一人の学びを、クラス全体の学びへ
可視化と共有が生む「自分ごと化」の意識を高める授業革命
〜ミライシードで育む、情報社会を生き抜く力と主体的な学び〜
——山梨県都留市立谷村第一小学校
一人の学びを、クラス全体の学びへ
可視化と共有が生む「自分ごと化」の意識を高める授業革命
〜ミライシードで育む、情報社会を生き抜く力と主体的な学び〜
都留市立谷村第一小学校は、上野校長先生の掲げる「生きる力を育み、未来に生きる児童の育成」という教育目標のもと、情報活用能力を軸としたICT活用を推進しています。ミライシードを導入して約5年。オクリンクプラスによる協働的学びと、ドリルパーク・カルテ機能を活用した個別最適な学びを両輪として、子どもたちの「思考する力」と「主体的に学ぶ姿勢」を育む授業実践についてお話を伺いました。
上野 校長先生
小川 先生(情報主任・研究主任)
奥秋 先生(教務主任)
ICTの活用で育む他者と学ぶ力と「未来を生きる資質」
——まず、貴校の教育方針についてお聞かせください。

上野校長先生:
本校の教育目標は「生きる力を育み、未来に生きる児童の育成」です。「未来に生きる」という言葉には、AIの進化や社会のデジタル化が加速する今、子どもたちに「情報を正しく選び取る力」「問いを自ら立てて探究する力」「多様な他者と協力して課題を解決する力」を育んでほしいという想いが込められています。
本校がある谷村の地は、歴史・自然・文化・人々の温かさに恵まれた豊かな環境。ふるさとへの誇りを学校生活の中で育みながら、やがては都留市や全国、世界で活躍する子どもになってほしい。そのためにも、一人一台端末による個別最適な学びと、協働的な学びを両輪として進め、いよいよ着手した探究的な学びと合わせて、情報活用能力を育てていきたいと考えています。
「他者参照」が協働的学びの質を変える。ミライシード導入がもたらした授業改革
協働的な学びの本質は、異なる考えに触れることで自分の思考を更新し続けることにあります。しかし従来のノート中心の授業では、その機会は一部の「発言できる子」に限られていました。
——ミライシード導入の背景と、授業における変化を教えてください。

小川先生:
導入前の授業では、教員が意識的に指名しなければ一部の児童の考えしか表に出てきませんでした。発言は苦手でもノートにはしっかり書いている子、独自の視点を持っている子の思考が、授業に生かされないまま終わることが少なくありませんでした。ミライシードの導入により、この構造が根本から変わりました。オクリンクプラスを通じて全員の考えがリアルタイムで画面上に並ぶことで、児童一人ひとりが「他者の思考」に瞬時にアクセスできる環境が整い、これが「他者参照」と呼ぶべき学習行動を促してくれています。友達の視点に触れ、「なぜそう考えたのか」と問い直し、自分の考えを更新・深化させる。協働的な学びが目指す「思考の往還」が、授業の中で自然に、しかも全員を巻き込む形で起きるようになりました。
さらに教員側にも大きな変化がありました。以前は子どもの思考状況を把握するために一人ひとりのノートを確認しなければならず、授業の流れが止まることもありました。今は画面上で全員の記述を即座に把握でき、「この子の考えをみんなに紹介しよう」という判断も瞬時にできる。教員の見取りの質と速度が同時に向上したように感じています。

奥秋先生:
私が実感した最大の変化は、授業設計に向き合う時間が増えたこと。以前はパソコンを使ってワークシートを作成し、印刷し、配布するだけで相当な時間と労力を費やしていました。今はデジタルで即座に全員の手元に届けられる。そこで生まれた時間を、単元の問いをどう設定するか、どこで思考を揺さぶるか、という授業の本質的な設計に充てられるようになりました。
「クラスメイトの考えが見えない授業」から「全員の思考が可視化される授業」へ。この転換が、谷村第一小学校の協働的学びを大きく前進させました。
教科横断で広がる活用。理科の実験考察から体育の身体知まで
——具体的な授業活用の実践を教えてください。
小川先生:
国語では、文章の前後のつながりを読み取る活動でオクリンクプラスのカード機能を活用し、子どもたちが根拠を示しながら比較・検討できるよう設計しています。社会の調べ学習では、各自が調べた内容をオクリンクプラスでスライド形式にまとめ、クラスに向けて発信する場をつくっています。パワーポイントより操作に慣れていることもあり、子どもたちはツールの扱いに迷うことなく、内容の構成や伝え方の工夫に思考のエネルギーを集中させることができています。

機能面では、オクリンクプラスのタブ(ページ分け)機能が授業設計の幅を広げました。提出ボックスと組み合わせることで、グループ単位・クラス単位の学習活動を柔軟に整理でき、教員の進行管理も大幅に効率化されました。

奥秋先生:
理科では単元全体に関わる「問い」を設定し、毎時間の活動が単元の問いにどうつながるかを児童自身が振り返る設計にしています。授業中に気づいたことや考えたことをその都度提出ボックスに送り、クラス全体でリアルタイムに共有します。「今日の実験はどこにつながっているのか」を全員で確認しながら進めることで、単なる活動の連続ではなく、問いを積み重ねる探究的な学びとして単元を構成できます。
体育の跳び箱運動では、タブレットを体育館の中で使用できるように持ち込み、気づいたときにいつでも記録できる環境をつくりました。従来の体育では、身体を動かすことだけの学びになりがちですが、児童たちが実際に体を動かしながら発見した感覚的な知識をオクリンクプラスの提出ボックスに提出してもらうことで、気付きを言語化する能力が高まっています。「手を遠くに置く」「目線をやや上に向ける」「助走は全力の8割で、踏み切りに余裕を残す」など、跳び箱を効果的に実践するポイントが次々に集まりました。また子どもたち同士が自発的に動画を撮り合い、互いの動きを見て学ぶ場面も生まれました。教員が教えるのではなく、児童同士が教え合い、学び合う授業が実現しています。
カルテが「学びのポートフォリオ」に。低学年の自律的学習習慣を育む
——ドリルパーク・カルテ機能の活用についてお聞かせください。
小川先生:
ドリルパークは朝の学習時間や家庭学習を中心に活用しています。紙ドリルとの併用で復習を定着させることを目的としています。特に成果を感じているのが1・2年生の変化です。ベネッセの研修を受けて「カルテ」機能を本格的に活用し始めてから、子どもたちの学習への向き合い方が変わりました。
カルテは、ミッション達成やポイント獲得によってモチベーションが上がる仕組みになっています。以前は得意な単元ばかり取り組んでいた子が、カルテで達成するには幅広い単元を横断しなければいけないと知り、友達がポイントやお宝をゲットしているのを見て「自分もやらなきゃ」と自主的に学びを進める児童も増えました。学習を「やらされるもの」から「自分で進めるもの」へと意識が変わってきたと感じます。
教員側も、正答率やつまずきの傾向をクラス・個人単位で分析できるので、授業中の個別声かけや次時の指導計画に直接活かすことができます。
奥秋先生:
5・6年生では、単元の最初にドリルパークをまとめて配信し、授業の進行に合わせて自分のペースで取り組む形にしています。高学年になると学習計画を自分で立てながら進める姿も見られるようになり、主体的な学習習慣の定着を感じています。今後はさらに一歩進めて、単元導入の場面でデータを活用し、前学年までの習得状況を児童自身が確認した上で新しい学びに入るという設計も試みたいと考えています。学習の「入口」から自分の現在地を把握して臨むことができれば、より見通しを持った主体的な学びにつながると期待しています。
ICTが引き出す主体的に学ぶ姿勢
——ミライシード導入後の子どもたちの変化や印象的なエピソードを教えてください。
上野校長先生:
授業を見ていて感じるのは、どの子も自分の考えを「自分の言葉で」表現しようとしているということです。以前は、友達の発言や先生の言葉をなんとなく聞いて「わかったつもり」になることが少なくありませんでした。今はオクリンクプラスを通じて自分の考えを書いて送ることが当たり前になり、学びが「自分ごと化」しているように思います。

印象的だったのは理科の実験での場面です。予想・実験計画・結果・考察という探究の流れが児童の中に根づいていて、「今自分たちはここをやっている」という見通しを持って取り組んでいる。グループ実験でも一人ひとりが役割を持ち、主体的に動いている。協働的な学びと主体的な学びが同時に起きている様子が、はっきりと見えます。
以前は授業でほとんど発言しなかった子が、オクリンクプラスを通じて考えを発信できるようになってきた。それだけでなく、もともと積極的な子がさらに深く考えるようにもなっている。どの層の子どもにも、それぞれのかたちで変化が起きているのを感じます。
小川先生:
子どもたちの表現スキルと学び合いの姿勢が変わりました。自分の席にいながら瞬時に友達の考えを参照し、それを自分の思考に取り込んでさらに深める。ノートの時代は一人で抱えていた思考が、今は教室全体に広がっています。「他の子の考えを積極的に見に行って自分の視点を広げる」という学習行動が、日常の授業の中に定着してきました。
奥秋先生:
子どもたちが友達の意見に本当の意味で興味を持つようになったことが、一番大きな変化だと感じています。「なんでそう考えたの?」「同じだ!」という声が自然に上がる。情報の共有速度が圧倒的に速くなったことで、多様な考えに触れる機会が増え、周囲へのリスペクトと知的な好奇心が育まれているように感じます。
ICTは「学びの選択肢のひとつ」。情報社会を生きる子どもたちへのメッセージ
——AI・CBT時代を生きる子どもたちと先生方へ伝えたいことをお聞かせください。

上野校長先生:
ICT環境はこれからも変化し続けます。AIはより身近になり、CBT方式による評価も現実のものになってきた。それ自体は歓迎すべき変化ですし、子どもたちが学べることも広がります。ただ私が大切にしたいのは、端末はあくまでも「ひとつの学習の選択肢、ツールとして」活用するという姿勢です。友達と体を動かして遊ぶこと、ふるさとの自然や歴史を五感で感じること、リアルな人との対話の中で心を育てること、これらはICTが代替できない学びです。谷村の豊かな環境の中で、子どもたちには「心の豊かさ」と「デジタルの力」を両輪として育んでほしい。
先生方には、自分の学年・学級だけでなく、谷村第一小学校の教育活動全体の中でICTがどう機能するかを見据えて指導してほしいと思っています。そして10年後・20年後という、予測が難しい情報社会においても、自ら問いを立て、情報を選び取り、他者と協力して課題を解決できる。そんな児童を育てることが私たちの使命だと考えています。ICTをひとつの力強いツールとして使いこなしながら、そういう子どもたちを一緒に育てていきたいですね。
【編集後記】
導入5年という積み重ねが、授業の随所に息づいていた取材でした。オクリンクプラスによる他者参照が協働的学びを深め、カルテ機能が低学年の自律的学習習慣を育み、体育でさえもデジタルが「気づきの言語化」を促す。ミライシードはひとつのツールでありながら、教科横断で子どもたちの学びの質を変えています。「ICTは選択肢のひとつ」という校長先生の言葉には、テクノロジーとの健全な向き合い方を問い直す力がありました。情報社会を生き抜く力と、豊かな人間性を両立させようとする谷村第一小学校の実践は、他校にとっても確かな道標になるはずです。
※取材の内容は2026年3月時点の情報です。
※掲載にあたり一部の図版を編集しております。