「分かったつもり」を「分かった!」
に変えるデジタルの伴走
リアルタイムの見取りで実現する、
一人ひとりに寄り添う「自己調整学習」

——静岡県島田市立島田第五小学校

教育DXストーリー

「分かったつもり」を「分かった!」に変えるデジタルの伴走
リアルタイムの見取りで実現する、一人ひとりに寄り添う「自己調整学習」

本事例では、小学校5年生の社会科「自動車の生産にはげむ人々」の単元で、「ミライシードAWARD2025」地域賞(東海)に輝いた実践を紹介します。自由進度学習において教師が直面する「全員のつまずきをリアルタイムで見取れるのか」という不安。この課題に対し、青山先生はミライシードを「デジタルの伴走ツール」として位置づけ、どの子も置き去りにしない授業を実現されました。教師の役割を「教え手」から「最高の伴走者」へと進化させた歩みを伺いました。

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1.「分かったつもり」をなくし、どの子も置き去りにしない学びへ

——今回の実践を始められた背景には、どのような課題感があったのでしょうか。

青山先生:

これまでの社会科の授業では、一斉指導や形だけのグループ学習が多く、子どもたちが「分かったつもり」「調べたつもり」という表面的な理解で学習を終えてしまうことが大きな課題でした。また、教師が放課後にノートを見てフィードバックを行っても、次の授業の方針は既に決まっており、子どもがその助言を反映させて学びを修正する「学び直し」の機会を授業内に確保することが困難でした。さらに、個別最適な学びに取り組む中で、教師側には「児童のつまずきをリアルタイムに把握できるか」、子ども側には「自分の学びが深まっているか」という不安もありました。こうした背景から、ICTを「思考を支え、個に寄り添うための伴走ツール」と位置づけ、授業改善に挑戦しました。


小林校長先生:

学校として昨年度は子どもたちが交流の中で学びを深めていくということに重点を置いていました。すると、よく話すリーダー的な子どもを中心として学習は成立するのですが、一人ひとりの学びは充実しているだろうか、という点が課題として浮かび上がってきました。この課題意識については、校内研修や日常の教員同士の話し合いの中で共有されていて、特に社会科では、提示する資料の難易度や、どこまで子どもに考えさせるかという点について活発な意見交換が行われていました。今年度は、ICTを活用することで子どもたちの自立した学習が促されたと実感しています。

2. 問いを引き出し、自律的な学びを支える仕組みづくり

——具体的に、どのような授業デザインで「自由進度学習」を進められたのでしょうか。

青山先生:

まず単元の導入で、世界・国内・学級の自動車シェア比較を提示しました。特に日本ではシェアが低いスズキ車が、インドでは圧倒的なシェアを誇る事実を示すと、子どもたちの中に「既有知識とのズレ」が生じます。そこから「なぜ国によって売れる車が違うのか?」という本質的な問いを引き出し、自分たちで学習計画を立てることから始めました。

 


——子どもたちが自律的に学ぶために、どのような環境を整えられたのですか。

青山先生:

大きく分けて3つの手立てを講じています。

①評価基準(ルーブリック)の共有と問いの吟味 

子どもたちと「何ができるようになったらゴールか」という評価基準を共有しました。その上で、子どもが立てた問いに対して「いつ、どこで、なぜ?」といった視点から一緒に優先順位をつけ、探究の方向性を定めています。

 


②ミライシードを活用した「思考の可視化」

オクリンクプラスで毎時間の「問い・予想・振り返り」をカード化し、蓄積しました。また、クラス全員分の「みんなのボード」を作成したことで、教師は手元のタブレットから一人ひとりの進捗をリアルタイムで把握できます。以前は学習履歴の確認に手間がかかっていましたが、ミライシードのカルテ機能等を通じることで、過去の提出物にもすぐアクセスでき、継続的な見取りが可能になりました。

 


③「セルフチェック」による学びの調整

自学の合間に、外部サービスを活用した「重要語句クイズ」を解く時間を設けています。子どもはクイズを通して「分かったつもり」の自分に気づき、提示された資料や動画へ自発的に戻って学び直します。これにより、自分の学びを自分でコントロールする「自己調整学習」のサイクルが回るようになりました。

3. C評価をB評価へ。「今、欲しい資料」を届ける即時フィードバック

——ミライシードを活用したことで、指導はどう変わりましたか?

青山先生:

「ジャストインタイムのフィードバック」が可能になりました。資料の読み取りに苦戦している子を見つけたら、その子の端末に、参照すべき教科書のページや具体的な資料URL、ヒントとなる動画を個別に送信します。また生成AIも活用したことで、膨大な検索結果から資料を編集し、再構成することが効率的にできました。


——それが「C評価からB評価へ」の引き上げに繋がったのですね。

青山先生:

はい。適切なヒントを最適なタイミングで得ることで、子どもたちは自力で解決する成功体験を積めます。その結果、生産の工夫と消費者のニーズを関連付けるといった、社会科のねらいに即した根拠のある記述ができるようになりました。

4. 固まっていた子が自ら教科書をめくる。学びに向かう姿勢の変容

——子どもたちには、具体的にどのような変化が見られましたか?

青山先生:

一番嬉しかったのは、わからない問題があると固まってしまっていた子が、自らページをめくり、教科書を開いて調べ始めた姿です。「自分にぴったりの支援」があることで、学びへのハードルが下がり、「やってみようかな」という意欲が芽生えていました。

 


小林校長先生:

先生が楽しそうに新しいことに挑戦し、それによって子どもたちが「やりたい!」と目を輝かせる。この姿こそが学校全体の活気になります。専門性を発揮して「より良い学び」を追究する先生の姿は、周りの教員にとっても大きな刺激になりました。

5. 方法論にとらわれず、教科の本質を追究し続けたい

——今後の展望をお聞かせください。

青山先生:

今回、自己調整学習に挑戦しましたが、これが全ての子に当てはまる唯一の正解だとは思っていません。社会科の専門性を磨き続け、教科の本質に触れる瞬間に、どれだけ適切な関わりができるか。そのためにも、ICTを賢く使いながら、より深い子ども理解に努めていきたいと思っています。

小林校長先生:

ICTによって先生方の教材研究の幅は確実に広がりました。この実践をきっかけに、子どもたちの「学びたい」という思いを引き出す支援を、学校全体でさらに深めていきたいですね。

【編集後記】

「ICT活用は、広めるためにやるのではなく、自分のやりたい授業を実現するために使っていたら結果として広まった」。先生のこの言葉が印象的でした。ICTは、子どもを画面に釘付けにするための道具ではなく、一人ひとりの「知りたい」という気持ちに火を灯し、先生が「最高の伴走者」になるための翼です。デジタルの見取りが、教室の隅々にまで温かな指導を届けていることを実感した取材でした。

※取材の内容は2026年3月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。

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