「最後のピース」が揃った5年間の挑戦。
データで育む、中学生の“自律した学び”
ドリルパーク×テストパーク×学習ログの相乗効果
——新潟県新潟市立濁川中学校
「最後のピース」が揃った5年間の挑戦。
データで育む、中学生の“自律した学び”
ドリルパーク×テストパーク×学習ログの相乗効果
「個別最適な学び」の実現が求められる中、生徒がいかにして自らの学習をコントロールする「自己調整力」を身につけるかは、多くの先生が抱える課題です。新潟市立濁川中学校の石川先生は、5年にわたる試行錯誤の末、ミライシードの「ドリルパーク」や「テストパーク」を「学習ログ(生徒自身で単元の目標や学習計画、振り返りを記録するシート)」と組み合わせることで、生徒が自ら学びを調整する理想の形を作り上げました。ICTを「教具」ではなく、生徒の「伴走者」へと変えた石川先生の実践と、その根底にある想いを伺いました。
5年越しのパズルが完成。テストパークは「最後のピース」だった
――この度は「ミライシードAWARD」の受賞、本当におめでとうございます!まずは受賞の率直な感想をお聞かせください。
石川先生:
ありがとうございます。今回の受賞は本当に嬉しいですが、この実践は今年1年で急にできたものではありません。遡れば5年前、前任校の時から「学習ログ」の活用を始め、失敗を繰り返しながら追求してきました。コロナ禍で端末が導入され、ドリルパークを使い始め……。そして今年、新潟市のモデル校として「テストパーク」に出会ったことで、自分がずっと作りたかったパズルの「最後のピース」がカチッとはまった感覚なんです。

――「5年越しの完成」という言葉に重みを感じます。なぜそこまで「自己調整力」にこだわられたのでしょうか。
石川先生:
学習指導要領で「主体的に学習に取り組む態度」が強調されていますが、現場では「どう育てればよいか」が明確ではありませんでした 。指導が教師の経験や感覚に依存しがちだったんです 。また、従来の授業ではテストの結果(点数)は出ても、学習過程を振り返って次の行動を自分で調整する機会が不足していました 。生徒が「次に何をすればよいか」を、データという根拠を持って自覚できる環境を作りたかったんです 。
――校長先生は、石川先生のこの挑戦をどのように見守られていたのでしょうか。
武田校長先生:
当校では2年前から「長期休みの課題」をなくしました。生徒が自分をモニタリングし、プランニングして学ぶ「自己調整力」を育てるためです。石川先生の実践は、まさに学校の方針である「競い争う『競争』でなく、共に作る『共創』へ」という理念を具現化するものでした。石川先生は、常に新しいことに挑戦する姿勢を忘れません。「失敗してもいいんだよ」という姿を背中で見せることで、職員や生徒に勇気を与えてくれました。

目標・評価・振り返りをデータで繋ぐ「3ステップ」の授業設計
――具体的な授業の中でのミライシードの活用方法を教えてください。

石川先生:
大きく分けて「目標設定」「中間評価」「振り返り」の3つの場面に位置づけています 。
1.【目標設定】ドリルパークで「現在地」を把握
単元のはじめに実施していた紙のレディネステストをドリルパークに置き換えました 。正答率や解答履歴がすぐに出るので、生徒は自分の強みと弱みを把握できます 。そのデータを基に、学習ログに「どの教材を、どのように取り組むか」という具体的な行動目標を記述します 。
2.【中間評価】テストパークで「軌道修正」
単元の中盤でテストパークを実施します 。結果がその場で数値やグラフとして返却されるので、生徒は「今の自分の学習方略で合っているか」を客観的に判断し、学習ログで計画を修正します 。
3.【振り返り】ワードマップとデータで「構造化」
まとめの時間には、学習内容を整理する「ワードマップ」を作成し、ドリルパークの履歴とテストの結果を行き来しながら振り返ります 。単なる感想ではなく、「どの内容でつまずき、次に何をするか。自分にはどんな学習方法が合うのか」という具体的な省察を促しています 。

――非常に解像度の高い活用ですね。他の先生が明日から真似できる「コツ」はありますか?
石川先生:
欲張らずに「目標・中間評価・振り返り」の1つ場面に絞ることです 。今、悩まれている場面や、面白そうだなと感じた場面で使ってみてください。特にテストパークの即時返却されるデータは生徒たちの内省を大きく変えてくれます。そして、それは私たち教師にも授業改善につながる大きなヒントを与えてくれます。
「勉強が好きじゃない」生徒が数百時間没頭。学びの変容
――生徒たちの様子には、どのような変化がありましたか?
石川先生:
正直、勉強が苦手な子も多いです。でも、カルテの「ガチャ」機能を励みに、夏休みなどに数百時間もやり込む生徒が出てきました。自分の頑張りや成長がデータで可視化されることが、主体的に学ぶ実感につながったのだと思います 。
武田校長先生:
フラッと授業を見に行っても、石川先生のクラスだけでなく学校全体でミライシードが「当たり前」のものとして使われています。他校の校長先生が聞きつけて、個人的に授業を見学に来られたこともありました。
高橋先生(教育委員会):
石川先生の実践を拝見して、生徒たちが本当にいい表情でコメントを交わし合っているのが印象的でした。石川先生をはじめ、先生方の頑張りで活用率が上がったおかげで、新潟市としても教材を公費で整えていく予算の裏付けとなりました。この「濁川メソッド」を市内全域に広げていきたいと考えています。
失敗を恐れず、生徒と共に歩み続ける
――最後に、ICT活用に悩む全国の先生方へメッセージをお願いします。
石川先生:
私も5年間、たくさん失敗しましたし、今も試行錯誤の連続です。でも、先生が「平常運転」ではなく新しいことに挑戦している姿は、必ず子供たちに伝わります。ICT活用は、先生と生徒が一緒に「共創」していくプロセスです。失敗を恐れず、まずは小さなデータ活用から、子供たちと一緒に始めてみませんか。

【プロフィール】
新潟市立濁川中学校 石川先生
数学科教諭。ICT担当をしながら、長年「学習ログ」の活用を研究。2025年度「ミライシードAWARD」受賞。
新潟市立濁川中学校 武田校長先生
「競争から共創へ」を掲げ、自律的な学びを支える学校経営を推進。
新潟市教育委員会 学校支援課GIGAスクール担当指導主事 高橋先生
新潟市の教育DXを推進し、現場の活用を支援。
※取材の内容は2026年3月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。