教科の壁を超える「マイスタ」学習で
生徒の達成感を育み、学習習慣を定着させる
——東京都墨田区立吾嬬立花中学校
教科の壁を超える「マイスタ」学習で
生徒の達成感を育み、学習習慣を定着させる
———東京都墨田区立吾嬬立花中学校
河野 敏也 校長先生
脇坂 知寛 副校長先生
瀨谷 ひとみ先生(英語科/学力向上委員長)
東京都墨田区立吾嬬立花中学校は、学習習慣の定着のために、ドリルパークの課題配信を活用した「マイスタ」からなる種々の取り組みを進めています。
2025年度に始めたこの取り組み。1年間で、定量的にも、定性的にも、子どもたちの学習は大きく変わりました。具体的にどのような課題感を持ち、どのような取り組みを進めたのか、河野校長先生、脇坂副校長先生、英語科の瀬谷先生に、お話を伺いました。
基礎学力の土台となる、学習習慣の定着をめざして
——貴校が近年抱えられていた課題をお聞かせください。
脇坂副校長先生:
学習習慣を定着させ、基礎学力を高めることです。そのために、数年前にデジタルドリルを導入し、活用を奨励していましたが、実際に継続して取り組む生徒は半数程度でした。活用の方針や位置づけを先生方にしっかり共有できていなかったために、デジタルドリルを単に導入しただけに終わっていたのが実情でした。

脇坂副校長先生。学校全体の課題感について、お話しいただいた。
——子どもたちの様子は、いかがだったでしょうか。
河野校長先生:
予習・復習をはじめとした学習習慣がないと、学習内容が自分ごとになりません。授業態度も、「とりあえず受けておけばいい」と、受け身の姿勢でいる生徒が目立ちました。教員はもちろん、生徒も授業をつくる主体であると自覚し、主体的・対話的で深い学びを実現していく。そのための土台としても、学習習慣の改善は必須でした。
「やりたくてもできない」を超えるための仕組みづくり
——学習習慣の定着に向けてあり方をどのように変えていったのか、お聞かせください。
河野校長先生:
本校は2025年度から、「マイスタディタイム」という名称で、ドリルパークを活用した家庭学習の課題配信を全学年で実施しています。月曜日は国語、火曜日は数学といったように、5教科の担当教員が日替わりで課題を配信し、子どもたちに取り組んでもらう施策です。課題の内容は各教科の先生にお任せしていますが、1日10分程度で終わる簡単な内容にするよう指針を立てています。
加えて、マイスタで学習した内容にもとづくマイスタコンテスト「目指せ☆マイスタマイスター!」も実施。コンテストで満点が取れたら、「マイスタマイスター」として全校集会で表彰しています。

河野校長先生。管理職先生として、瀨谷先生による「マイスタ」の取り組みを強くバックアップされた。
——中学校の場合、教科の縦割りが原因で、全校での取り組みが進みづらい面があると思います。どのような工夫で、学校全体に取り組みを広げたのでしょうか。
河野校長先生:
新たに立ち上げた「学力向上委員会」を起点にしました。その中心を担ってくれたのが、学力向上委員長である瀨谷先生です。
瀬谷先生:
今でこそ「マイスタコンテスト」や、「マイスタマイスター」など、取り組みに幅がありますが、最初はそうではありませんでした。私が所属する学年の英語科から、少しずつ取り組みを増やしていったのが実際です。英語科の教員がまず足並みを揃えて基本となるマイスタシステムをつくり、実践する。そうして他の先生方に「何かやっている」と意識を向けてもらい、「自分たちもやらなきゃ」と真似してもらう形で、教科の壁を越えていきました。
マイスタのような新しい取り組みを始めるとき、先生方は「やりたくない」のではなく、様々な業務で忙しく、「やりたくてもできない」のが本音だと思います。ですから、スモールスタートで始めること、枠組みをこちらでつくって参画してもらいやすくすることは大事だったと思います。
ドリルパークの課題配信を活用したのも、効果的でした。課題配信の場合、紙の宿題と違って印刷や配付の手間がなく、生徒に取り組んでもらいたい課題や予習・復習を短時間で用意が可能です。配信後も、誰が・どの程度取り組んでいるか、端末上で簡単に確認できます。先生の負担が軽減されるメリットがあったのも、先生方が「マイスタ」へと前向きに取り組んでくれるきっかけになりました。
そして最終的には、学力向上委員会のメンバーである各教科主任の先生へ率先して声かけし、教科内に取り組みを広げてもらったこと。校長先生が「全学年共通の軸で、一斉に家庭学習を変えていきましょう」とアナウンスしてくださったことも、学校全体で推進を進める上でのポイントだったと感じています。

瀨谷先生。学力向上委員会の中心として、「マイスタ」を考案。先頭に立って取り組みを進めた。
河野校長先生:
私としては、瀨谷先生がとにかく率先して動いてくれたことに感謝しています。先の「マイスタコンテスト」も、瀨谷先生が担当する2年生は年間5回も実施してくれました。「マイスタ」「マイスタマイスター」などのネーミングセンスも、素晴らしかったです。子どもたちにとって、ワクワクする響きがありますから。学校中に「マイスタ」の掲示物を用意して環境を整えたり、次の「マイスタコンテスト」の表彰に向けて手づくりの王冠まで用意してくれたりしました。今日、保護者会があったのですが、保護者の皆さんに対しても、「5回のマイスタコンテストすべてで満点の子がいたんです」と、子どもたちのがんばりをしっかり伝えてくれていましたね。教員、子ども、そして保護者の方、そのすべてが瀨谷先生の努力でモチベーションや取り組みへの理解を深められました。

手づくりの王冠。「マイスタコンテスト」で成績優秀だった生徒に渡すそう。
学びの手応えを、確かな成長実感に変えられた
——子どもたちの様子に変化はございましたか。
瀨谷先生:
「マイスタ」の課題はもちろん、すべての学習に対して前向きになりました。定期考査や小テストの内容も「マイスタ」の課題にしているので、「やればできる」「やれば点数になる」と、学習効果を実感しやすくなったからでしょう。また、「マイスタ」をきっかけに、「勉強=毎日何かしら取り組むもの」と、勉強習慣が根付いたのも大きいと思います。
河野校長先生:
定量的な成果も現れています。前回(4月)と最新(1月)の区学習状況調査では、2年生の思考力・判断力・表現力が大きく伸びました。5教科中4教科も前年を上回り、かつ国語は8.4、英語は9.9ポイントも全国平均を上回りました。1年生も同様に、思考力・表現力・判断力の観点で、前回や全国平均を上回る結果を残しています。
社会科の伸びも、ぜひお伝えさせてください。1年生の前回調査では、実は社会科は知識・技能が0.7、思考力・判断力・表現力が3.2ポイント、全国平均を下回っていました。しかし、今回調査では知識・技能が3.2、思考力・判断力・表現力が4.0ポイント上昇。全国平均に対して、プラスに転じたのです。他の教科もプラスばかりで、素晴らしい成果が上がっています。
——お取り組みの今後のご展望をお聞かせください。
瀨谷先生:
少し大変かもしれませんが、今後は「最後までやらせ切る」ことにこだわりたいです。まだまだ、すべての生徒が学習に向き合えているわけではありません。個々の生徒の学習環境や課題もあります。取り残される生徒をなくせるよう、例えば放課後にみんなで取り組む時間をつくるなど、生徒間や教員とのコミュニケーションを通じて、やり切る経験を積んでもらおうと考えています。授業や朝読書の時間に、もっとICTを活用するのもよいかもしれません。「学校でもやっているから、家でもやろう」と、学習に連続感を持たせられるはずです。「マイスタ」を軸にしつつ、周辺の学習環境も補強し、より多くの子どもたちが学習の達成感を得られるよう努めます。
また、後期からテストパークの活用も始めました。「マイスタ」の時間にドリルパークで取り組んだ範囲をテストし、「マイスタコンテスト」同様に、「やればできる」感覚を身に付ける機会にします。
河野校長先生:
瀨谷先生がお話した「やらせ切る」ことは本当に大事です。子どもたちには、毎日の学校生活で達成感を味わってほしい。「やった分だけ伸びている」「向上している」「成長している」と実感できることにこそ、学校の存在意義があるのではないでしょうか。そのためには、私たち教員が「指導し切る」ことが欠かせません。
私たち教員は日々授業以外にもやることがたくさんあって、とても忙しいです。
従ってどうしても教えっぱなしになってしまうこともあり、生徒が分からないことに一緒になって考える機会をもつことが難しい時も多々あります。それでも生徒に寄り添い、「一緒にやろうか」と声をかける環境をつくることが、「指導をし切る本当の教育」だと私は考えます。
その一助として、これからもミライシードの活用を深めていきます。

河野校長先生と瀨谷先生。お二人や、副校長先生の連携があり、「マイスタ」は全校に広がった。
【編集後記】
校長先生に学校をご案内していただいたとき、廊下を曲がるたびに、「マイスタ」の掲示物を発見。学力向上委員会でつくられたものだそうで、今日が何曜日で、何の課題が配信されるのか、どこにいてもわかるようになっていました。見せていただいた王冠は、支援員の方の手づくり。子どもたちにがんばってほしい、達成感を味わってほしいというチーム吾立の温かみを感じました。そうした温かみが子どもたちにも伝わっているからこそ、「マイスタ」が当たり前のものとして、学校中に広がったのでしょう。
撮影/中島弘人写真事務所 中島弘人
文/株式会社オンソノ 鈴木康介
※取材の内容は2026年4月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。
学校名:墨田区立吾嬬立花中学校
特色:「ワクワク登校・満足下校」をモットーに、『見つめる力』『挑戦する力』『やりきる力』『つながる力』を持つ生徒をめざす生徒像に設定し、教育DXへの対応に力を入れる東京都の公立中学校。