先生方の“できるかも”を支える
――帯広市に広がったミライシード活用推進の挑戦

——北海道帯広市立栄小学校、緑丘小学校、明和小学校

教育DXストーリー

先生方の“できるかも”を支える
――帯広市に広がったミライシード活用推進の挑戦

北海道帯広市では、2025年度から市内26校でミライシードの導入がスタートしました。しかし、学校ごとにICT活用の状況や教員の経験値には差があり、その活用を市全体へ広げていくことが課題となっていました。
そんな中、授業力向上推進教員として活動していた西山乙代先生、石垣雄太先生、石川留美先生の3名は、「ICT活用そのもの」ではなく、「よりよい授業づくり」を見据えた伴走型の支援を展開。現場の声に耳を傾けながら、先生方が無理なく活用できる環境づくりに取り組みました。今回は、その実践に込めた思いと成果について伺いました。

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チームとして取り組んできた実践

――このたびはミライシードAWARD 教育DX部門 優秀賞のご受賞、おめでとうございます。まずは受賞の感想をお聞かせください。

石垣先生:
ありがとうございます。正直なところ、「まさか受賞できるとは」と驚いています。
今回の取り組みは、私たち3人だけでできたものではありません。授業力向上推進教員として6校を巡回する中で、現場の先生方と一緒に試行錯誤しながら進めてきた実践です。また、ベネッセの児玉さんにも伴走していただきながら、研修や資料づくりを進めてきました。
低学年・中学年・高学年、それぞれの立場から実践を持ち寄り、「こんな活用ができるのではないか」と考え続けてきた取り組みを評価していただけたことをうれしく思います。

 


――チームとして取り組んできた実践が評価されたのですね。

石川先生:
そうですね。私たちはさまざまな学校の先生方と関わる立場だったからこそ、「どのようなことに困っているのか」「どんな活用を求めているのか」を知ることができました。
新しい機能を試しながら、その成果や課題を現場の先生方に伝え、先生方の反応をまた次の実践に生かす。その繰り返しができたことが大きかったと思います。

 


西山先生:
6校を巡回する中で、先生方が何に困り、どんなことを実現したいのかを直接聞けたことはとても大きかったですね。
ICTが得意な先生だけでなく、苦手意識のある先生方の声も聞きながら、「こんな使い方なら取り入れやすいのではないか」と考え続けてきました。
今回の受賞は、私たちだけではなく、一緒に取り組んでくださった6校の先生方や帯広市全体でいただいた賞だと感じています。

「また新しいツールを覚えるの?」―現場の戸惑いから始まった挑戦

――今回の実践は、どのような課題意識から始まったのでしょうか。

西山先生:
帯広市ではこれまでもICT活用を進めてきましたが、学校や教員によって経験値や活用状況には差がありました。また、新しいツールの導入に対しては、「せっかく使い方に慣れてきたのに、また新しいものを覚えなければならないのか」という不安の声もありました。
そうした中でミライシードの導入が始まりました。しかし、私たちが目指していたのは、「ミライシードを使うこと」ではありません。だからこそ、単に操作方法を伝えるのではなく、「ミライシードを活用することで授業がどう変わるのか」「子どもたちの学びにどんな価値が生まれるのか」を実感してもらうことを大切にしました。授業改善の手段としてICTの価値を感じてもらうことが、活用を広げる第一歩だと考えたんです。

「操作」ではなく「授業改善」を伝える

――帯広市全体に活用を広げるために意識したことは何でしたか。

石垣先生:
私たちが一番意識したのは、先生方のICT活用レベルの違いです。ICTが得意な先生もいれば、ほとんど使ったことのない先生もいます。そのため、「全員を取り残さないこと」を大切にしました。
ICT研修というと、どうしても機能説明や操作説明が中心になりがちです。でも私たちはそこをゴールにしたくありませんでした。例えば、「オクリンクプラスにはコメント機能があります」ではなく、「友達同士で考えを比較したり、お互いに評価し合ったりする授業でこんな使い方ができます」というように、授業場面を起点に話すことを意識しました。先生方が「この授業ならやってみたい」と思えることが大切だと考えたんです。

活用のイメージを共有するための4つの資料

――具体的にはどのような取り組みを進められたのでしょうか。

石垣先生:
まず作成したのが、「1人1台端末活用ロードマップ」です。
GIGAスクール構想5年目を迎え、どの学年でどのような活用ができるのかを整理しました。学校ごと、先生ごとの認識の差を少なくし、市全体で共通理解を持ちながら活用を進めることが目的でした。

また、ミライシードの強みであるオールインワン環境を生かすために、「4大アプリ相関図」も作成しました。オクリンクプラス、ドリルパーク、テストパーク、カルテがどのようにつながり、学びのサイクルを作るのかを1枚で見えるようにしました。さらに、「学習過程別ミライシード早見マップ」を作り、授業のどの場面でどの機能が使えるのかを具体的な事例とともに紹介していきました。

「20のコト」に込めた思い

――特に印象的だったのが「オクリンクプラスで体験していただきたい20のコト」です。

石川先生:
この資料は、ICTが苦手な先生にも「ここまではできそう」と感じてもらいたくて作りました。
実は、私自身もICTが得意なタイプではありません。だからこそ、「わからない」「聞きたいけれど聞きにくい」という気持ちがよく分かるんです。
そこで、教室で子どもが実際に使う場面を想像しながら、「最初の1時間ならここまで」「次はここまで」と段階的に整理していきました。一度にたくさんの機能を覚えるのではなく、小さな成功体験を積み重ねることを大切にしたかったんです。


石垣先生:
順番にもかなりこだわりました。カード作成から始まり、提出BOX、みんなのボード、集計機能などへと段階的に進められるようにしています。先生方が自分のレベルを確認しながら取り組めることも狙いでした。

ICTが苦手な先生に寄り添うために

――学校訪問で大切にしていたことを教えてください。

石川先生:
いきなり「ICTを使いましょう」とは言わないようにしていました。
まずは子どもの様子を聞いたり、教室の掲示物について話したりするところから始めていました。例えば、「この掲示物、もしかしてタブレットで作りましたか?」という会話から、「実はこんなこともできますよ」という話につながることがあります。先生方も、操作方法がわからないというより、「どう授業で使えばいいかわからない」ことの方が多いんです。だからこそ、授業や子どもの話を通してICTを考えるようにしていました。

カードBOXが生んだ教材共有の文化

――取り組みを進める中で印象的だった変化はありますか。

西山先生:
教材共有が広がったことです。先生は日々たくさんの教材を作っていますが、それを他の先生に見てもらう機会は意外と多くありません。そこでカードBOXを活用し、授業で作った教材を共有する文化づくりを進めました。すると、自分が作った教材を他学年の先生が活用してくれたり、別の学校の先生が参考にしてくれたりするようになりました。
「なくなっている教材があるな」と思ったら、誰かがコピーして使っていたこともありました。
誰が使ったかは分からなくても、「見てくれている人がいるんだな」と実感できたのはうれしかったです。


石川先生:
公開研究会で使われた振り返りカードを、他学年の先生が活用したいと言ってくださったこともありました。学年を越えて実践がつながるのは、デジタルならではの価値だと思います。

数字にも表れた確かな成果

――取り組みの成果をどのように感じていますか。

石垣先生:

教員アンケートの結果を見ると、少しずつ変化が見えてきました。
緑丘小学校では、「授業でほぼ毎日オクリンクプラスを使う」と回答した教員が、6月の16.7%から12月には38.1%まで増加しました。また、「使い方を覚えたのでサポートなしでも大丈夫」という回答も増えており、基本的な活用が定着し始めていることを感じています。帯広市全体でも、児童のミライシード利用率は2学期以降高い水準で推移しており、学校間格差も縮まりつつあります。

「かゆいところに手が届く支援」が学校全体を動かした

――今回の取り組みを、緑丘小学校 鈴木校長先生はどのようにご覧になっていましたか。

鈴木校長先生:
この3人の先生方の素敵なところは、フィードバックを本当に丁寧に集めていたことだと思います。私たちの学校は比較的年齢層が高く、ICTに苦手意識をもつ先生も少なくありません。だからこそ、「どこでつまずいているのか」「何に困っているのか」「なぜ使えないのか」という部分をしっかり把握することが重要でした。その声をもとに作られた資料は、まさに“かゆいところに手が届く”内容だったと思います。初心者の先生でも「これならやってみようかな」と思える工夫がたくさんありました。

――学校にはどのような変化がありましたか。

鈴木校長先生:
緑丘小学校は帯広市内でもミライシードの活用が進んでいた学校の一つでしたが、その背景には3人の存在がありました。特に印象的だったのは、困っている先生への関わり方です。「何かあったら聞いてください」ではなく、「聞いてもらえることがうれしい」というくらいの姿勢で、手取り足取りサポートしてくれていました。ICTに苦手意識のある先生ほど、質問することにも勇気が必要です。だからこそ、気軽に相談できる雰囲気をつくってくれたことが、学校全体の活用につながったのだと思います。

ICTとアナログを行き来しながら、よりよい授業へ

――最後に、全国の先生方へメッセージをお願いします。

西山先生:
ICTは目的ではありません。子どもたちの学びを豊かにするための手段です。
だからこそ、「何ができるか」ではなく、「どんな学びをつくりたいか」を大切にしてほしいと思います。

石垣先生:
昨年度はICTをたくさん使ったからこそ、今はアナログの良さも改めて感じています。
紙に書くことや、直接対話することには代えられない価値があります。大切なのは、デジタルとアナログを対立させることではなく、目的に応じて選択できることだと思います。


石川先生:
最初から完璧でなくても大丈夫です。
私自身もそうでしたが、使わなければできるようにはなりません。まずは一つ試してみる。その積み重ねが授業改善につながっていくと思います。


帯広市の取り組みは、ICT活用の目的が「ツールの導入」ではなく、「子どもたちの学びをより豊かにすること」にあると改めて教えてくれる実践です。先生方の地道な挑戦は、これからICT活用を進める全国の学校にとって、大きなヒントになるはずです。

※取材の内容は2026年3月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。

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