いて1文で書けるようになります。学習の前後の違いを可視化し、自分の成長を実感できるようにしています」

今後の課題は、伝えたいことをより正確に伝えるために、生徒の発音をより自然な英語に近づけることだ。ALTとの会話やCDでネイティブの発音を聞き、発音練習を繰り返していきたいと、堀先生は語る。

「以前は、英語が苦手な生徒に合わせて、ゆっくりと話していました。しかし、それではネイティブが話すスピードに慣れないと気づき、今は普通の速さで話しています」

堀先生は、アウトプット活動を中心とした4技能を使う指導が、入試を含めて将来にわたって生きる英語力を高めるために、最も効果的な方法だと感じている。

「高校や大学の入試で英語が4技能評価になることを考えると、文法の習得も大切ですが、自分の思いを伝えるために何とかして書いたり話したりすることも重要です。今後も、4技能をバランスよく伸ばす活動を工夫していきます」

実践のポイント

岐阜市教育委員会 学校指導課 副主査 鹿嶋成子

生徒たちの英語でのやり取りの様子を見ると、他者が使った表現を取り入れながら、表現の幅を徐々に広げている様子がうかがえました。生徒自身の思いや経験に基づく内容を伝え合う活動と指導を繰り返すアウトプット活動は、即興的な受け答えを意識しやすく、それが「考えて表現する」ことにつながり、表現力を高めているのだと実感しました。生徒同士の学び合いが成功しているのは、学級づくりが成功しているからこそだと言えるでしょう。

岐阜市立岐阜中央中学校

2012(平成24)年設立。「温故創新」を校訓に、「手を結び 学び合い・鍛え合う」を学校の教育目標に掲げる。
すべての普通教室に電子黒板を備え、ICTを活用した授業を展開。地域でのボランティア活動にも力を入れている。

校長
上松英隆先生
児童数
333人
学級数
13学級(うち特別支援学級3)
電話
058-265-1621
URL
http://cms.gifu-gif.ed.jp/chuo-j/